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電源サブシステム入門各方式の課題を再確認!(2/4 ページ)

» 2007年03月01日 00時00分 公開
[Paul Rako,EDN]

リニアレギュレータ

 ここからは、ツェナーダイオードを除く各種電源サブシステムにおける問題点について順にまとめていく。まずはリニアレギュレータからである。

 基本原理という観点から見ると、リニアレギュレータはパストランジスタを使ってDC電圧を降圧する方式である。LM317など従来型のリニアレギュレータは、NPNトランジスタを抵抗として使用する。その際、ベース‐エミッタ間で0.6V程度の電位差を確保するので、リニアレギュレータを正常に動作させるには、それなりの入出力電圧の差が必要となる。ドロップアウト電圧がその部品の推奨値より低い場合でも、正常な値で電圧が出力されることはよくある。しかし、そのようなケースでは、AC的な特性や温度特性を満たしていないこともあるので注意が必要だ。

 1980年代の初め、米国の自動車メーカーは低ドロップアウトのリニアレギュレータを半導体業界に求めるようになった。そのころまでは、リニアレギュレータでは、入出力電圧に大きな差を要していた。

 その後、PNPトランジスタを使用した「LM2936」のような低ドロップアウト型の製品が登場した。この方法により、車のエンジンをかけるときにバッテリの電圧が8V程度まで降下したとしても、調整回路を正常に動作させることが可能になった。

 National Semiconductor社のAl Kelsch氏は以下のように語る。

 「ドロップアウト電圧がゼロに近づくと、入力電流に小さなスパイク(カレット)が発生する。ICの設計者は、このカレットが発生しないように電流を制限し、なおかつ過渡応答その他の仕様を満たすよう、トランジスタのベースを駆動する回路の設計に多くの時間を費やしてきた。ところが、顧客はレギュレータがいつドロップアウトしたのかを知るために、ごくわずかなカレットを必要としていた。これを検出することにより、回路全体をオフにできるからだ。つまり、設計者が問題点として考えていたものを、顧客は1つの機能であるととらえていたわけだ」。

 リニアレギュレータにおける一番の問題点は熱である。リニアレギュレータでは大電圧/大電流がパストランジスタにかかるため、多量の電力損失が発生する。リニアレギュレータ製品の多くはサーマルシャットダウン機能を備えているので、部品が破損するのを防ぐことはできるかもしれないが、動作中にシャットダウンが発生すれば回路自体が使えなくなる。

 リニアレギュレータにはもう1つ設計上の問題点がある。それは、コンデンサの短絡の問題である(ただし、この問題点はほとんどの電源サブシステムにも当てはまる)。

 どのような電解コンデンサにも寿命があり、ある時点で短絡するということを想定しておかねばならない。短絡が発生した場合でも、レギュレータやボードが発火したり、それ以外の何らかのダメージが発生したりしないようにしておく必要がある。また、入力電解コンデンサとタンタルコンデンサには、ヒューズなどを設けなければならない。

 製品のACアダプタが十分な動作電流を供給できない場合、ユーザーが製品を起動するために、より容量の大きい不適切なACアダプタを使用するといった状況も想定しておかなくてはならない(図1)。

図1 リニアレギュレータ使用時の注意点 図1 リニアレギュレータ使用時の注意点 リニアレギュレータの問題点としては、発熱、コンデンサの短絡、ICに逆電流が流れたときの部品の損傷などが挙げられる。

チャージポンプ方式コンバータ

 チャージポンプでは、コンデンサを充電することにより、入力電圧の2倍、あるいは3倍といった電圧を生成する。入力電圧を反転出力する電圧インバータを形成することもある。

 昔からよく知られているチャージポンプ方式コンバータに、米Intersil社が1980年代に発売した「ICL7660」がある。米Catalyst Semiconductor社の「CAT3636」も有名で、こちらは1倍、1.33倍、1.5倍、2倍という非整数の電圧ステップを実現する方法を取り入れている。

 ハンドヘルドシステム用途での電力効率は最大92%に上る。従来の昇圧型コンバータのメーカーは、現実的にはあり得ないような高いインダクタンスを前提として電力効率を規定していることがあるが、CAT3636の値はそれに匹敵する。

 コンデンサにより供給できる電流量が制限されるため、チャージポンプ方式のコンバータによって熱の問題が生じることはめったにない。しかしチャージポンプにもいくつかの欠点があることを忘れてはならない。

 1つは、電圧を厳密に調整できないことだ。後段にリニアレギュレータを使うといったことを行わないと、チャージポンプの出力電圧は入力電圧に応じて変化する。実際、米Maxim Integrated Products社はチャージポンプの後段に別のレギュレータを用いることでこの問題を解決している。

 また、チャージポンプのノイズは、スイッチングレギュレータによるノイズに比べればはるかに小さなものである。しかし、それでもそのノイズが信号の系に漏れ込んで問題となる可能性はある。

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