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» 2008年11月01日 00時00分 UPDATE

――本誌主催ノイズ対策セミナーから:ノイズ発生の原理から自動車での対策まで

[EDN]

 2008年9月4日(木)、本誌主催の第2回ノイズセミナー『ノイズ対策の「今」をつかむ』が東京カンファレンスセンター(品川)で開催された。ノイズの発生原因を理解するための基礎理論に始まり、ノイズ対策に向けた最新の技術/製品の動向や取り組みについて幅広い講演が行われた。ここでは、基調講演と特別講演の内容を中心に、ノイズ対策のトレンドや自動車業界のEMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁環境適合性)対策などについてまとめる。

ノイズの発生メカニズム

写真1 拓殖大学の高橋丈博氏 写真1 拓殖大学の高橋丈博氏 

 基調講演では、拓殖大学 工学部情報工学科の高橋丈博教授により、『EMC対策の基礎理論−ノイズの発生メカニズムから抑制のポイントまで』と題した解説が行われた(写真1)。その冒頭、高橋氏は「そもそも、信号やノイズ成分が導体を伝導することで、信号の歪(ひずみ)、電源グラウンドノイズ、放射などが生じる。信号の性質や伝送特性などを理解することで電磁ノイズの原因も理解しやすくなる」と述べた。その上で、ノイズ発生のメカニズムとしてはノイズを発生する「信号源」、ノイズが伝わる「結合」、さらに「放射源」がポイントになると指摘。ノイズを抑制するためのキーワードとして、「共振」、「信号源とリターン」、「コモンモード」の3つを挙げた。

 これらのうち、共振に関して「共振の発生個所は主に素子と構造体(線路、平面、筐体)に分類される。素子の共振は、共振の鋭さを示す指数であるQファクタを抵抗によって低下させることで抑制することができる。また、構造体では共振の“腹”や“節”を考慮することにより、励振や抑制の度合いを制御することが可能になる」とコメントした。また、高橋氏はこれに関連して、研究中の抵抗付きデカップリングキャパシタについて紹介した。「デカップリングキャパシタだけでは、共振周波数がずれるだけで、新たな共振が生じてしまい、根本的な解決策にはならない。そこで、抵抗を使うことで共振のQファクタを低減することを狙った」(高橋氏)のである。実際に電源配線を模したマイクロストリップ線路において抵抗付きデカップリングキャパシタを導入したところ、共振を低減できることが実証できたという。今後は、さらにメカニズムの解明や有効な使い方の検討を進める方針だ。

自動車業界におけるEMC対策

写真2 日産自動車の大国昌弘氏 写真2 日産自動車の大国昌弘氏 

 特別講演では、日産自動車の電子・電動要素開発本部 電子システム開発部電子信頼性グループ主管の大国昌弘氏(写真2)により、『自動車のEMC対策プロセス、現状の課題とその施策』と題した解説が行われた。その中で、大国氏は、「自動車においては、低EMI(Electro-Magnetic Interference:電磁干渉)と耐EMS(Electro-Magnetic Susceptibility:電磁感受性)を両立したEMI対策が必要である」と説明する。その上で同氏は、「これからの自動車には、環境対策、安全対策、先進技術の導入といったことがこれまで以上に求められる。そして、それらを実現するためには電子/電動システムが必要不可欠となってきている。今後は電子機器の採用がさらに拡大し、電子制御車やインフラ協調型電子制御システムなどの拡大が進むだろう」と述べた。

 大国氏は自動車業界でのEMC対策の課題について、「ノイズを受信するアンテナの数が増加していることや、ノイズの発生源そのものが増加/強大化してきている」と指摘する。従来、アンテナはラジオ/テレビ機能に用いられる程度であったが、これからはインテリジェントキーにおける受信アンテナや、空気圧警報用のアンテナ、さらに将来的にはITSインフラとの通信に用いられるアンテナなどが加わることが予想される。また、ノイズの発生源については、「強電部品がエンジンルームから車両全体に拡散してきている」(同氏)と指摘する。例えば電動自動車などでは、“オール電動化”の流れに伴う電動アクチュエータの導入や、高電圧/高出力化に伴う電圧制御技術の導入が必要になるという。

 大国氏はさらに、現在取り組んでいるEMC対策として、電波障害、ラジオノイズ性能、インテリジェントキー交信性能、ガラスアンテナ性能、空気圧警報交信性能などをシミュレーションする技術について紹介した。日産自動車では、このほかに、GHz帯の電波干渉シミュレーションなどについても、技術開発に着手していく計画であるという。同社は、「これらのシミュレーション技術を駆使したEMC予測技術によって業界でトップレベルの品質を確保し、ノイズによる不具合の発生をゼロに抑え、電気自動車におけるノイズ対策のコスト競争力などを維持していきたい」(大国氏)と考えている。

(鉄井 亮一)

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