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第9回 バイポーラトランジスタの構造と基本動作アナログICの基礎の基礎

» 2009年03月09日 00時00分 公開
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 前回(第8回)では、トランジスタの基本的な機能とトランジスタの種類について簡単に説明しました。前回で説明したように、トランジスタはバイポーラトランジスタとMOSトランジスタに大別されます。今回(第9回)はまず、歴史的に早く普及した、バイポーラトランジスタの構造と動作を解説します。

npnトランジスタとpnpトランジスタ

 バイポーラトランジスタはその構造により、npn(エヌピーエヌ)バイポーラトランジスタとpnp(ピーエヌピー)バイポーラトランジスタに分けられます。

 バイポーラトランジスタがエミッタ、ベース、コレクタの3つの部分で構成されていることは、前回にふれました。バイポーラトランジスタの構造的な特徴は、エミッタ領域とコレクタ領域に比べると、ベース領域が非常に薄いことです。この意味は後にふれます。

 npn、pnpというのは半導体の種類を指す記号で、nはn型半導体、pはp型半導体を意味します。電流の担い手であるキャリヤには、電子(エレクトロン)と正孔(ホール)の2種類があり、電子はマイナスの電荷、正孔はプラスの電荷を運んでいます。n型半導体は主なキャリヤが電子の半導体、p型半導体は主なキャリヤが正孔の半導体です。

npnトランジスタの動作

 npnバイポーラトランジスタ(以下は「npnトランジスタ」)は、エミッタがn型半導体、ベースがp型半導体、コレクタがn型半導体で構成されています。エミッタ、ベース、コレクタに適切な極性の電圧を加えると、トランジスタに電流が流れるようになります。

 例えばベースとエミッタの間に、ベースが正電圧、エミッタが負電圧(あるいは接地電位)となるように電圧を印加し、コレクタとエミッタの間に、コレクタが正電圧(ベースよりも高い正電圧)でエミッタが負電圧(あるいは接地電位)となるように電圧を加えます。

図1 図1:npnトランジスタの構造と電流

 するとn型半導体のエミッタからキャリヤである電子がベースに流れ込みます。電子の一部はp型半導体であるベースの正孔に捉えられてベース電流となり、残りの大半はコレクタ電流となってコレクタに達します(電子の進む方向と電流の方向は逆であることにご注意ください)。ベースが非常に薄いので、エミッタからベースに流れ込む電子のほとんどは、ベースの正孔に捕まえられずにベースを突き抜けるのです。

 キャリヤではなく電流で考えると、エミッタを流れる電流(エミッタ電流)は、ベース電流とコレクタ電流の合計値となります。ベース-エミッタ間電圧とエミッタ電流の間には、電圧を増やすと電流が指数関数に増加するという関係があります。これはベースとエミッタがpn接合ダイオードを形成していることから分かります(詳しい説明はここでは省きます)。

 ベース電流は無視できるほど小さいので、エミッタ電流とコレクタ電流はほぼ同じ電流値となります。ですから、ベース-エミッタ間電圧を少し増やすとベース電流はほとんど増えないのに対し、コレクタ電流は指数関数で増加する、すなわち、大幅に増加します。これはベース電流を入力電流、コレクタ電流を出力電流と考えれば、入力電流の変化(増分)が出力電流の大きな変化に増幅されていることになります。

pnpトランジスタの動作

 pnpバイポーラトランジスタ(以下は「pnpトランジスタ」)は、エミッタがp型半導体、ベースがn型半導体、コレクタがp型半導体で構成されています。npnトランジスタとはキャリヤの極性(正負)が逆になっていることが分かります。

 pnpトランジスタでは、電圧印加の仕方がnpnトランジスタとは逆になります。例えばベースとエミッタの間に、ベースが負電圧、エミッタが正電圧となるように電圧を印加し、コレクタとエミッタの間に、コレクタが負電圧(ベースよりも低い負電圧)でエミッタが正電圧となるように電圧を加えます。

図2 図2:pnpトランジスタの構造と電流

 するとp型半導体のエミッタからキャリヤである正孔がベースに流れ込みます。正孔の一部はn型半導体であるベースの電子に捉えられてベース電流となり、残りの大半の正孔はコレクタ電流となってp型半導体のコレクタに達します。

 npnトランジスタと同様に、エミッタ電流はベース電流とコレクタ電流の合計値となります。またこれもnpnトランジスタと同様に、ベース-エミッタ間電圧とエミッタ電流の間には、電圧を増やすと電流が指数関数に増加するという関係があります。そして同様に、ベース電流とコレクタ電流の間で電流増幅が起こります。

 npnトランジスタとpnpトランジスタの基本的な動作に違いはありません。npnトランジスタはキャリヤが電子、pnpトランジスタはキャリヤが正孔であることくらいです。ただし実際に作製したトランジスタの性能は、pnpトランジスタよりもnpnトランジスタの方が高くなります。電子と正孔ではキャリヤとしての動きやすさ(移動度)が違うから、具体的には電子が正孔よりも動きやすいからです。したがって高周波性能では一般的にはnpnトランジスタが優れています。




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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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