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前進続けるソフトウエア無線技術コグニティブ無線の完成を目指して(2/2 ページ)

» 2009年04月01日 00時00分 公開
[Rick Nelson,EDN]
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SDR/コグニティブ無線の動向

 接続性を重要視するSDRを利用すれば、ヘテロジニアスな環境において、ネットワークと帯域リソースを柔軟に効率良く利用することができる。そして、これは帯域の認知を最優先とする「コグニティブ無線」のアプリケーションを実現するための技術でもある。


図2 コグニティブ無線の概念図 図2 コグニティブ無線の概念図 

 コグニティブ無線とは、動作環境との相互作用に基づいて自発的にパラメータを変更することができ、大きな干渉を起こすことなく、ほかのワイヤレスシステムと共存し、同じ帯域リソースを使用することができるというものである(図2)。Van der Perre氏は、「完成形のコグニティブ無線が世に出るのは、2025年〜2030年辺りになるだろう」と予測する。しかし、それまでに、進化途上のコグニティブ無線機能がSDRによって実現される可能性は大いにあるという。

 SDRの概念を採用する企業は多い。米Vanu社は、この技術を基地局に適用することで、GSM(Global System for Mobile Communications)、CDMA(Code Division Multiple Access)、米Motorola社のiDEN(Integrated Digital Enhanced Network)などに同時に対応可能だとしている。米BitWave Semiconductor社は、GSM、WCDMA(Wideband CDMA)、Wi-Fi、WiMAX、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)、LTEなど、少なくとも16種類の無線ネットワークインターフェースに対応が可能なSDR ICを開発、2007年にプロトタイプの「Softransceiver RFIC」として発表した(写真1)。2008年2月には、700MHz〜3.8GHzに対応した「BW1102 Softransceiver RFIC」をリリースしている。

写真1 「SoftransceiverRFIC」(BitWave社製)の評価ボード 写真1 「SoftransceiverRFIC」(BitWave社製)の評価ボード 

 IMECは2008年10月、SDRに関連する同機関の技術ライセンスを東芝が購入したと発表した。また、IMECとパナソニックは同年11月、半導体、ネットワーク、ワイヤレス、バイオメディカルの4分野における最先端技術の包括的な共同研究契約を締結している。この契約に基づき、ベルギーのルーベンにあるIMECの施設と、オランダのアイントホーフェンにある研究部門で研究が行われるという。研究対象の1つとなるのが、動的再構成が可能なSDRである。

 米The MathWorks社は、チップベンダー/システムベンダー向けに、ベースバンド/RFシミュレーションツールを提供している。同社技術マーケティングマネジャを務めるJohn Irza氏は、「ユーザーがある帯域を一斉に利用したとしても、実際に使われるのは、利用可能な帯域のうちわずか15〜20%程度だろう。従って、コグニティブ無線が動作するための余地は十分にある」と述べる。

 ただし、コグニティブ無線も万能なものではない。コグニティブ無線が、あるタイミングで利用に適していると認識した帯域があったとする。そのとき、その帯域の主要なユーザーがその帯域を使ったアクセスを希望しているならば、そのユーザーを優先しなければならない。Izra氏は、「コグニティブ無線の実現に向けては、米国FCC(連邦通信委員会)などの規制団体の承認が必要になる。すなわち、技術的な課題だけではなく、政治的な要素も絡んでくる」と述べる。現時点では、FCCはコグニティブ無線の概念を支持しているという。

 Izra氏は、「従来、デジタル信号処理機能をアンテナにより近い位置に実装するのは困難であった。この課題が解決されるに従って、将来的には、Bluetooth、Wi-Fi、GPS、LTEなどの通信規格をサポートするベースバンド/アップバンド統合機器へと進化していくだろう」と予測する。英国の調査会社であるARCchart社は、2011年に出荷されるSDR対応携帯機器の台数は、携帯機器全体の11%に相当する1億5700万台、少なく見積もった場合でも7400万台に達すると見込んでいる。

 IMECのVan der Perre氏は、2011年以降のSDR/コグニティブ無線機器の台数に言及することはなかったが、「無線に使われるA-Dコンバータは、これまで以上にアンテナの近くに配置され、2030年くらいまでには、柔軟性の高い完成されたコグニティブ無線が登場するだろう」と予測する。その目標に向けた第一歩として、IMECは、2008年11月に福岡で開催された『IEEE Asian Solid-State Circuit Conference(アジア固体回路会議)』において、90nmのCMOSプロセスで製造した2.4GHz動作のΔΣ変調方式A-Dコンバータを披露した。IMECの研究者らは、引き続き、コグニティブ無線の実現に向けて、スケーラブルでエネルギー効率の高い周波数検知エンジンの研究を進めていくという。

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