コラム
» 2009年03月01日 00時00分 UPDATE

Tales from the Cube:トラブルの原因は1つだけとは限らない

トラブルの原因。それは1つだけとは限らない。多くは、複数の要素が組み合わさって不具合に至るのだ。

[Larry Baxter(Capsense.com),EDN]

 ある時期、米国内の至るところで、ある種のコンピュータ端末が次々に故障を起こしていた。ただし、すべての町で故障が起きていたわけではなく、ラスベガスのような湿度の低い町が特にひどい状況にあった。故障した端末は、8ビットのマイクロコントローラや液晶ディスプレイ、メンブレン型キーパッドなどで構成されていた。また、ほとんどの端末が壁掛け式で使われていた。

 筆者は、故障の対策を請け負う修理会社からコンサルタントとして招かれた。症状から見て、故障の原因は静電気だと考えられた。端末の使用者がじゅうたんの上を何気なくすり足で歩き、そのときに300pFのコンデンサを30kVの高電圧で充電するのと同等の電荷を拾ってしまう。帯電した使用者が端末を操作する際、キーパッドを経由して放電が起き、端末をリセットしてしまっているのだと推測された。それによりメモリーのデータが無意味なものとなり、故障が起きていると使用者に認識されているようだった。

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 対策に当たって、まず筆者は回路図をチェックした。しかし、疑わしいことは何も見つからなかった。続いて、それまでの修理でどのような処置を施したのか、修理会社の技術者に尋ねてみた。彼の答えは、「あらゆることを試みた。だが、どの対策でも回復には至らなかった」というものだった。筆者は「具体的にどのようなことを試したのか、もう少し詳しく話してほしい」と頼んだ。すると、その技術者からは次のような答えが返ってきた。

 「問題の端末では、リセット信号線が基板の周りをヘビのように引き回されていた。その信号線には0.1μFのコンデンサを付加した。また、キーパッドからの配線においては、シールド線が筺体のグラウンドに直接接続されていなかった。そこで、対策として編み線を被せてシールドを強化した。加えて、電源ラインの波形をチェックし、パスコンを追加した。AC入力ライン経由で筐体から基板に対して影響が及ぶのを防ぐために、同ラインのデカップリングコンデンサも増強した。キーパッドの駆動に用いるロジック回路には、10kΩの分離抵抗を挿入した。さらに、その抵抗には、ロジック回路への反射波を低減するために0.1μFのコンデンサを付けた。しかし、いずれの対策も役に立たなかった」。

 筆者はしばらく考え込んだ。確かに、彼はなすべきことはすべて行っていた。それで正常にならないなら、ほかの処置は思い付かなかった。

 「その端末を見せてもらえるか?」

 「もちろん。これがそうだ」

 「これは対策済みのものか?」

 「いや、対策は全部取り除いている。なぜなら、どの方法も役に立たなかったからだ」。

 そうこうしているうちに、昼になった。空腹では頭も働かないので昼食をとることにした。そのとき、新たな疑問が浮かび、彼に尋ねた。

 「1つ尋ねたいことがある。対策はすべて取り除いたとのことだが、それは、すべての対策を同時に施している状態でも正常にならなかったので、すべての対策を取り除いた、という意味なのか?」。

 「いや、そうではない。対策は1つずつ適用していったが、いずれも効果がなかったということだ」。

 これを聞いて筆者は元気が出てきた。昼食の後で、すべての対策を一度に適用してみたところ、端末は正常に動作するようになった。続いて、施した対策を1つずつ取り除いていった。その結果、不可欠なのは2種類の対策であることがわかった。

 修理会社の技術者は、無意識のうちに論理の罠に落ち込んでいたのだ。つまり、故障は1つの原因によって起こるもので、複数の原因が絡むことはないと思い込んでいたのである。このときの経験から、筆者は誰かがこうした罠にとらわれているときに、そのことを見抜く方法を会得した。

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