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» 2008年10月01日 00時00分 UPDATE

製品選びのポイントと活用ノウハウを学ぶ:アナログスイッチ再入門 (1/3)

アナログスイッチは単純に見えて、意外に奥の深いものである。データシートに記載される各種仕様項目の意味や、利用時に留意すべき事柄を整理/理解することが、設計スキルの向上と開発コストの削減につながる。本稿では、用途に応じて重視すべき事柄や設計上のトレードオフ項目を中心に、アナログスイッチを正しく選んで使いこなすための知識/ノウハウをまとめる。

[Paul Rako,EDN]

一見すると単純、実際には……

図1 アナログスイッチの回路図 図1 アナログスイッチの回路図  (a)はアナログスイッチを表す単純な記号である。(b)は寄生容量や浮遊容量、寄生インダクタ、オン抵抗などを考慮したモデルを表している。

 アナログスイッチは、回路図では非常に簡単な記号で表される(図1(a))。入力端子、出力端子、制御端子、それに電源端子がいくつか加わるだけである。しかし実際のアナログスイッチは、この記号のように単純なものではない。数多くの寄生素子が存在するからだ(図1(b))。

 アナログスイッチの基本的な仕様は、電源電圧やオン抵抗などで記述される。交流仕様としては、動作周波数帯域やスイッチング時間などがある。これらの性能は、温度によって変化する。中でも、代表的なものはリーク電流である。温度による性能の変化は緩やかであるとは限らず、急激に変化するものもある。

 アナログスイッチの性能を表す仕様項目は、互いに関連を持つ。これはアナログ部品ではごく普通のことだ。各項目の値は一定値ではなく、範囲値となる*1)

 単体のアナログスイッチでも、上述したような複雑さを備えている。当然、複数個のアナログスイッチを組み合わせたDPDT(Double Pole Double Throw:双極双投)スイッチやマルチプレクサでは、より複雑さが増す。例えばA-Dコンバータの前段にマルチプレクサを配置したい場合、ブレイクビフォーメイク(Break-Before-Make)型のものを使用すべきである。すなわち、接続を切り替える際、切り替え先の接点に接触する前に元の接点を開放することで、信号パスの短絡を防げるタイプのものである。逆にオーディオ出力部にマルチプレクサを配置したい場合には、メイクビフォーブレイク(Make-Before-Break)型のものを使うとよい。こちらは、元の接点を開放する前に、新しい接点を接触させるタイプのものだ。そうすることで、クリック雑音やポップ雑音などの発生を防ぐことができる。アナログスイッチの動作は、その見かけよりもずっと複雑なのである。

利用分野の拡大

 アナログスイッチの用途と言えば、まずは計測分野と産業分野である。例えばデータ収集システムには、アナログスイッチやマルチプレクサが付き物だと言える。

 データ収集システムでは、1個のA-Dコンバータの前段に複数のアナログ入力を配置することで複数の測定チャンネルを実現する。また数多くのアナログ出力が、コネクタまたは内部回路のノードに接続される。こうしたことを実現するために、アナログスイッチやマルチプレクサが使用される。

 データ収集システムが搭載するアナログスイッチやマルチプレクサなどは、高耐圧品であることが多い。データ収集システムは、産業用途、軍事用途、医療用途で使われてきたためである。そして、これらの用途でアナログスイッチは今後も使い続けられる。さらに、ほかの分野でもアナログスイッチが続々と利用され始めている。

 数量ベースで見たときにアナログスイッチの利用が急増しているのは、携帯電話機をはじめとする民生用携帯機器分野である。米Fairchild Semiconductor社でスイッチ製品の生産ラインディレクタを務めるJerry Johnston氏は「アナログスイッチを1個も載せていない携帯電話機など、見たことがない」と語る。

 携帯電話機へのアナログスイッチの搭載を促しているのは、小型化と多機能化の流れである。携帯電話機の筐体には、コネクタを配置するスペースがあまりない。そこで複数のICの入出力と、1個のコネクタを結び付けるためにアナログスイッチが使われる。接続先となるのはUSBポート、ビデオポート、オーディオポート、電源コネクタである。Johnston氏は、「14個ものアナログスイッチを搭載したハイエンドの携帯電話機が複数存在している」と語る。

 ノート型パソコンも、アナログスイッチが数量ベースで成長している分野の1つである。携帯電話機と同じ理由でアナログスイッチが使われている。携帯電話機ほど制約が厳しいわけではないが、ノート型パソコンもコネクタを配置できるスペースが限られている。しかも、ウェブカメラ、赤外線ポート、Bluetooth、無線LANなど多くの機能を搭載するのが普通である。

 ホームエンターテインメント市場もアナログスイッチを数多く使用する分野だ。テレビ受像機やDVDプレーヤ、据え置き型ゲーム機、ケーブルテレビなどは配線の固まりである。そして、ホームエンターテインメント機器にはデジタル信号インタフェースを採用している機種がある。ただし、デジタル信号といえども、それを制御するスイッチとしてはアナログスイッチを使う。デジタルスイッチだと、遅延時間やスキューなどが生じるためである。しかも、その遅延時間は一定ではなく、配線状況や周囲温度などによって変化する。

 アナログスイッチを多く使用するほかの分野としては、車載エンターテインメントがある。この分野の機器も配線の固まりであり、しかもホームエンターテインメント機器よりもスペースが少ない。携帯電話機、ノート型パソコン、ホームエンターテインメント機器の特徴が融合した分野だと言える。


脚注

※1…"All Purpose Analog Switch Design Hints," Application Brief 7, Pericom, January 1999


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