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「ZMIN」という考え方Signal Integrity

» 2008年07月01日 00時00分 公開
[Howard Johnson,EDN]

 図1のような終端回路があったとする。この回路では、終端抵抗RTが25Ωのときに、ドライバのハイとローの出力レベルが規定された電圧値であるVOHとVOLに正確に合致するとしよう(図2)。抵抗値を大きくするとドライバの駆動条件に余裕ができ、出力波形はハイ/ローのいずれも規定レベルを上回る。一方、抵抗値を小さくすると、出力振幅は規定値に達しない。


図1 ドライバと負荷の条件 図1 ドライバと負荷の条件
図2 ドライバの出力波形と終端抵抗の関係 図2 ドライバの出力波形と終端抵抗の関係 終端抵抗の値を小さくすると、出力振幅が減少する。

 終端抵抗RTは回路のゲインを決め、終端電圧VTがDCオフセット電圧を決める。終端回路を設計する際の要点は、ドライバの出力振幅が確実に規定以上となるよう実効終端抵抗の値を十分に高くし、出力波形がハイ/ロー両方の規定レベルと交わるように実効終端電圧を選定することである。これは、終端回路が抵抗と電池から構成される場合にも、分圧回路(スプリットターミネーション)として構成される場合にも成り立つことだ。

 終端電圧を最適に設定したとして、ドライバ出力が誤差やマージンを含まないとした場合、同出力が規定レベルにちょうど達し得る終端抵抗の最小値は特別な意味を持つ。筆者はこの値を「ZMIN(最小インピーダンス)」と呼んでいる。この値の意味を理解することが、終端回路をうまく設計する上での秘訣である。

 このZMINの値は、一般的な出力電流の算出式を利用して求めることができる。そこで用いるのは、ドライバの電流は常に終端抵抗の両端の電圧をΩ単位の終端抵抗値で割った値に等しくなるという関係である。ZMINを正しく設定したとすると、ドライバ出力が規定のハイレベルの電圧になるとき、その出力電流は規定の値に等しくなる(以下参照)。


 ここで、IOHは規定のハイレベルに達した際の出力電流、VOHは規定のハイレベルの出力電圧、VTは終端電圧である。同様に、ローレベルに関しても以下の関係が成立する。


 式1と式2の差をとると、以下のようになる。


 この式をZMINについて解くと、終端回路の設計において極めて重要な意味を持つ次式が得られる。


 式4は、「ZMINはハイレベルとローレベルそれぞれの規定電圧の差を各レベルに対応する規定電流の差で割った値になる」ということを表す。ここで重要なのは、このZMINより低い定常インピーダンスを持つ負荷をドライブするのは不可能だということである。

 なお、式4を利用する際には、電流の極性に注意しなければならない。ソース(流し出す)電流が正で、シンク(吸い込み)電流が負である。例えば、ドライバのソース/シンク電流がともに25mAであれば、その差は25−(−25)=50mAとなる。

 ここで、設計中のドライバのZMINが60Ωであると算出されたとしよう。その場合、終端抵抗の設計値を60Ωとしてはならない。それでは、部品のバラツキに対するマージンがないからだ。また、終端電圧の温度変化や経時変化によって、条件を満たせないケースが生じる。これらについて考慮し、終端抵抗は少し高めの70Ωといった値にすべきである。

 伝送ラインの特性インピーダンスが50Ωである場合、この70Ωという終端抵抗の値は完全な解ではない。これだと、(70−50)/(70+50)=16.7%の反射が生じるからである。もし、この反射波による電圧変動が大き過ぎるならば、伝送ラインのインピーダンスを上げればよい。おそらく、その値としては60〜70Ωが適切であろう。伝送ラインのインピーダンスを、終端抵抗の値に近づけるほど、システムの動作がより良くなる。

 結論として、終端回路の設計においては、回路の許容誤差を考慮して、終端抵抗の値をZMINよりわずかに高い値に選び、伝送ラインのインピーダンスを終端抵抗に極力近い値とするというのが最適な解である。

<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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