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» 2008年09月01日 00時00分 UPDATE

最新センサーデバイスが変える予防安全システム (1/6)

地球温暖化による気候変動や、原油の高騰に起因するガソリンの値上がりなどにより、現時点における自動車の新技術開発の方向性は、CO2削減や燃費向上につながる“エコカー”に注目が集まっている。しかし、1トン以上の重量で高速走行する自動車にとって、事故回避や事故の被害を低減するための安全システムも、エコカーと同じく重要な技術開発項目である。そして、安全システムのキーデバイスといえるのが、人間の見る、感じるための感覚器官に相当するセンサーである。

[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

 自動車の技術開発において、安全性が重視されるようになったのは、自動車の発明から約80年経過した1960年代の米国から始まっている。1965年に「どんなスピードでも自動車は危険だ」を出版したラルフ・ネーダー氏の活躍により、連邦自動車安全基準が制定された。そして、米国市場に輸出していた欧州や国内の自動車メーカーにも安全技術に対する意識が広がっていった。

 とはいえ、1960年代当時に存在した安全技術は、シートベルトや車体構造などドライバを守る衝突安全システムが中心であり、その基本技術は機械技術であった。本格的なセンサーと電子システムを備えた安全システムは、ホール素子を使った車輪速センサーにより車輪の空転を検知し、ブレーキ油圧を制御するアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の登場まで待つ必要がある。ドイツRobert Bosch社が、乗用車向けABSの量産を開始したのが1978年であり、エアバッグの採用も同時期に始まっている。


富士重工業の先進運転支援システムEyeSightは、ミリ波レーダーを使用せずにステレオカメラだけで、プリクラッシュブレーキなどの予防安全システムを実現した。 富士重工業の先進運転支援システムEyeSightは、ミリ波レーダーを使用せずにステレオカメラだけで、プリクラッシュブレーキなどの予防安全システムを実現した。 

 1980年〜1990年代にかけて、ABSや同じく車輪速センサーを使って発進時の車輪空転を防止するトラクション・コントロール・システム(TCS)、エアバッグの普及が進んで行った。1990年代後半には、ABSとTCSの機能を統合し、エンジンやステアリング制御も行う横滑り防止装置(ESC)が開発され、安全システムにカメラやレーダーモジュールなどの使用が始まった。2000年以降は、半導体製造技術を応用して製造する微小電子機械システム(MEMS)デバイスとなった加速度/角速度/圧力/磁気センサーや、CCD/CMOSイメージセンサー、ミリ波/レーザーレーダーなどを組み合わせた予防安全システムが多数登場している。


最新センサー技術(1) イメージセンサーで“見る”

写真1 富士重工業のレガシィアウトバック(提供:富士重工業) 写真1 富士重工業のレガシィアウトバック(提供:富士重工業) EyeSightを搭載できる。また、改良型レガシィの2.0GT、3.0RにもEyeSight搭載モデルがある。
写真2 EyeSightのステレオカメラ(提供:富士重工業) 写真2 EyeSightのステレオカメラ(提供:富士重工業) ルームミラー上方に設置する。左右カメラの間隔は350mm。

 ドライバが自動車を運転する時に最も利用している感覚器官は「目」だろう。前、横、後方をしっかり視認することが、安全運転の基本である。もちろん安全システムにおける前方認識センサーについても、人間の“見る”機能を模すことが検討されてきた。富士重工業が、2008年5月に発売した新型「レガシィ」にオプション搭載される先進運転支援システム「EyeSight」は、その最新成果といえる(写真1写真2)。


■ステレオカメラだけで実現

富士重工業の柴田英司氏 富士重工業の柴田英司氏 

 EyeSightは、衝突時の事故被害を軽減する「プリクラッシュブレーキ」や、前方障害物を認識して急発進を抑制する「AT誤発進抑制制御」、ほぼ0km/時から車間距離維持ができる「全車速追従機能付クルーズコントロール」を、世界で初めてステレオカメラだけで実現した安全システムである。ほかにも、レーダーを使った一般的なプリクラッシュシステムで検知する真正面の車両以外に、斜め前方の車両や自転車、歩行者などを検知可能であり、車線逸脱認識や車両のふらつき検知などもできるようになっている。

 技術開発の基盤となったのが、1991年から、国内自動車メーカーを中心に、官庁や大学も参加して推進されてきた先進安全自動車(ASV)推進計画である。2000年以降に各社が市販車への導入を進めている予防安全技術は、このASV推進計画の第2期(1996年〜2000年)もしくは第3期(2001年〜2005年)に基礎技術が開発されたものである。現在のASVは、第4期(2006年〜2010年)にあたり、道路インフラとの連携や車車間通信を利用するITS関連の安全技術開発に重心が移っている。

 EyeSightも、ASV第2期の技術を市販展開したシステムとなる。EyeSightの技術開発を統括するスバル技術本部車両研究実験第3部主査の柴田英司氏は「当社は1980年代末から、スバル技術研究所でステレオカメラの基礎研究を行っていた。この技術をASVに転用することで、前方認識センサーとしてのステレオカメラ開発につながった」と語る。

 ステレオカメラの安全システムへの実用展開は、1999年に開発した「ADA(Active Driving Assist)」から始まる。ADAは、現行のEyeSightと同じく、ステレオカメラだけを使った安全システムで、車間距離警報、車線逸脱警報、クルーズコントロール、カーブ警報・制御という4つの機能を実現。「レガシィ・ランカスター」(現在のレガシィ・アウトバック)のADAモデルとして市販された。

図1 EyeSightのシステム構成(富士重工業資料を基に作成) 図1 EyeSightのシステム構成(富士重工業資料を基に作成) ステレオカメラの画像処理結果をもとに、ハイスピードCANによる通信で車両制御を行う。アクティブ・ブースタによるブレーキ制御を除き、ADAも同様のシステム構成となっている。

 最新システムであるEyeSightと約10年前のADAとも、システム構成は基本的には変わっていない(図1)。モノクロ30万画素のCCDセンサーを2個使用するステレオカメラで撮影した画像を専用回路で処理して前方の状態を認識・判断し、メーター表示や警報、エンジン、トランスミッションなどの車両制御を行う。通信系が、通信速度500kビット/秒のハイスピードCANで行っていることも同じである。機能面で異なる、ADAのカーブ警報・制御機能は専用カーナビゲーションとの連携で実現しており、EyeSightのプリクラッシュブレーキなどブレーキ関連の機能は、専用のアクティブブースタで制御している。「ADAのクルーズコントロールではシフトチェンジするレベルで、ブレーキ制御は行っていなかった」(柴田氏)。EyeSightにある、VDC(富士重工業におけるESC)との連携については、ADAのソフトウエアを改良することで2001年に実現している。

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