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» 2008年10月01日 00時00分 UPDATE

マイコン制御のデュアル出力DC-DCコンバータ

[Dhananjay V Gadre(ネタジスバス工科大学),EDN]

 携帯機器の多くは、電源として電池を利用する。また、今日では携帯機器でもマイクロコントローラ(以下、マイコン)が利用されるケースが非常に多い。そうしたマイコンの多くは、1.8V程度の低い電源電圧で動作するので、電源としては2個の単3(AA)電池または単4(AAA)電池が使用される。しかし、例えば液晶ディスプレイのバックライト用LEDを駆動する場合など、7.5V程度の高い電圧が必要となるケースもある。そのような場合、電池電圧の3Vを基に所要値まで昇圧した電圧を得るためにDC-DCコンバータを使用することになるだろう。


図1 昇圧型DC-DCコンバータの基本構成 図1 昇圧型DC-DCコンバータの基本構成 入力電圧よりも高い出力電圧を生成する昇圧型DC-DCコンバータは、CCMまたはDCMのいずれかで動作する。

 本稿では、デュアル出力のDC-DCコンバータを8端子の小型マイコンと少数のディスクリート部品で構成する方法を紹介する。この設計には拡張性があり、マイコンの制御ソフトウエアを変更すれば出力電圧を広い範囲で変更することができる。また、起動時の電圧の立ち上がり速度が所要の値になるようプログラミングするといったことも可能である。

 図1に、昇圧型DC-DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の基本的な構成を示した。このDC-DCコンバータは入力電圧よりも高い出力電圧を生成する。その動作はCCM(Continuous Conduction Mode:連続電流モード)またはDCM(Discontinuous Conduction Mode:不連続電流モード)のいずれかになるが、後者のほうが回路の構成を簡素化できる*1)。DCMという名称は、各PWM周期の一部の期間に、インダクタを流れる電流が0Aになることから名付けられた。これに対し、CCMではインダクタを流れる電流が0Aになることはない。

 インダクタを流れる電流は、PWM出力がハイの区間(スイッチがオンする)の終わりに最大値ILMAXに達する。このILMAXは次式で計算できる。

u0o686000000s2y0.gif

 ここで、VDCは入力電圧、Dはデューティ比、TはPWM周期、Lはインダクタの値である。

 DCMでは、ダイオードを流れる電流が時間TRの間に0Aまで減少する。その時間TRは、出力電圧をVOUTとすると次式で与えられる。

u0o686000000s2z0.gif

 一方、負荷に供給される電流は、ダイオードを流れる電流の平均値となる(以下参照)。

u0o686000000s300.gif

 この式?は式?と?から、次式のように変形できる。

u0o686000000s310.gif

 上式を変形すると、出力電圧VOUTが次式で表せる。


u0o686000000s33q.gif

 出力のリップル電圧は、出力コンデンサの値によって以下の式で決まる。

u0o686000000s34q.gif

 ここで、dV/dtはPWM周期中における出力電圧の変化率(リップル電圧)、Iは負荷電流であり、Cが必要な出力コンデンサの値である。

 PWM周期Tの値は定数であり、DはPWMのデューティ比、TRはダイオードの導通周期である。そして周期TRの終わりにはダイオードを流れる電流が0Aになる。PWM周期Tについては、DCMではT>D×T+TRが成り立つ。PWM周期Tと(D×T+TR)との間隔がデッドタイムとなる。

 インダクタにつながるスイッチには通常はBJT(Bipolar Junction Transistor)またはMOSFETが使われる。MOSFETは、電流容量が大きい、効率が良い、スイッチング速度が速いなど、スイッチング素子として望ましい特徴を備える。しかし、低電圧での用途では、ゲート‐ソース間の閾(しきい)値電圧が小さいMOSFETが必要となるが、そうした製品は入手が容易ではなく、また高価でもある。そのため、図2のようにBJTを使用することにした。

図2 マイコンを使用したデュアル出力の昇圧型DC-DCコンバータ 図2 マイコンを使用したデュアル出力の昇圧型DC-DCコンバータ マイコンは、内蔵のA-DコンバータとPWM回路を使用して出力電圧の安定化を図る。

 一般に、マイコンからは、10kHz〜200kHz程度のPWM信号を得ることができる。より高い周波数を使用すれば、必要なインダクタの値が小さくなり、電源回路の小型化が図れる。本稿の例で使用したマイコンは米Atmel社の「ATtiny13」である。同製品では、PWM回路の分解能は8ビットである。内部クロックは分周なしの場合に9.6MHzであり、PWM周波数は9.6MHz/256=37.5kHzとなる。PWMの分解能を高くすると、出力レベルがより正確に所定値に追従する。なお、分圧抵抗R2とR3、R5とR6の値は、ATtiny13の内蔵基準電圧の最小値である1.0Vを想定して決めている。

 デューティ比Dが0.2のとき、式?から計算される最大インダクタ電流は、20μHのインダクタL1に対して0.81Aとなる。インダクタ電流のスイッチングを担うトランジスタの最大コレクタ電流は、この最大インダクタ電流より大きくなければならない。スイッチング素子として使用したnpnトランジスタ「2SD789」は許容コレクタ電流が1Aであり、この要件を満たす。

 同様に、図2の回路定数での最大負荷電流は式?から54mAとなる。この値は7.5Vの出力電圧を要する液晶バックライト用としての条件を満たす。

 ATtiny13は2チャンネルの高速PWM回路、4チャンネル入力の10ビットA-Dコンバータを備える。図2の回路では、PWM機能とA-Dコンバータをもう1チャンネルずつ利用して、出力電圧が15Vで最大負荷電流が15mAのDC-DCコンバータも構成している。このDC-DCコンバータで用いるインダクタの値は100μHとした。

 出力コンデンサとして必要な容量は式?から計算できる。リップル電圧を5mVとすると、所要容量の計算値は、7.5V系の出力電圧では負荷電流が50mAでPWM周期が27μsとの条件から、270μFとなる。図2の回路では、この計算値より大きく最も近い標準的な値として330μFを使用した。15V系の出力についても同様に計算すると、所要の容量の計算値は81μFとなるので、実際の回路では100μFを使用することにした。

 マイコンのプログラムはC言語で記述し、オープンソースのコンパイラであるAVR-GCCによって生成した。メインプログラムは無限ループとしている。割り込みサブルーチンにより、2チャンネルのA-Dコンバータで出力電圧を交互にモニターし、その出力値によってPWM回路を制御するよう働く。


脚注

※1…Pressman, Abraham I, Switching Power Supply Design, Second Edition, McGraw-Hill Professional, Nov 1, 1997, ISBN-10:0070522367, ISBN-13:978-0070522367


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