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アンプのオン/オフ機能を利用した位相検出器Design Ideas

» 2008年09月01日 00時00分 公開
[W Bruce Warren,EDN]

 オペアンプ製品には、米Analog Devices社の「AD8041」や米Intersil社の「EL5100」などのように、ディセーブル機能(オン/オフ機能)を持つものがある。この機能を利用して、位相検出器や周波数ミキサーを構成することができる。図1に示した回路がその具体例である。この回路は、低周波信号用の位相検出器として働く。


図1 ディセーブル機能付きオペアンプを利用した位相検出器 図1 ディセーブル機能付きオペアンプを利用した位相検出器 オペアンプのディセーブル入力を基準信号の周波数でスイッチングし、その出力に低域通過フィルタをかけることにより、入力信号と基準信号の位相差に比例するDC出力が得られる。

 図1の回路では、ディセーブル端子を用いてオペアンプを位相基準信号の周波数でオン/オフする。その結果、オペアンプの出力としてDC出力が得られる。このDC出力は、入力信号と基準信号の位相差に比例することになる。

 図の回路において、オペアンプ出力であるVOUT(t)は以下の式で表せる。


 ここで、VIN(t)はA×cos(ωREF×t+θ)で表現可能な入力信号、ωREFは位相基準信号の周波数、θは位相である。一方のG(t)はオペアンプの増幅度であり、これがディセーブル機能によって時間的に変動することになる。すなわち、G(t)の波形は、位相基準信号の周波数で0とG0にスイッチングされる矩形波となり、そのデューティサイクルは50%であるとする。ここで、G0はオペアンプがイネーブルの状態にあるときの増幅度である。G(t)は周期関数なので、次式のようにフーリエ級数に変換できる。


 VIN(t)とG(t)を乗算し、その結果からDC項のみを取り出すと、出力のDC成分VOUT(dc)は以下の式で表せる。


 図1の回路において、オペアンプEL5100の帯域幅は200MHzであり、ディセーブル端子(図1の例の場合、8番端子)に0V〜4V(最小)の矩形波を印加することによりオン/オフできる。フィードバック抵抗の値を図1のとおりにすると、G0の値は3になり、位相検出器出力の最大値が入力信号のピーク値にほぼ等しくなる。EL5100のディセーブル時間は180ns、イネーブル時間は650nsなので、約250kHzの周波数で増幅度を切り替えられることになる。さらに高い周波数になると、スイッチングのデューティサイクルを50%に維持することができなくなるため、位相検出器としての増幅度が低下する。

 オペアンプ後段の低域通過フィルタはVOUT(t)からDC成分を抽出するためのものであり、カットオフ周波数(−3dB減衰する周波数)は800Hzである。0.1μFのコンデンサに直列に接続している100Ωの抵抗は、フィルタによる位相遅れを制限するよう働く。これは、この位相検出器をPLL(phase locked loop)の内部に構成する場合に役立つ。位相遅れは図1に示す回路定数では最大で約65゚となる。

 5Vと−5Vの正負電源を使用すると、位相検出器の出力は0Vを中心とした対称波形となる。また、5Vの単電源で動作させたければ、2.5Vのオフセットバイアスを加えればよい。この場合、位相検出器の出力は2.5Vを中心とした対称波形になる。

 実装上の注意点は、動作の不安定性を防止するために、バイパスコンデンサをオペアンプの電源端子に極力近い位置に配置することと、グラウンドへの配線を極力短くすることだ。これは、広帯域のオペアンプを使用する場合の一般的な注意事項と同様である。

 図1の回路を利用すれば、周波数ミキサーを実現することもできる。入力信号の周波数をωS、基準とする矩形波信号の周波数をωloとすると、(ωlo−ωS)と(ωlo+ωS)の周波数を生成できる。図1の低域通過フィルタの部分を帯域通過フィルタに変更し、その周波数特性を(ωlo±ωS)の2つの周波数に対してチューニングすることで、出力として所望の中間周波数成分を取り出すことが可能である。

 基準信号の周波数がディセーブル動作が可能なレベルを超える場合には、基準信号の奇数次高調波との高調波ミキシングが利用できる。この方法を用いる場合、利用する高調波の次数をNとすると、ミキサーの増幅度を1/Nに低減可能である。

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周波数 | オペアンプ | 基準 | 回路 | 電源 | コンデンサ


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