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いまさら聞けないアンプ入門半導体技術解説(2/3 ページ)

» 2009年07月24日 12時00分 公開
[浅野 喜一郎/アナログ・デバイセズ,@IT MONOist]

 オフセット電圧は、小さな値であってもゲインに比例して大きくなります。よって、微小な電圧を増幅するような用途では非常に重要な仕様となります。入力バイアス電流は入力端子から流れ出る、または流れ込む電流です。バイアス電流は、抵抗に流れることにより誤差電圧を発生します。アンプの+−入力のバイアス電流がほぼ等しいとき、抵抗(R3)を使用することでバイアス電流の影響をキャンセルできます。アンプのオフセット電圧は周囲温度が変化することにより変化し、誤差が生じます。

 従って、使用する動作温度範囲にてどの程度の温度ドリフトが発生するかを計算し、要求されている精度を満たしているかどうかを確認する必要があります。もしも温度ドリフトが許容できない場合には、ドリフトが無視できるチョッパアンプやオートゼロアンプを使用する必要があります。アンプのノイズは高い周波数では一定のノイズ密度となっていますが、低い周波数ではノイズレベルが大きく上昇します。このような低い周波数まで取り扱う必要がある場合には1/fノイズの影響を考慮することも必要です。

 次に、AC特性の周波数帯域は3つの異なる仕様で規定されています。-3dB帯域は数百mVの小信号をどれだけ高い周波数まで出力できるかを表しています。0.1dBフラットネスは出力振幅の変化が0.1dB以内に収まる周波数帯域を表しており、特にビデオ用途などで重要となる仕様です。フルパワー帯域は2Vp-pくらいの出力をどのくらい高い周波数まで出力できるかを表しており、この特性はアンプのスルーレートにより制限され、その値はスルーレートと出力振幅より計算式で求めることができます。

         式:FMAX=(Slew Rate)/2πVp-p

 しかし、この周波数でアンプを動作させた場合、アンプの出力には許容できないレベルの波形ひずみが発生します。電圧帰還型アンプのオープンループゲインは図6のように周波数が高くなると-6dB/オークターブのレートで低下します。

photo 図6 電圧帰還型アンプと電流帰還型アンプのゲインと周波数特性の変化

 周波数が高くなりアンプのオープンループゲインがクローズループゲインに近づくにつれて、ゲイン誤差が増加します。この誤差はひずみの原因となり、高周波でより影響が大きくなります。セトリング時間は、高速アンプの重要な仕様でアンプの出力がどのくらい素早く規定の精度以内に収まるかを表しています。仕様では出力のステップ電圧と精度(エラーバンド)が規定されています。

アンプのノイズ発生源

 アンプには多くのノイズ源があります。

photo 図7 アンプのノイズ発生源

 ノイズの出力への影響を計算する場合には、個々のノイズ源の値を計算し、さらに二乗和ルートを行い、1Hz当たりのノイズ密度を算出します。また回路の周波数帯域をルートした値を掛けることにより、トータルのノイズレベルが求められます。この値は実行値のためピーク電圧を求める場合には6.6倍します。

 ひずみ特性は、高周波信号にとってもう1つの重要な仕様です。これはSFDRまたはTHDとして規定されています。SFDRは信号と一番大きなスプリアスの振幅の差を示しています。信号レベルが低い場合には、SFDRはノイズが支配的になります。また、信号レベルが大きいときには高調波が支配的となります。THDはすべての高調波ひずみを加算合した値です。

photo 図8 ひずみ特性

 通常、2次と3次の高調波が一番大きいため、THDに最も影響を与えます。さらにひずみは2つの信号がアンプで処理されるときに発生します。理想的なアンプの出力には、入力された2つの信号しか見ることはできません。しかしアンプは完全な線形動作ではないため、2つの信号はアンプ内部でミキシングされて新しい信号を作り出します。3次の相互変調ひずみは一般にこのスライドのように3次のインターセプト・ポイントとして規定されます。

photo 図9 インターセプト・ポイントと1dB圧縮

 2つのスペクトラムがきれいな信号をシステムに与えると、出力信号レベルと3次ひずみの相対的な振幅は入力信号のパワーの関数としてプロットされます。基本波はスロープ1の曲線になります。小信号の2トーン入力とIP2、IP3により、2次および3次の相互変調ひずみをスライドのように引くことができるでしょう。IP2、IP3は理論上の値で実際にはこのような振幅にはなることはあり得ません。それは出力が制限されるか抑圧されるレベルに先に達してしまうからです。

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