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» 2008年12月01日 00時00分 UPDATE

徹底研究!ノイズの発生原因を理解する:DC-DCコンバータのノイズ対策[理論編] (1/5)

スイッチング方式のDC-DCコンバータは、その仕組みから、ノイズの発生源となってしまう可能性がある。これを避けるために、設計者は適切な対処法を知っておかなければならない。本企画では、2回にわたり非絶縁型/スイッチング方式のDC-DCコンバータのノイズ対策について実践的に説明する。今回は『理論編』として、ノイズの種類やノイズの発生メカニズムを中心に解説を行う。

[財津 俊行(日本テキサス・インスツルメンツ),EDN]

求められる「実践的な解」

 スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、ノイズ対策が必要となる。実際、各種文献やIC製品のアプリケーションノートなどでは、よくノイズ対策について触れられている。それらを見ると、「パワーMOSFETなど、ループを構成する部品はできるだけ近くに配置すること」、「ループの長さはできるだけ短くすること」、「できるだけビアは使わないこと」、「グラウンドは一点接地にすること」といった注意点が記述されている。

 しかし、実際の設計においては、実装上のさまざまな制約があり、理想どおりにはいかない。そもそも、「近く」とは1mmのことなのか、1cmくらい離してもよいのか。あるいは入力コンデンサをパワーMOSFETと同一面に置くスペースがない場合、(近くでありさえすれば)基板の裏面に置いてもよいのか。このような具合に、判断が難しいことがよくある。そうした場面に出くわしたとき、ノイズの発生メカニズムや、ノイズの伝搬の仕方について理解していれば、現実の設計で発生する制約の中でも、有効な対策が見えてくるはずだ。

 本稿では、非絶縁型の降圧コンバータを例にとり、ノイズの発生メカニズムや、ノイズの伝搬モード、そして対策方法について、2回に分けて実践的な観点から解説を行う。今回は、『理論編』として、そもそもノイズとは何であるのか、どのようにして発生し、どのように伝わるものなのかを明らかにする。

本稿が前提とする条件

図1 降圧型コンバータの基本構成 図1 降圧型コンバータの基本構成 

 図1に示したのは、本稿で議論の対象とする降圧型DC-DCコンバータの基本構成である。本稿で用いる用語などは、この構成を基本として進めることにする。

 いきなり結論を示すようだが、スイッチング方式のDC-DCコンバータにおけるノイズは、ダイオードおよびスイッチ(パワーMOSFET)がターンオフする際に発生する電流スパイクと回路中のすべての寄生要素(ループの寄生要素だけでなく、平滑用のLCフィルタの寄生容量、寄生インダクタなども含む)との共振によって発生するものだ。ただ、LCフィルタの寄生容量まで含めて考えると、問題が非常に複雑になってしまい、対策手法まで到達するのが難しくなる。そこで、本稿では、LCフィルタのインダクタの寄生容量は非常に小さいものであると見なすことにする。

 また、ノイズは入力コンデンサCin、ハイサイド/ローサイドのMOSFETであるQ1、Q2で構成される1次側の高周波リンギングループでのみ発生し、電磁誘導と静電誘導によって入力側、出力側へとノイズが伝搬していくものとする。さらに、ノイズの発生にかかわる各種要素を、ノイズの“加害者”と“被害者”という形に分けて説明を行う。このように切り分けることでノイズに対する理解が容易になり、対策も明確になるからだ。

周波数によるノイズの分類

 一言でノイズといっても、その種類や伝搬の形態はさまざまである。そこで、まずはいくつかの観点からノイズを分類することから始めよう。

 1つ目の分類は、ノイズの周波数に注目したものだ。スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、ノイズの種類は、数百kHzから数MHzのスイッチング周波数の基本波の成分と、数百MHzの領域にある非常に周波数の高いリンギング/スパイク成分に分けることができる。このように区分することで、対策が行いやすくなる。

■基本波

 基本波の周波数で特に問題になりやすいのは、次のような場合である。

  • インダクタからの漏れ磁束によって、フィードバックループにdΦ/dtで表される電磁誘導によるノイズ電圧が発生し、制御が不安定になる
  • DC-DCコントローラICがインダクタの近傍にあって漏れ磁束の影響を受ける。あるいは1次側ループの下にDC-DCコントローラICが配置されていて、スイッチングによって生じる磁束が貫いていたりする

 基本波の周波数は低いこともあり、リークの少ないインダクタの使用、フィードバックループやICの位置の最適化、ベタグランドによるシールドといった対策で、ある程度狙ったとおりの効果が期待できる。

■高周波のリンギング/スパイク

 スイッチング時の高周波(数百MHz)のスパイク/リンギング電流は、数nHの寄生インダクタンスによって発生する。この電流によるノイズは、放射によって外部機器に悪影響を与える。あるいは、部品/プリント配線板(基板)に存在する数pFの寄生容量を介した静電誘導によって、その電源を搭載する機器に悪影響が及んだりする。こうした伝搬経路をたどることから、対策としては厄介なものになる。

 本稿では、主にこのスパイク/リンギングによって発生する高周波ノイズについて述べる。

伝搬モードによる分類

図2 静電誘導により出力に現われるノイズ 図2 静電誘導により出力に現われるノイズ 

 ノイズは伝搬モードの違いによって分類することもできる。具体的には、以下の3つの伝搬モードがある。

■静電誘導

 静電誘導によるノイズは、ノイズ源に対してキャパシタで結合されることで発生/伝搬する。パワーMOSFETのドレインやヒートシンクに急峻な電圧変動があると、部品/基板レイアウトの寄生容量を介してノイズが伝わる。降圧コンバータの場合、インダクタの浮遊容量を介して出力にノイズがのるというのが象徴的なケースである。

 図2のモデルの場合、出力に現われるノイズVNZは、発生源におけるノイズVNを使って以下の式で表現できる。

0812f02-formula01.gif

 ここで、CLSはインダクタの浮遊容量、Zは出力コンデンサと負荷抵抗のインピーダンスである。

■電磁誘導

 電磁誘導とは、磁束が変動する環境下に導体が存在すると、その導体に電圧が発生する現象のことである。例えば、磁束をΦ、時間をt、コイルの巻数をNとすると、導体に発生する起電力Eは、以下の式で表される。

0812f02-formula02.gif

 スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、この種の起電力がノイズとして現われ、伝搬することになる。

■電波

 遠方界(電磁界の波長をλとした場合に、距離がλ/2π以上ある場合)では、磁界と電界の両方が発生する。すなわち、ノイズが電波として現われる。基板レイアウトの信号ラインがアンテナとして機能し、ノイズが伝搬する。

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