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AC電源ライン用の電圧モニターDesign Ideas

» 2007年10月01日 00時00分 公開
[David Williams,EDN]

 図1の回路は、AC電源ラインから絶縁された電圧モニターとして働く。低価格で構成できることが特徴の1つである。回路の動作も以下のように単純だ。


図1 AC入力電圧のモニター回路 図1 AC入力電圧のモニター回路 

 まず、AC入力電圧VINが+側である場合、その電圧が抵抗R1、R2、ダイオードD1を経由してフォトカプラーIC1のLEDに加わる。入力電圧VINが十分に高いと、D1とフォトカプラーのLEDが導通して電流が流れる。ここでD1とLEDが導通する電圧をイネーブル電圧VEとすると、ツェナーダイオードの降伏電圧が47V、LEDの順方向バイアス電圧が1.2Vなので、VEは48.2Vになる。これよりも入力電圧が低ければ、フォトカプラーの出力はハイになる。入力電圧がVEを超えると、フォトカプラー内のトランジスタが飽和状態になるため、出力がローになる。入力電圧がVEより低くなるまで、フォトカプラーの出力はローのまま維持される。

 以上の動作によって得られる出力は、一定の幅tTOTALを持つ矩形波となる。その幅は、入力電圧がVE以上になる時間間隔に対応する。入力電圧が120Vから144Vに変化すると出力矩形波の幅は広くなり、逆に144Vから120Vに減少すると矩形波の幅は狭くなる。

 ここで、入力電圧波形が余弦波であるとして出力波形を求める式について考えてみる。基準時間0において入力電圧がピーク値であるとしよう。このとき、フォトカプラーの出力電圧はローになり、その状態は入力電圧がVE以下になるまで継続する。この継続時間は次式で計算できる。

 VE=VIN×cos(2×π×f×tON

 余弦波は時間0に対して対称なので、tONは出力波形がハイである期間tTOTALの1/2になる。マイクロプロセッサを使用すれば、パルス幅は簡単に計測できる。そのパルス幅の値から入力電圧を求めるには、上式のtONをtTOTAL/2に置き換えた上で次式のように変形すればよい。

 VIN=VE/cos(π×f×tTOTAL

 この計算には、ソフトウエアかパルス幅対入力電圧の関係をまとめた換算表を利用する。この式で求められる値はAC波形のピーク電圧であり、その値から換算してRMS電圧を求めることができる。

 この回路の出力パルスの周波数は、入力電圧で決まるデューティサイクルには依存しない。従って、これをクロック発生回路として利用することもできる。出力パルスの周波数は常に入力AC電源の周波数(例えば60Hz)に等しいので、この出力パルスをタイマーなどの用途に利用できるということだ。また、この出力パルスのハイ/ローの切り替わりエッジが入力電圧のゼロクロス点から一定時間だけシフトした点にあることから、この出力パルスを交流負荷のゼロクロス制御にも利用できるだろう。

 この回路の設計に当たってはいくつか注意を要する点もある。ダイオードD2は、AC入力電圧が負になった場合のフォトカプラーの保護用素子として働く。D2がなくても、ほとんどの場合には逆バイアスに伴うリーク電流の効果によってフォトカプラーのLEDに過剰な逆電圧が加わることはない。とはいえ、D2を使用してバイパスするのがLEDへの過電圧印加を防止するための最良の策だといえる。ただし、このダイオードを追加するとその分だけ消費電力が増加する。

 また、入力電圧をより高精度に求めるために、回路に改善を施すことも可能だ。入力電圧を求める際の誤差の大半は、ツェナーダイオードの降伏電圧の誤差(5%程度)に起因する。この変動が入力電圧の計測値における大きな誤差要因となるので、誤差の小さいツェナーダイオードを使用することにより高精度化が図れる。

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