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» 2008年08月01日 00時00分 UPDATE

Design Ideas:オペアンプのオフセットをリアルタイムに計測

[Glen Brisebois(米Linear Technology社),EDN]

 オフセット電圧(入力オフセット電圧:VOFF)はオペアンプの規格の中で最も重要なものの1つである。多くのオペアンプ回路では、オフセット電圧を無視できる程度に低減することが可能だが、それには、温度やフリッカノイズ、時間の経過に起因して変化するオフセット電圧を正確に求めることが必要となる。最近では、オフセット電圧をマイクロボルトのレベルに低減するためのものとして、チョッピング/オートゼロ手法が広く使用されている。この手法によって得られる精度は非常に高い。

 本稿では、チョッピングを利用した新たなオフセットキャンセル手法を提案する。その方法では、オフセット電圧の増幅度を変化させることにより、オフセット電圧をリアルタイムに計測する。その計測値を出力から減算すれば精度を改善できる。

 図1はオペアンプとして「LTC6240 HV」を使用し、一般的な反転増幅回路を構成した例である。この回路では、オフセット電圧(ノイズ)が11倍に増幅され、それが出力段における誤差として現われる。この回路では、誤差を含んだ出力信号から本来の出力信号を識別して取り出すすべはない。

図1 増幅度が−10の増幅回路 図1 増幅度が−10の増幅回路 信号の増幅度は−10、オフセット電圧の増幅度は11である。すなわち、入力段におけるオフセット誤差が11倍に増幅されて出力に重畳される。出力からこの誤差成分を取り除くことはできない。LTC6240HVのオフセット電圧は標準で50μV、最大で125μV、温度変動係数は最大で2.5μV/℃(1Hzにおける値)。

 図2に、オフセット電圧のキャンセル手法を適用した回路を示す。スイッチS1によって抵抗R3とグラウンド間の接続を開閉すると、信号の増幅度/帯域に影響することなくオフセット電圧の増幅度が変化する。この方法であれば、スイッチS1が開であれ閉であれ、帯域はコンデンサC1によって制限される。

図2 オフセット電圧の増幅度切り替え機能を付加した増幅回路 図2 オフセット電圧の増幅度切り替え機能を付加した増幅回路 信号の増幅度はスイッチS1の状態によらず10で固定。オフセット電圧の増幅度はS1が開では11、閉では22になる。

 具体的な動作としては、スイッチS1を開閉すると、それに対応してオフセット電圧の増幅度が11と22に切り替わる。それにより、オフセット電圧に依存した振幅を持つ矩形波が出力に重畳される。つまり、出力にはオフセット電圧の11倍相当の振幅を持つ矩形波が現れるのである。

 図3に、図2の回路の出力信号のオシロスコープ波形を示す。これは、入力信号電圧を0V(グラウンドレベル)に固定した場合の結果である。上段は、スイッチS1をコントロールするためのパルス信号Sの波形である(周波数は750Hz)。下段が出力波形であり、1mVと2mVの誤差成分が繰り返し現われている。このような出力波形が得られるのは、オフセット電圧の増幅度を2倍に切り替えているからである。つまり、スイッチS1を制御することによってオフセット電圧の増幅度に11倍の差が生じ、それにより出力の矩形波振幅が決まるということだ。この関係は、入力電圧に依存することなく得られる。この例の場合、1mVの振幅値は、オペアンプのオフセット電圧が90μVであることを表している。

図3 図2の回路の出力波形(DC入力の場合) 図3 図2の回路の出力波形(DC入力の場合) 上段はS1をコントロールする周波数750Hzの信号Sの波形、下段は出力波形。入力電圧は0Vで固定している。1mVと2mVの信号が交互に現われている。

 図2の回路は単純な加算回路に似ている。連続した入力信号と断続する誤差信号が1本の端子に入力されて加算されるということである。こうした動作は、チョッパ方式オペアンプの動作そのものだと言える。ただし、本稿の方法でチョッピングされるのは、オペアンプへの入力信号ではなくオフセット電圧である。なお、オフセット電圧を計測することだけが目的であれば、入力信号は0V入力でかまわないし、チョッピングも一時的に行うだけでよい。

 図4は、2mVppの正弦波信号を入力とした場合の結果である。信号の増幅度は10なので、20mVppの出力が得られている。また、図3に示したのと同じように振幅1mVの矩形波が重畳されている。これがオフセット電圧に対応するリアルタイムの誤差情報となる。すなわち、出力波形を観測するだけで、信号の真の値がいくつであるのかを判断できる。この出力信号から誤差成分を抽出/除去する方法としては、通常のチョッパ方式オペアンプで用いられているのと同様の手法が利用できる。あるいは、デジタル化した後にソフトウエア処理する方法も適用可能である。

図4 図2の回路の出力波形(正弦波信号入力の場合) 図4 図2の回路の出力波形(正弦波信号入力の場合) 上段はコントロール信号Sで、下段が出力波形。図3と同様の矩形波が重畳されている。

 本稿では、説明を簡単にするために反転増幅回路を取り上げたが、スイッチS1として高品質なアナログスイッチを使用すれば、非反転構成の回路も実現可能である。なお、この手法のようにサンプリングを利用するシステムでは、ノイズに対するケアが必要である。具体的には、チョッピング回路の前段で高周波成分をフィルタリングする必要がある。また、本稿の方法ではバイアス電流やリーク電流に起因する誤差は補正できないので注意されたい。

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