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» 2009年08月01日 00時00分 UPDATE

FPGA設計の消費電力を見積もる (1/3)

FPGAを最終製品へ搭載する例が増加している。その場合、FPGAの利点を生かして設計期間を短縮するには、論理設計と並行して回路基板の設計を行う必要がある。このとき重要になるのが、設計初期段階におけるFPGAの消費電力の見積もりである。本稿では、この見積もりをより正確に行うための手法について解説する。

[Ron Wilson,EDN]

用途の変化

 FPGAが現在のように複雑なデバイスとなる前の時代、その消費電力にかかわる問題は単純なものであった。例えば、通信ネットワークのルーターやスイッチ、ASIC設計用のプロトタイプ基板など、高性能なFPGAを用いる従来からの用途では、使用するFPGAが消費する可能性のある最大電力とその冷却方法がわかれば、設計を進めることができた。ところが、今日ではこのような状況がすっかり様変わりしてしまった。

 設計サービスベンダーのインドeInfochips社で顧客ソリューション担当ディレクタを務めるRahul Shah氏は、「以前は最終製品にFPGAを利用することなど、真剣には検討されていなかった。しかし、製品寿命が短くなり、市場投入までの期間(Time to Market)が重要視されるようになるに連れ、FPGAを最終製品に用いたいと考える顧客が増えてきた。それに伴い、今日では、FPGAの消費電力に大きな注目が集まるようになってきた」と説明する。

図1 FPGAの設計フローと電力見積もり手法 図1 FPGAの設計フローと電力見積もり手法 設計フローを通して、設計者はFPGAの消費電力の見積もりの精度を高めていくことになる。

 最終製品に用いられるFPGAは、最小限の冷却装置とともに小さな筐体に収められる。また、供給電力も限られているケースが多い。このような状況であるため、設計者は設計の初期段階でFPGAの消費電力を正確に見積もらなければならない。

 加えて、積極的な電力管理手法を適用できるように、設計サイクルを通してその見積もりの精度を高めていく必要もある(図1)。そして、最終的に完成した回路の消費電力を正確に測定できる環境が用意されていなければならない。これらすべてが非常に重要な要件なのである。


設計初期段階の見積もり

 設計チームが、設計要件を整理してアルゴリズムを検討する最初の段階で、消費電力に関する正確な情報が得られれば理想的である。しかし、設計要件やアルゴリズムから消費電力を見積もるための一般的なツールは存在しない。すなわち、消費電力に最も影響を及ぼし得る初期段階において、設計チームを支援するものは何もなく、ほとんど手探りの状態で作業を進めることになる。設計チームを導くのは、類似のアプリケーションを開発した「経験」のみだ。

 インドWipro Technologies社のFPGA設計者であるRaj Kothandaraman氏は、「われわれは仕様定義の段階で、電力の問題に取り組み始める」と語る。同社では、電力管理に焦点を当てた設計手法を構築している。その手法は、設計チームがさまざまな回路構造におけるスイッチングアクティビティのデータを蓄積するというものだ。得られたデータは、初期段階の電力見積もりにおいて非常に重要な役割を果たす。蓄積されたデータから、設計要件に依存する定性的な見込みと、アルゴリズムの違いによる消費電力の差を把握することができるのである。

 Shah氏も同様に、「初期段階での消費電力の見積もりは、経験が頼りだ」と指摘する。

 「システムの電圧レベルや入力データの特性、主要機能ブロックなど、早い段階で知り得る情報から、初期段階において消費電力の許容範囲を定める。そのためには、まずスタティック電力に着目することが多い。なぜなら、スタティック電力は、設計の初期段階では得られない詳細な情報に影響を受け難いからだ。そして、設計についてより深く理解したところで、ダイナミック電力の見積もりを始め、最後に、電力低減手法を取り入れた場合の効果を見積もり始める。この見積もり作業のための専用ツールは存在しない。そのため、われわれはデータシートの情報とスプレッドシート、そしてFPGAに関するわれわれ自身の経験に頼って見積もりを行うことになる」(Shah氏)。

 詳細なトグルレート情報や実際のデータフロー、配線負荷、電力管理機能など、正確な見積もりに必要となる情報の多くは、この時点ではまだ存在しない。従って、このような初期段階における見積もりは必然的にあいまいなものとなる。しかし、それでも最終的なシステムに対する慎重な見積もりを実施しておく必要がある。

 設計会社の米North Pole Engineering社で主席設計エンジニアを務めるMike Morgan氏は、「そもそも、顧客がFPGAを使用すると決断する理由は、設計期間の短縮を狙っている場合が多い」と指摘する。

 こうしたケースでは、回路基板の設計がFPGAの設計と同時に開始される。その回路基板の設計を行うためには、早い段階でFPGAの消費電力の見積もりが必要となる。これについて、同氏は「例えば、米Xilinx社のFPGAを中心とした回路基板の設計を行うとする。その場合、設計開始時点では、より安全な方向に消費電力を見積もり、その見積もり結果を基にして回路基板における電源の分配と放熱の設計仕様を定義する」と述べている。

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