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コンデンサの選び方オーディオ品質を高めるための(3/4 ページ)

» 2007年07月01日 00時00分 公開
[Kymberly Schmidt(米Maxim Integrated Products社),EDN]

Y5Vではなく、X7Rを

 よく用いられるコンデンサに、Y5V型とX7R型がある。いずれも、温度特性を指標として定められた規格で、Y5Vの温度範囲は−30〜85℃、X7Rの温度範囲は−55〜125℃となっている。しかし、125℃までの動作を考慮する必要がないからといって、安易にY5Vを選択してはならない。温度特性以外の部分にも、両コンデンサの特性には差があり、それがTHD+Nを制限する1つの要因になるからだ。

 図7は、Y5V型とX7R型の2個のコンデンサについて、印加DC電圧と容量変化の関係を表している。いずれも、0603サイズで定格電圧は16Vである。

 この結果からX7RとY5Vとでは、電圧係数が大きく異なることが分かる。X7Rは定格電圧以下での動作で容量が65〜70%低下するが、Y5Vでは70〜80%とさらに顕著に低下する。

図7 コンデンサの種類と印加DC電圧対容量変化率の関係 図7 コンデンサの種類と印加DC電圧対容量変化率の関係  ここで使用した2種類のコンデンサの規格はX7R(a)とY5V(b)とそれぞれに異なるが、大きさ(0603サイズ)と定格電圧(16V)は同じである。

 図8に、同じ2種類のコンデンサについて、AC電圧を印加した場合の容量の変化率を示す。また、図9は、図7と図8に示した現象がオーディオ品質(THD+N)にどのような影響を及ぼすかを表している。この評価では、入力インピーダンスが40kΩのオーディオアンプのカップリングコンデンサとして、X7R型、Y5V型の2種類のコンデンサを用いている。基本スペックは、容量値が1μF、定格電圧が16V、0603サイズで共通である。それぞれを使用した場合に、周波数20Hz〜20kHzの範囲でTHD+NがどのようになるかをAP社製オーディオアナライザで計測した。

図8 コンデンサの種類と印加AC電圧対容量変化率の関係 図8 コンデンサの種類と印加AC電圧対容量変化率の関係  比較対象のコンデンサは、図7と同じく(a)がX7Rで(b)がY5V。

 図9の結果から、Y5V使用時には低周波領域での歪がX7R使用時に比べて大きいことが確認できる。1kHz以上の周波数領域ではコンデンサによる違いは認められないが、これは高周波領域においてオーディオアンプのループゲインが低下するため歪の増大が制限されることに起因する。また、6kHz以上の領域で見られる減衰は、オーディオアナライザの入力に使用した帯域20kHzのフィルタ(Audio Engineering Societyの策定したAES17規格に則したフィルタ)の影響である。このフィルタは、20kHz以上の周波数で急峻な減衰特性を持ち、6.33kHz以上の入力周波数に対する3次高調波を減衰するものである。

図9 コンデンサの種類とTHD+Nの関係 図9 コンデンサの種類とTHD+Nの関係  比較した2種類のセラミックコンデンサは図7、8と同じく(a)がX7Rで(b)がY5V。比較のため、(c)としてプラスチックコンデンサ使用時の結果も示している。

 以上の結果から、良好なTHD+N特性を得るには、オーディオ信号ラインに挿入するコンデンサとしてX7R型を選択すべきである。class2コンデンサを用いるのであればX5R型*4)もY5V型よりは望ましいが、X7R型により最良のTHD+Nが得られるといえる。


脚注

※4…X5R型の温度範囲は、−55〜85℃である。


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