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高インピーダンスセンサーの信号処理法(1/3 ページ)

高インピーダンスセンサーからの信号を処理する回路の精度を維持するには、独特の課題がある。まず、特殊な設計技術をいつ使用するのかを見極めなければならない。次に、センサーと回路を、その精度を落とすことなく、バッファし、保護するデバイスを選択する必要がある。

» 2006年06月01日 00時00分 公開

 もし他に選択肢があるならば、高Z (高インピーダンス)センサーを使用したりはしないであろう。こういったセンサーが、外来ノイズやはんだフラックスの残留物、粒子、バイアス電流、遠くの電荷などを、繰り返し測定の追跡することは難しい。しかし、高Zセンサーにも利点はある。自分で負荷をほとんど持っていないため、本質的に消費電力が低い。pH、光、加速度、湿度などの属性に対しては、ほとんどの実用的なセンサーが高Zデバイスである。注意をもって設計すれば、デバイスが周囲からの悪影響を受けにくくすることができる。興味深いことに、実用的な超電導の出現により、インピーダンス値は今や無限大の域に達している。

 高Zセンサーからの信号を処理する回路の動作特性を測定する場合、回路の入力を高Zまたは高抵抗で駆動しなければならない。高Zセンサーの信号処理を行うエンジニアならば、手元に高い値の基準抵抗をいくつか用意しているはずだ。米Vishay社(www.vishay.com)は、50GΩまでの表面実装抵抗をもつ製品を提供している。この記事を執筆している時点で1GΩおよび2GΩのサンプルが在庫にある。米Ohmite社(www.ohmite.com)のMini-Moxシリーズには、10GΩおよび100GΩのリード付き抵抗がある。これらの高い値の抵抗はほとんど変化することはない(導電性であり、絶縁体ではない)。例えば、「蓄積した皮脂がインピーダンスを低くするから抵抗の本体を触れてはいけない」と、言われることが良くある。

 そこで、実験をしてみた。米Keithley社(www.keithley.com)の「モデル614」電位計を抵抗線の両端に接続すると、測定値は9.9GΩから10GΩとなった。脂っぽい指で抵抗の本体をくまなく触ったりにぎったりした後、元に戻すと、測定値は正確に元の通り、9.9GΩから10GΩとなった。この結果からは、皮脂がこれらの抵抗への直接の大敵ではないことはわかる。時間の経過と湿度に対する信頼性を保証するため、実験室では今でも部品、プリント回路基板、および絶縁体を清潔に保つことを推奨している。皮脂の導電性は人によって異なるものである。清潔にする方法として、Ohmite社では、イソプロピルアルコールとけばだちのない布を使い、水分を除去するためにデバイスを75℃で約1時間熱することを推奨している。この種のインピーダンス測定を行う際には、ケーブルの絶縁体を測定対象の抵抗と完全に並列に配置することを覚えていてほしい。100GΩ抵抗の測定において誤差を1%に抑えるには、絶縁体のインピーダンスは合わせて10TΩ程度必要である。この条件を回避する唯一の方法は、開回路較正により測定を行い、シャント抵抗を数学的に除去することである。Keithley社の614はこの機能を持たないが、それでもうまく動作し、このことからも、10GΩ抵抗が、絶縁体と比較してかなり堅固であることがわかる。

高インピーダンス回路の敵

 Z値が高いと、リークや電流ノイズ、バイアス電流、および耐電圧によるエラーが大部分を占めるため、これらの量をできるだけ小さくすることが高Z回路を取り扱う上での課題となる。最もよくあるリークは、溶融はんだの残留物によるものだ。高Z回路を含む基板はフラックスをていねいに拭き取ること。基板メーカーが使用する洗浄装置は汚れている場合がある。基板面積が許す限り、設計ルールにおける最小サイズよりも余裕を持たせて配線すること。絶縁体としては、通常FR-4は問題がないが、テフロンやガラスと異なり、湿気を吸収しやすい。テフロンのポストやウェルを使ってうまく設計した例もあるが、純粋な絶縁特性というよりは、表面トラッキングや、誘電吸収などの影響に対する、これらの部品の本質的な耐久性によってよい結果が得られているのだと思われる。不完全な環境において、表面インピーダンスを高く保つためには、封止法や表面に沿ったコーティング法があるが、これらはあまり長持ちしない。ガード配線は同じ電位で配線されている高Zソースに接続できる。スルーホールピンは、すべて、または少なくとも外層にガード配線が必要である。実装上で考慮すべき点も多い。例えば、デュアルオペアンプの非反転入力は端子3および5にある。端子3は負電源の隣であるのに対し、端子5は端にあるので、端子5をガードする方が簡単だ。

 アクティブデバイスにおけるバイアス電流と電流ノイズはエラー源となる。バイポーラ・トランジスタは動作するために直流ベース電流が必要であり、FETには入力リーク電流がある。いずれの場合も、接合部を通る電子が量子化されることによって電流ノイズを引き起こす(このようなノイズは接合部を流れる電流にのみ存在する)。FETでは、電流ノイズはミラー効果(ウェブ限定記事「電流ノイズの測定」を参照のこと)により、周波数と共に増加する。バイアス電流が低いことから、直ちにFETベースの入力構造を選択したいと思うかもしれないが、特に高温動作においては、スーパーベータ・バイポーラ入力構造の方がよい。FETの入力リーク電流が10℃ごとに倍増するのに対し、スーパーベータのバイアス電流は比較的安定している。いずれの場合も、チョッピング法によりオフセット電圧とバイアス電流の両方の影響を除去することができる。数MΩ未満のインピーダンスならば、安直にFET入力アンプを選択する前に、米Linear Technology社の「LT6010」や「LTC2054」などの、非常に高精度な低バイアス電流オペアンプをまず検討してほしい。オフセット電圧を低くすることの方が、バイアス電流を低くすることよりも重要である場合もある。

 あるソースのインピーダンスでは、全入力誤差はVOS+IBIAS×RSOURCEとなる。ソースインピーダンスが増加すると、バイアス電流の影響が大きくなり、MOS FET入力の方が魅力的な選択肢となる。CMOSオペアンプの仕様の向上により、MOS FET入力はここ数年で、かなりよく使用されるようになった。

 高Z回路のもう1つの問題は、物理的な動きに対する感度である。靴でカーペットをこするだけで、キロボルト級の静電荷が生じるため、ごく微量の容量性結合でも莫大な電荷が注入される。測定時には、離れた場所に立ち、じっとしていること。シールド技術にはもちろん効果があるが、機械的な振動(マイクロホンなど)がプリント回路基板の配線と他の金属材料の間の静電容量を変化させ、電荷注入を引き起こす。この金属材料の電圧が変化しない場合でも、配線とは異なる直流電圧が生じてしまう。したがって、回路をシールドするのはよいが、近すぎないようにすべきだ。

 機械的振動や負荷が絶縁体に微小電圧を引き起こすと、摩擦帯電または圧電効果が生じる。高振動環境では、高Zソースには米Belden社(www.belden.com)の「タイプ9239」のような低摩擦帯電ノイズケーブルが必要かもしれない。

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