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» 2007年12月01日 00時00分 UPDATE

Global Report 国/地域によって異なる「リファレンス設計」の意義:MTK社が携帯電話市場を事実上独占

[Jeff Lu,EDN]

 リファレンス設計という概念は、それが初めて登場したころには一部の半導体企業しか持っていなかった。それがいまでは、半導体企業が中国で事業を展開しようとすれば、標準的なサポートの一部としてリファレンス設計を提供しなければならない。中国の企業(特に家庭用電化製品)はリファレンス設計に依存している。中国深センを拠点とする携帯電話機設計会社の技術者は「さまざまなリソースを自社設計に投入していくつもりがないわけではない。会社の上司や市場が製品投入までの時間を待ってくれないだけだ」と述べている。

 中国で携帯電話機の設計を行う台湾MTK(MediaTek)社は過去数年、地元ベンダーのリファレンス設計に対する考え方に大きな影響を与えてきた。多国籍企業を含む多くの半導体企業は、完全ではないリファレンス設計を提供しているというのが今日の常識だ。それは、自社のチップセットをベースとするハードウエアリファレンス設計のみを提供しているからである。このような設計は、商用で使うための最適化が不十分であることが多い。例えば、そのハードウエアに対応するソフトウエアがないことが多いため、開発者はソフトウエア開発を行うか、外部のソフトウエアベンダーに依頼する必要がある。

 米Gartner社の主席アナリストであるOliver Xu氏の言葉を借りれば、MTK社のビジネスモデルは「1つ買えばもう1つは無料」である。つまり、ハードウエアであるチップとソフトウエアをセットにして販売している。このソフトウエアは無料なので、顧客が支払うのはチップ代だけで済む。さらに、携帯電話機を開発する場合、MTK社のリファレンス設計を活用することにより、開発チームが設計するのはユーザーインターフェースと外装のみで済む。

 MTK社が行った手法は、携帯電話機の設計においてその技術レベルの閾(しきい)値を大幅に引き下げてしまった。それは、投資や製造、販売ルートの問題を十分に解決できるとすれば、中国の携帯電話機市場に容易に参入できることを意味する。巨大な中国の携帯電話機市場は、新興の携帯電話機会社を育成する場所となっている。中国では70を超える会社が携帯電話機の製造許可を取得している。それ以外にも無許可の企業が多数あり、「もぐり」で活動を行っている。

 2006年の中国の携帯電話機市場におけるMTK社の市場シェアについて、Xu氏は40%と推定する。しかし、業界関係者の多くは「MTK社の市場シェアはもっと高く、事実上独占状態にある」と見ている。

 新興のマルチメディアプロセッサベンダーである中国C2 Microsystems社のマーケティング部長を務めるFrank Liu氏は、「日本では半導体チップのみを販売すれば良い。当社では顧客がそのチップを使って何を開発するのかはほとんど把握していない。しかし、中国で半導体チップを販売するには、ハードウエアに加えてソフトウエアを網羅したトータルソリューションを提供しなければならない」と述べている。

 確かに、MTK社のビジネスモデルは、中国の家電製品ベンダーに対して最終製品が差異化されないという悪い影響も与えてきた。競合製品の外装を取り除けば、使っている部品が同じであることに気付くだろう。使用する部品に違いがないとすれば、半導体チップを使う顧客は少なくとも2つのリスクを持つことになる。それは価格競争で生き残るしかないことと、1つのベンダーに過度に依存することである。

 中国の一部の半導体ベンダーは、MTK社の独占を打破するために新たなビジネスモデルの確立を模索している。中国Chipnuts Technology社(以下、Chipnuts社)は最近、スマートホン設計のプラットフォームを導入した。MTK社とは異なり、Chipnuts社は異なるベンダーのソフトウエアとハードウエア製品をプラットフォームに組み込むことで、顧客により多くの選択肢を与えている。Chipnuts社のバイスプレジデントを務めるJun Zhan氏は「業界連鎖により、当社のプラットフォームが活用されることを期待している」と述べている。

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