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» 2007年11月01日 00時00分 UPDATE

Design Ideas:低周波域にも容易に対応できるPSRR計測回路

[David Karpaty(米Analog Devices社),EDN]

 電源電圧変動除去比(PSRR:power supply rejection ratio)は、オペアンプの特性を評価する際によく使用されるパラメータの1つである。オペアンプの電源端子には、電源配線パターンの寄生素子と電源電流の相互作用によって誘起されるノイズや、同一電源を共用しているスイッチング回路からのノイズなどが加わる。これらのノイズにより、オペアンプに印加される電源電圧が変動するが、その影響がオペアンプの出力にどのくらい現われるかを示す指標がPSRRである。

 PSRRの周波数特性を計測する場合、一般的には米Agilent Technologies社の「8753」のようなDCバイアスポートを有するネットワークアナライザを使用する。例えば、負電源端子のPSRRを計測する場合には、オペアンプの負電源端子を8753のポート1に接続し、負電圧バイアス(負電源に相当)に正弦波電圧(ノイズに相当)を重畳した電圧を印加する。その上で、オペアンプの出力をアナライザのポート2に接続して計測を行う。この方法の問題点は、8753の内部バイアス電圧に制約があり、30kHz以下の周波数での特性が計測できないことである。多くの場合、PSRRについては30kHzよりはるかに低い周波数での特性が重要なのだ。

 代替案として、DCバイアスポートは備えていないが、周波数は1Hz〜10Hz程度まで計測できるアナライザを使用する方法が考えられる。そうしたアナライザの例としては、米Stanford Research Systems社の「SR785」がある。これを使用すれば、−120dBのレベルまで計測が行える。本稿では、このSR785をPSRRの測定に活用する方法を紹介する。

 図1に示したのは、負電源に対するPSRRの計測回路の例である。この測定回路の中心にあるのは、デュアルオペアンプ「AD8034」(Analog Devices社製)によって構成したバッファ、加算、反転処理を行う回路である。

図1負電源に対するPSRRの計測回路 図1負電源に対するPSRRの計測回路 

 図1の回路では、IC1A(AD8034の1つ目のオペアンプ)の非反転入力端子(3番端子)とSR785の出力ポートを接続する。IC1Aの出力端子(1番端子)はSR785のリファレンスポートに接続する。これにより、SR785の出力ポートからの正弦波がIC1Aから出力される。IC1B(AD8034のもう1つのオペアンプ)の反転入力端子(6番端子)は1kΩの抵抗を介してDCバイアス用外部電源の+端子に接続する。この構成により、IC1Aからの正弦波出力と、DCバイアスとがIC1Bにより加算/反転されるので、その出力をDUT(device under test:テストの対象とするデバイス)の負電源端子に入力すればよい。

 図の通り、DUTの負電源端子にはバイパスコンデンサは付加しない。また、IC1Aの非反転入力端子からグラウンドへの1kΩの抵抗は、この端子がフローティングにならないようにするためのものだ。この状態で、DUT出力をSR785のチャンネル2Aに接続すれば、計測回路が完成する。

 この例では、AD8034を用いてバッファ/加算/反転回路を構成した。同製品は、電源電圧が5V〜24V、信号帯域が1MHz以上、駆動可能な負荷容量が試験用のケーブルの容量を無視できる程度に高いといった特徴を備える。

 AD8034によるバッファ/加算/反転回路が伝達ロスの面で問題ないことは、図2に示す計測結果から確認できよう。この図は、バッファ/反転/加算回路の伝達ロスの周波数特性を表している。10Hz〜10kHzの周波数範囲での伝達ロスは0.0025dBと極めて小さくフラットで、10kHz〜100kHzの範囲でも0.024dB以下である。

図2 伝達ロスの周波数特性 図2 伝達ロスの周波数特性 

 この例では、DUTの最大電源電圧が±15V、負電源のPSRRの計測が必要、計測時のDUT電源電圧が±10Vということを前提とした。SR785の出力は最大ピーク電圧が5Vであり、これをフルに利用しようとするなら、IC1AはSR785からの最大信号電圧である ±5Vをクリップしないだけの余裕を必要とする。この条件を負電源PSRRの計測に対して確保するには、AD8034の電源電圧を6Vと−16Vにすればよい。それにより、IC1Aは0V±5Vの信号を扱うことができる。−16Vの電源は、−10Vのバイアス電圧と±5Vの信号の重畳した−10V±5Vを出力するIC1Bの電源として必要なものである。また、SR785または相当品の出力電圧は、DUTがリニア動作する範囲に設定することが重要である。

 正電源に対するPSRRの測定回路も、基本的な考え方は図1と同様である(図3)。図1と異なる点としては、まずDCバイアス電源の極性を逆にする。また、バッファ/加算/反転回路の出力であるIC1Bの出力は、DUTの正電源端子に供給する。そして、図1で正電源端子に接続されていたバイパスコンデンサはすべて取り除き、負電源端子にはバイパスコンデンサを付加する。AD8034の電源電圧については、先述したのと同じ前提であるなら、16Vと−6Vにすればよい。これにより、正電源に対するPSRRを測定することができる。

図3 正電源に対するPSRRの計測回路 図3 正電源に対するPSRRの計測回路 

 参考のために、図1の回路を用いて、オペアンプの負電源に対するPSRRを測定した結果の例を図4に示しておく。100kHz以上の周波数に対する計測には8753を使用し、その結果をプロットしている。

図4 負電源に対するPSRRの計測結果 図4 負電源に対するPSRRの計測結果 

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