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» 2009年01月01日 00時00分 UPDATE

From Japan:クルマの進化とエネルギー

[モータージャーナリスト、長沼 要,EDN]

 米Ford Motor社が、T型フォードで1908年に量産スタイルに成功した後、クルマは現在すでに世界全体で8億台存在し、2050年には20億台にも30億台にもなると予想されている。その台数になると、ガソリン、軽油といった化石燃料に頼るクルマでは社会そのものが到底成り立たないとも言われている。また、昨今の地球温暖化防止に向けた二酸化炭素(CO2)排出量削減にも対応して行かなければならない。このような現実に直面している自動車メーカーの動きを、ショーモデルだけでなく市販モデルからその方向性を探ってみる。

エミッションはCO2が焦点

 クルマのエミッションといえば、ハイドロカーボン(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化ガス(NOx)、粒子状物質(PM)といった局所的に問題となる有害物質を指した。しかし、昨今ではCO2エミッションという言葉もなじみ深くなるなど、CO2へと焦点が移りつつある。

 その理由は2つあり、1つ目には先の4成分については改善が著しく、北米、欧州、日本、といった自動車先進国においてはそれほど問題視されなくなってきた点がある。2つ目には、気候変動が原因とされる異常気象などが頻発し、地球温暖化そのものへの危機感が強くなってきている点があるだろう。このような動きのなか、欧州自工会では2008年にメーカー平均で、1台あたりのCO2排出量を140g/km以下にするという、自主規制を設けていたが、フランスやイタリアのメーカーを除き、ほぼ未達成となるのが確実だ。そのため欧州委員会では、2012年までに130g/km以下にするという規制を決定した。今度は自主規制ではないので、自動車メーカーは必死に削減目標を達成することだろう。もともと120g/kmという数値目標が存在していたのだが、10g/km分はバイオマス燃料の利用等、燃料側で削減することになり、車両側としては130g/kmとなった。この数値は、現状が200g/km弱なのを考えるとなかなかチャレンジングな数値目標である。

クリーンディーゼルの力

写真1 クリーンディーゼルを搭載するエクストレイル20GT(提供:日産自動車) 写真1 クリーンディーゼルを搭載するエクストレイル20GT(提供:日産自動車) 

 CO2排出量低減の効果が期待できる現実的な選択肢の1つが、ディーゼルエンジンだ。ディーゼルエンジンが燃料とする軽油には、ガソリンより約1割多い炭素分が含まれるため、同一の燃費ではCO2排出量が多いが、熱効率がガソリンエンジンより高く、約2?3割燃費がよい。従って、CO2排出量は低くなる。また、エンジンの低回転域から十分なトルクを発揮する特性もあり、ドライバビリティにも貢献し、最近の欧州市場では新車販売台数の約70%がディーゼルとなっている。しかし、コストの高さゆえ、中型、大型車への適応が多く、小型車ではそれほど展開がなされていない。その中で、小型車向けのディーゼルエンジンの開発が進められているアジアから、低コスト化の可能性があるディーゼルが近いうちに示されそうだ。

 ここで最新ディーゼル乗用車を数台紹介したい。1台目は、2008年のパリサロンで発表されたドイツDaimler社の「Mercedez Benz C250CDI Blue Ef-fi-ciency」。このクルマは150kWの最大出力と、500Nmという強力な最大トルクを発揮しながら、143g/kmという優秀なCO2排出性能も誇る。次に、ドイツVolkswagenグループの「Jetta TDI」。一般的には排ガス性能はガソリンに劣ると思われがちなディーゼルだが、このJetta TDIは世界一厳しい排ガス規制と言える北米のTier2 BIN5(=カリフォルニア州LEV2)に世界で初めて適合したクルマであり、2007?2008年のグリーンカーオブザイヤーを受賞した。3台目としては、国内から日産自動車の「エクストレイルディーゼル」を挙げたい(写真1)。特に、ディーゼルにマイナスイメージの強い国内市場では、ポスト新長期という来年から始まる北米のTier2BIN5とならび厳しい排ガス規制を先行適合して発売開始した意義は大きい。

コンパクト化/軽量化

 エンジンやパワートレインの改良、進化とならび、クルマの燃費低減に効果的なのが軽量化、ダウンサイジングである。そもそもクルマの燃費に影響するものは速度と重量が基本要素だ。従って、車重を軽くすることでCO2排出量を低減しようとするのが、いわゆるダウンサイジングだ。

 トヨタ自動車が2007年のフランクフルトでプロトタイプを、2008年のパリサロンで市販仕様を発表し、日本でも2008年11月に販売を開始したiQが、よい例だろう。しかし、このダウンサイジングという考え方を具体化した例には先輩がいる。約10年前にDaimler社が時計会社のスイスSwatch社とコラボレートして世に送りだした「smart」は誰もが記憶にあるだろう。2.5m程の全長と個性的な外観が相まって、今でも街で見ると目立つ。このsmartも2代目になり、ようやく時代が追いついた感がある。

 CO2排出量だけでなく、都市部の駐車スペースの問題など、クルマがもたらした環境負荷にはダウンサイジングが効果的だ。クルマの利用パターンとして圧倒的に1人あるいは2人が多いという結果から、もう少しクルマは小さくてもよいと思われるので、iQのデビューとともに世界的に大きくなりすぎたクルマが少し小さくなることを期待したい。VWグループの「Golf」やトヨタの「カローラ」を例にとっても、初代から現行に至るまで約2倍の重量になっているのだから。ところで、小型化のデメリットとして安全性があるが、パッシブセーフティという観点からだけでなく、対クラッシュ時のコンパチビリティを考えると、ITSを使ったプリクラッシュセーフティなど、道路インフラ側からも統合的な安全性確保を進める必要性がある。

クルマの電動化

写真2 smart for twoを電動化したsmarted(提供:Daimler社) 写真2 smart for twoを電動化したsmarted(提供:Daimler社) 

 最新クリーンディーゼルやコンパクト、軽量化と同様に話題をさらっているのが電気自動車だ。2次電池技術の進歩で、リチウムイオン電池を搭載した電気自動車が国内でも2009年には実証実験に入る。三菱自動車の「i MiEV」と富士重工業の「ステラプラグインコンセプト」である。両社とも、日本独自の軽自動車というカテゴリーのクルマをベースに仕立て上げられている。過去にも何度か訪れている“電気自動車ブーム”だが、今回は本物の予感がする。

 その証拠のひとつに各自動車メーカーと自動車用2次電池会社との連携があげられる。トヨタ自動車はパナソニックEVエナジーと、プリウス時代からの関係を強化し、日産自動車はAESCという合弁会社を、三菱自動車もGSユアサや三菱商事と合弁会社を立ち上げている。欧州や北米でもこの電気自動車ムーブメントは盛んで、Daimler社は「smart ed」(写真2)でロンドンに加えベルリンでも実証試験を開始し、BMW社は「MINI-E」でカリフォルニア州を含む3州で実証試験走行を始める。この電気自動車の普及はCO2削減やエミッションフリーだけでなく、エネルギー問題への解決を一歩進めるものとして期待されている。クルマのエネルギーは現状100%が化石エネルギー依存という現実があるが、電気自動車になると1次エネルギーが多様化する。クルマに搭載される燃料がどの1次エネルギーから作られるかという観点が大事で、そこに、将来型パワートレインとして水素を燃料としる燃料電池車やバイオマス等を1次エネルギーにできる合成液体燃料を利用する究極の内燃エンジンが注目される理由がある。環境対策が一番遅れているクルマも、化石エネルギーからの脱却を着々と目指していることがわかる。

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