コラム
» 2008年03月01日 00時00分 UPDATE

Baker's Best:A-D変換精度と基準電圧の関係

[Bonnie Baker,EDN]

 逐次比較型(SAR:successive approximation register)のA-Dコンバータにおいては、基準電圧の質が変換精度に大きく影響する。図1に示したのは、3ビットのA-Dコンバータにおける変換特性(入出力特性)である。一方は理想的なA-Dコンバータの特性を表し、もう一方はゲイン誤差が発生する実際のA-Dコンバータの特性を表している。この種のA-Dコンバータの変換特性は次式で表すことができる。


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 ここで、DCODEはデジタル出力コード、VINは入力アナログ信号電圧、VOSはA-Dコンバータのオフセット電圧、VREFはA-Dコンバータに供給する基準電圧、Nは変換ビット数(変換分解能)、VGEはA-Dコンバータの誤差電圧である。このVGEは、A-Dコンバータのゲイン誤差、基準電圧の誤差、ノイズを総合したものである。この式を使えば、基準電圧が変化したときのA-Dコンバータ出力の変化を簡単に求められる。

 一般に、分解能の高いA-Dコンバータでは、基準電圧のオフセットによる誤差がA-Dコンバータ自体のオフセットによる誤差よりも大きくなる。この傾向は、使用温度範囲全体で見るとより顕著になる。また、基準電圧の誤差がA-Dコンバータ出力に及ぼす影響は、入力信号電圧が高くなるほど大きくなる。

 A-Dコンバータが基準電圧入力端子部にバッファを内蔵していない場合、その端子に流れるスパイク電流の影響が変換特性に現われてしまう。そのため、A-Dコンバータの基準電圧端子と外部基準電圧源との間には低ノイズアンプを挿入することが望ましい。

 A-Dコンバータにおける基準電圧誤差の影響を低減するために、レシオメトリック手法(ratiometric design)が利用されることがある。この手法を適用する場合、A-Dコンバータ回路への部品の追加、または校正に用いる信号処理ソフトウエアの追加が必要となる。また、校正を行うためには、ゲイン/オフセットに関する特性を計測して、あらかじめその傾向を把握しておかなければならない。

 基準電圧にノイズが含まれていると、A-Dコンバータ自体の変換精度によらず、S/N比(信号対雑音比)やTHD(全高調波歪)が劣化する。先述したとおり、その度合いは、入力信号電圧が高くなるほど大きくなる(図2)。基準電圧が変換精度に及ぼす影響について調べる場合には、まず最初にフルスケールのDC電圧を入力として用いるとよい。その次に、AC信号を入力として周波数応答特性を詳細に調べるとよいだろう*1)

図1 3ビットA-Dコンバータの入出力特性 図1 3ビットA-Dコンバータの入出力特性 理想的なA-Dコンバータの伝達特性(赤)とゲイン誤差を持つ実際のA-Dコンバータの伝達特性(黒)。
図2 基準電圧に含まれるノイズの影響 図2 基準電圧に含まれるノイズの影響 基準電圧に含まれるノイズの影響は、入力信号電圧が高くなるほど大きくなる。
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<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com



脚注

※1…Oljaca, Miro and Bill Klein, "Improved Voltage Reference Circuits Maximize Converter Performance," Texas Instruments Webinar on Demand.


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