インタビュー
» 2009年01月01日 00時00分 UPDATE

アイシン精機 常務役員 加藤 喜昭氏:電子技術で自動車の基本機能と付加価値を高める

自動車は、単なる移動手段から、移動可能な住空間の1つとなっている。このために、「環境」、「安全」、「快適」への要求に応えつつ、健康やライフスタイルといった住生活を理解して、そのつながりを深めて行くことも重要となる。アイシン精機を核とするアイシングループは、自動車部品を事業基盤に、住生活関連商品やエネルギー関連商品、バイオ関連機器へとその領域を拡大してきた。自動車部品も生活関連事業の一環と位置づけ、機械工学や電子工学に加え、人間工学や生理学も探求し、その技術を商品に反映している。アイシン精機の常務役員を務める加藤喜昭氏に、自動車部品における電子化の役割やHEV/EV用部品への取り組みなどを聞いた。

[Automotive Electronics]

 自動車において電子技術が果たす役割としては大きく3つあるとみている。1つは自動車の基本機能を高めることだ。電子システムを最適化すれば、より精度の高い制御を行うことが可能となる。例えばトランスミッションの制御やABSがその代表例である。

 2つ目は運動性能の高性能化である。メカニカルな制御だけでは対応できないこともある。例えば、電子技術と組み合わせることで、アクティブサスペンションやアクティブスタビライザなどを実現することができた。

 3つ目はドライバーをサポートするための技術である。ミリ波レーダーや車載カメラなどを使った安全運転支援システム、あるいは外部との通信機能など、いわゆるITSといわれる分野で、電子技術がないと実現できないシステムでもある。これらの機能を追加することで自動車の商品価値を高めることができる。

 自動車メーカーが、新車1台あたりに搭載したECUの数や制御プログラムのステップ数を公表し、環境対応や安全性、快適性の目安としていた時期もあったが、あくまでも電子化は目的を達成するための手段の1つにしか過ぎない。アイシングループでは、電子技術を使って、顧客や最終消費者のニーズに応えられる製品/サブシステムを開発していくことに注力している。

ハイブリッド伝達技術

カトウ・ヨシアキ 1977年、トヨタ自動車に入社、エンジン制御など電子分野の開発設計を担当。1995年、トヨタテクニカルセンターU.S.Aのジェネラルマネージャ。2001年に第1電子技術部長。2003年には商品開発本部に移り、コンパクトカーやSUVの製品企画を担当。2006年にアイシン精機に移籍し、先行開発を中心に担当。 カトウ・ヨシアキ 1977年、トヨタ自動車に入社、エンジン制御など電子分野の開発設計を担当。1995年、トヨタテクニカルセンターU.S.Aのジェネラルマネージャ。2001年に第1電子技術部長。2003年には商品開発本部に移り、コンパクトカーやSUVの製品企画を担当。2006年にアイシン精機に移籍し、先行開発を中心に担当。 

 HEV向けパワートレインについては、トヨタ自動車単独で開発/生産しているものもあれば、トヨタとアイシングループで共同開発している技術もある。中にはアイシングループだけで開発/生産している製品もある。

 今後、自動車の電動化が進めば、従来のトランスミッションがモーターに替わっていく。これまでのトランスミッションはギアの噛み合いなど、機械的な工夫で伝達効率を高めてきた。これに対して、HEVでは機械的な部分と電気(モーター)のハイブリッド伝達技術が重要となる。例えば、動力源となるモーターとエンジンを切り替えるためのクラッチ技術や、駆動力を伝達するダンパー技術である。さらに、限られたサイズにモーターを収納することや耐久性も必要である。まさに、メカニカルな部分と電気の両方の技術を組み合わせていくことになる。

 もちろん、トランスミッション以外の「走る」、「曲がる」、「止まる」といった自動車の基本機能の部分についても、継続的にレベルアップしていかなければならない。さらに、それ以外の部分でもITSに関連した技術として、自動車と人とのUI(ユーザーインターフェース)技術や、自動車と外部をつなぐ技術などがある。これらを満足させる技術や部品があれば、より安心で乗り心地の良い自動車が開発できるのではないだろうか。そうした自動車を実現するための部品開発に引き続き取り組んでいく。

2種類のインホイールモーター

 EV技術に関して、アイシングループが手掛けている主な電動技術を挙げると、アイシン・エィ・ダブリュは1991年にEVを開発/試作した。このEVは4輪すべてが自社開発のインホイールモーターで駆動する。トヨタの「e-com」向け駆動ユニットもアイシン・エィ・ダブリュが製造した。その後、このインホイールモーターをベースに、「i-unit」や「i-REAL」などのパーソナルモビリティの開発に携わってきた。

 最近では、2007年に北海道・十勝で開催された24時間耐久レースに出走した自動車に当社のインホイールモーターが採用されている。2008年のパリモーターショーでは、自社ブースで2種類のインホイールモーターを展示した。その2つとは、カーレース用などに使う高性能タイプとトヨタ車体の、「COMS」などコンパクトカーに向けた小型タイプである。それぞれ異なる要求仕様に応えたものだ。

 これまでは、EVの実用時期などが明確にはなっていなかったので、トヨタグループの中でもインホイールモーターに関しては自由研究/開発のテーマであった。現在、トヨタグループの中でインホイールモーターを量産しているのはアイシングループだけである。

究極のモビリティ

 今後、インホイールモーターが普及するかどうかは、採用される車種にもよるだろう。例えば、COMSのようなコンパクトな車ほど1個のモーターでその動力を分散するより、各車輪に実装するインホイールモーターの方が伝達効率は良い。インホイールモーターの場合は伝達系が不要なため、限られたスペースに組み込むには優位である。すでに、インホイールモーターが実装された電動の車いすも販売されている。つまり、インホイールモーターのメリットを生かせる要件がそろえば搭載される車両は増えるだろう。

 実用化の時期がいつ頃になるかは分からないが、自動車(モビリティ)が4輪であれば、4輪をそれぞれ自由に駆動させることが究極のモビリティである。例えば、i-unitは後輪にインホイールモーターを実装している。直進するときは車輪がまっすぐに向いている。方向を変えるときは、左右の後輪をそれぞれ逆に回転させることによって回転半径は小さくなり、その場で回転させることもできる。

人や環境、社会、未来と共生

 消費者は自動車を購入して、感動や夢、安全性/安心感を得たいと思っている。HEV/EVも決して特別なものではなく、人や環境、社会、そして未来と共生していくために必要なものである。

 人が生活する中で、アイシングループが何をなすべきかを考えたとき、人間工学や生理学も考慮した、生活関連事業を展開することとなった。人間について研究し、人と共生していくための技術開発や商品開発に力を入れている。

(聞き手:馬本隆綱)

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