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電力会社を悩ませる低力率の電球型蛍光灯

» 2009年04月10日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 電球型蛍光灯には、小型のAC-DC電源が内蔵されている。この電源の性能は、電球型蛍光灯の力率に大きな影響を与える。力率は1に近いほど望ましい。一般に力率が0.85以上であれば高力率とされ、0.85未満であれば低力率と見なされる。同じ量の有効電力を得ようとしたとき、低力率の電球型蛍光灯に必要となる電流は、高力率の電球型蛍光灯よりも多い。低力率で多くの電流が必要なれば、電力網におけるI2R損失などのエネルギー損失が増大する。こうした電力損失は、一般家庭においてはほとんど気にならないが、電力会社にとっては無視できないものと言える。

 筆者は最近、自宅にある電球型蛍光灯に電力メーターを接続して、力率を測定してみた。その結果は、0.57という何ともお粗末な値であった。1本の電球型蛍光灯の消費電力はわずか13Wほどだが、世の中には数多くの電球型蛍光灯が存在している。それにもかかわらず、なぜ力率には規定が存在していないのだろうか。

 そこで筆者は、ENERGY STARプログラムのPeter Banwell氏に、電子メールで「力率の最小値を規格化にすることを検討しているかどうか」と尋ねてみた。それに対して同氏は、「力率については数年前に詳細に調査したが、当時は規格化には至らなかった。ただ、今でも一部の電力会社は規格化を望んでいる。将来、さらに電球型蛍光灯の市場が拡大すれば、議論が持ち上がる可能性はある。しかし、現時点ではそうした動きはない」と回答してきた。

 Banwell氏との電子メールでのやりとりの直後に、筆者はLuminaire Testing LaboratoryのMike Grather氏に会う機会があった。Grather氏は最近、定格電力が異なる100個の電球型蛍光灯(平均の消費電力は約20W)の寿命と性能についての試験を行ったという。同氏らは試験を行うに当たり、蛍光灯の力率を最低0.75と仮定し、容量が3kVAの電源を用意した。ところが、100個の電球型蛍光灯に電源を供給すると、3kVAでは不十分だったという。そこで、電球型蛍光灯の力率を調べてみると、0.45〜0.5の範囲にあった。つまり、蛍光灯の「真の」負荷は、ワット数表示から推測される値の約2倍であったということになる。

 電球型蛍光灯は、家庭用照明具の中においては効率が高い部類に入る。しかし、現在のような力率では非経済的であるとも言える。ただ、1個の価格が2米ドル程度の電球型蛍光灯では、力率改善回路を加える余地はほとんどないだろう。一方、電力会社は、電球型蛍光灯の価格の一部を負担するなど、消費者が同蛍光灯への切り替えを行うよう促している。しかし、電力会社はいずれ、現在、一般的な電球型蛍光灯ではなく、より高力率のものに対してのみ助成を行うといったことも考えられる。

(Margery Conner、Electronic News)

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