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» 2008年08月01日 00時00分 UPDATE

計測/テスト分野で進むWiMAX対応 (1/2)

ノート型パソコンや携帯電話機にWiMAX対応機能を追加するためのチップセットがいくつか世に出てきた。それに対応して、実験用の計測機器や製造工程で用いるテスト装置も大きな進化を見せている。各装置メーカーは、この新たな通信規格にどのように対処しているのだろうか。

[Rick Nelson,Ron Wilson,EDN]

WiMAXを巡る動向

 WiMAX(worldwide interoperability for microwave access)対応のチップセットが半導体メーカーから発売されるようになった。それに呼応して、テスト機器ベンダーはそれらのチップセット、ないしはそれらを搭載した製品をテストするために必要な実験用測定機器や製造工程向けのATE(automatic test equipment:自動テスト装置)システムを提供し始めた。WiMAXは、パソコンベースのネットワークと携帯電話通信のカバレッジの拡大に向けて準備が整った状態にあると言えよう。

 WiMAXは、パソコンベースのネットワーク技術として有望視されている。それに加え、モバイル技術としての可能性も見せている(別掲記事『WiMAX市場の可能性』を参照)。WiMAX Forumの会員企業らは、「WiMAXは携帯電話を含む複数のアプリケーション向けの技術だ」としている。米Aeroflex社のPaul Argent氏は、「WiMAXは、まずノート型パソコンでの広帯域ワイヤレスアクセスに用いられる」と述べている。Argent氏は、今後2年間のうちに「WiMAXは、主にパソコンにおける高速データアクセスを提供することになるだろう。コーヒーショップや移動中の自動車でも利用できる」と述べる。

 米Agilent Technologies社でWiMAXビジネスチームを率いるJennifer Stark氏は、「WiMAXはほかの広帯域ワイヤレスアクセス技術を代替するものではない」と指摘する。同氏は、ワイヤレス技術を通信距離で分類する。10m以下のパーソナルエリアネットワークで使用するUWB(ultra wideband)やBluetooth、100m以下の範囲で使用するWLAN(wireless local area network)、5km〜16km(3〜10マイル)以上の範囲で使用するWiMAXといった具合である。同氏は、「WiMAXとWLANについては、条件に応じてより効果的な接続が行えるほうを選択可能な機器が登場し、両者が互いに補完し合うものになる」と予測する。「例えば、時速50マイル(約80.5km)の電車に乗っているときにはWiMAXを選択したほうがよい。その後、静止状態に移ったら、WLANを使用できるという形が望ましいだろう」(同氏)ということだ。

WiMAXに対応可能な計測手法

 WiMAXに対応したIC製品に関し、製造時のテスト工程(以下、製造テスト)に向けて、ATEメーカーはWiMAXのテスト要件に合わせてRFシステムを改造するというアプローチをとっている。一方、ベンチ型/ラックマウント型計測器のメーカーは、WiMAX対応のコンポーネント、モジュール、機器の種類が増えても対応できるようにしている。各ベンダーは、WiMAXのインフラを設置/メンテナンスするサービスプロバイダからの要求にも対応する。

 米Verigy社のビジネス開発エンジニアであるAdam Smith氏は、「WiMAXに対応したテストはWLANのそれよりも進化したものになる」と述べる。「WiMAXでは、より小さな面積により多くの機能が搭載されることになる。そのこともあって、テストの要件はより厳しいものとなる。WiMAXに対応したテスト機器には、優れたノイズ性能が要求される。感度がかなり高くなければならない」と同氏は語る。Agilent社のStark氏は、「WiMAXはOFDM(orthogonal frequency division multiplexing:直交周波数分割多重)方式を基盤技術としている。ピーク電力レベルと平均電力レベルが高くなり、非常に正確なパワーアンプを用いた測定が必須だ」と指摘する。

 WiMAX対応ICの製造テストについては、チップの設計者とテストエンジニアにいくつかの課題が課される。まず、WiMAXを広く普及させるには、製造テストを簡素化するためのチップ上の対策を含めて、テストにかかわるコストをできるだけ低く抑えなければならない。「最終的には、99米ドルの携帯機器にWiMAX機能を搭載したいというレベルの要求が出てくるだろう」とSmith氏は語る。

 一方で、迅速かつ包括的なテストの実施を妨げる要因がいくつか存在する。まず、WiMAXの規格はまだ確定していない。現在行われている調整は規模としては小さなものだが、今後も規格に変更が生じることは1つの問題である。しかし、それよりも重要なのは、WiMAX関連の各種規格がシステムレベルでの相互運用性の保証のみを目的としていることだ。このことの何が問題なのかと言えば、まず、IC/機器の実装方法や、実装における機能ブロック間での信号の送受に関する要件が定められていない。また、機能ブロック間でやりとりされる信号にアクセスする手段が存在しない場合もある。例えば、米Teradyne社のシニア製品技術者であるKen Harvey氏は、「WiMAX対応ICの集積度が高まると、I/Qの信号に直接アクセスする手段がなくなるかもしれない」と指摘する。

 RFミキサーとA-Dコンバータ間の信号のテストに関する規格がなく、またおそらくその信号にアクセスする手段も存在しない。となれば、分解信号のEVM(error vector magnitude:変調精度)やデータストリームのビットエラー率といったシステムレベルの要件だけで良否を判定せざるを得ないことになる。Agilent社のStark氏は、これについて次のように説明してくれた。

 「WiMAXの市場は、いくつかのセグメントに分類できる。チップ/コンポーネント、モジュール(チップメーカーのリファレンスデザインがこれに相当する場合がある)、機器、サービスプロバイダの4つである。EVMは機器レベルでの測定を必要とするシステムレベルの仕様であることは確かだが、全体的なEVMを許容範囲に収めるためには、パワーアンプのような部品や、モジュールについてもEVMの観点から注意を払わなければならない。ベンダーが、機器の厳しい制約の範囲内で自社のコンポーネントにWiMAX対応機能を搭載しようとする場合、最終的には、その機能、RF性能、消費電力において他社との差異化を図る必要がある。その上で、テストが重要な役割を担うことになる」。

 幸い、「WiMAX機器ベンダーが、これまでに見たこともないようなまったく新しい機器を製造することはない。ノート型パソコンや、PDA端末、携帯電話機など、既存の機器にWiMAX対応機能が追加されることになる」とStark氏は語る。しかし、機器自体がなじみ深いものであったとしても、それがシステムレベルの性能基準を満たすかどうかは、システム設計、対象とする動作環境、ソフトウエアなどにも依存する。従って、WiMAXシステムの性能仕様と、WiMAX対応ICにおいてテスト可能な動作の間には、直接的な相関関係は存在しないと言える。

WiMAX市場の可能性

 市場調査会社の米In-Stat社によると、WiMAXチップセットの市場は、ノート型パソコン向けのモバイルWiMAXの普及によって、2012年までに大きく広がるという*1)。同社は、この市場の拡大が、Intel社がモバイルプロセッサのプラットフォーム「Centrino2(開発コード名はMontevina)」のオプションとして2008年に発表する「Echo Peak」モジュールをきっかけとして起きると予測している。このモジュールは、モバイルWiMAXとWi-Fiに対応する。「WiMAX CPE(customer premises equipment)、WiMAX機器の外部クライアント、携帯電話機/WiMAX端末のデュアルモード機も、2012年にかけてWiMAXチップセット数の増加に貢献するだろう」とIn-Stat社は報告している。

 In-Stat社アナリストのGemma Tedesco氏は、プレス向け発表資料の中で、「WiMAXに対応した端末向けチップセットの市場全体は、2007年の2700万米ドルから、2012年には5億米ドル近くまで成長するだろう。さらに、WiMAXシステムの基地局向け半導体製品の売上高は、2007年の1億3000万米ドルから、2012年にはおよそ14億米ドルに増大すると予測される」と述べている。

 また、In-Stat社は別の報告書で、「通信事業者は、モバイルWiMAXを利用することで、競合する技術よりも多くのサービスを提供できるようになる」と述べている*2)

 In-Stat社によると、WiMAXの出現以来、モバイルWiMAXの規格に対しては意見が大きく2つに分かれて議論が続いているという。同社アナリストのDaryl Schoolar氏は、プレス向け発表資料の中で、「WiMAXと何の利害関係もない一部の装置ベンダーは、モバイルWiMAXに対し、2つの可能性を考えている。1つは、WiMAXが台頭するということは、3G(第3世代)が廃れることを意味するというものだ。一方、フランスのAlcatel-Lucent社、米Motorola社、フィンランドNokia Siemens Networks社などのインフラベンダーは、複数の広帯域モバイルワイヤレス技術が共存すると見ている。当社は、後者の見方が正しいと考えている」と述べている。



脚注:

※1…"WiMax Chipset Market 2006-2012: Faith in Mobile WiMax Drives Expected Volume Growth," In-Stat

※2…"Complement or Threat?WiMax Strategies for Mobile Operators," In-Stat


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