コラム
» 2009年04月01日 00時00分 UPDATE

Baker's Best:SARコンバータに入力信号を正しく通す

[Bonnie Baker,EDN]

「A-Dコンバータの入力部に用いるバッファ回路(駆動回路)を設計するのは決して容易なことではない。特に、単一電源のオペアンプや、高速で動作するスイッチドキャパシタ方式の入力回路を備えたA-Dコンバータを利用する機会が増えてきたため、課題は一層大きくなっている」*1)──。

 逐次比較型(SAR:Successive Approximation Register)A-Dコンバータ(以下、SARコンバータ)において、電荷再配分方式(Charge Redistribution)などと呼ばれる入力回路構造が利用されるようになってから10年以上にもなる。こうした構造の回路に、変換の対象となるアナログ信号を正確に入力するのは、現在でも苦労を伴う作業だ。

図1 入力容量における電圧変化 図1 入力容量における電圧変化 SARコンバータと、その入力部に用いるオペアンプの出力との間に10kΩの抵抗を挿入し、SARコンバータの入力容量に電荷が注入される様子をモニターしている。

 信号を入力することなど、簡単なことのように思えるかもしれない。「周波数帯域特性が入力信号の条件に合致するオペアンプを選び、バッファ回路構成でSARコンバータに直結すれば済むことだ」と考える方もいよう。だが、事はそれほど簡単ではない。

 まず、選択したオペアンプは、SARコンバータの入力容量に対し、所要の量の電荷を注入できるものでなければならない(図1)。言い換えると、SARコンバータの入力容量に瞬時に流れ込むべき電流がオペアンプから十分に供給されない場合には、変換が正常に行われず、デジタル出力が不正確なものになってしまうのである。

図2 SARコンバータ入力部のモデル 図2 SARコンバータ入力部のモデル SARコンバータの入力部に用いるオペアンプとしては、入力信号の条件に合致した特性を備えるものを選択する。その上で、オペアンプの出力とSARコンバータ入力部との間には、RIN、CINで構成されるフィルタを挿入する。

 SARコンバータの入力部は、図2のように、入力容量CSHとスイッチS1、S2を用いてモデル化することができる。入力信号を捕捉(アクイジション)する過程では、SARコンバータの内部において、まずスイッチS2によりCSHが電源(基準電源またはグラウンド)に接続される。それにより、CSHに電荷が流入して充電が行われる。このときの充電電圧の値は、SARコンバータの入力回路の構造によって異なる。入力信号を捕捉するタイミングでは、S2が開き、S1が閉じる。S1が閉じると、入力信号源からCSHに向かって(またはCSHから入力信号源に向かって)電荷が移動することで信号が捕捉される。この信号の捕捉には、所定の時間が必要になる。この時間をアクイジション時間(Acquisition Time)と呼ぶ。これは、移動する電荷が1/2LSB以内の精度が得られるレベルに安定するまでの時間に相当する。

 バッファ回路を正常に機能させるためには、オペアンプとSARコンバータの間に、抵抗RIN、コンデンサCINを挿入しておくとよい。ここで、コンデンサCINは、SARコンバータの入力容量に十分な電荷を供給するための“電荷貯蔵器”として働く。一方、RINはオペアンプをCINから分離し、オペアンプの動作を安定化するよう機能する*2)。RINとCINで決まる時定数は、使用するSARコンバータのアクイジション時間の条件に合致するよう設定する。最後に、このRIN×CINの時定数に合致するようオペアンプの帯域幅を決める。

 オペアンプの出力を直結することでSARコンバータを駆動しようとしても、うまくはいかないだろう。SARコンバータとオペアンプとの間にRINとCIN(RCフィルタ)を挿入しておけば、SARコンバータへの電荷の注入を正常に進めることができ、回路の異常動作を防止することが可能になる。

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<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com



脚注

※1…Swager, Anne Watson, "Evolving ADCs de

mand more from drive amplifiers," EDN, Sep 29, 1994, p.43

※2…Green, Tim, "Operational Amplifier Sta

bility, Part 3 of 15: RO and ROUT," Ana

log Zone, 2005

※3…『SAR型A-Dコンバータの入力バッファ回路』(Miro Oljaca/Bonnie Baker、EDN Japan 2009年2月号、p.59)


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