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» 2009年12月28日 16時28分 UPDATE

Wired, Weird:「強電」の知識を役立てる (1/2)

強電と弱電はどちらも電気を扱う。強電の知識の中には、弱電に役立つものもある。特に有用なのが「スイッチ」に関する知識だ。

[武田 英夫,EDN]

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 筆者は電気工事士や電験3種の資格を持っている。これらの資格が対象とする強電の世界は、ある意味では、本誌読者の多くが属するであろう弱電の世界とは大きく異なるものだと言える。とはいえ、電気という1つのくくりの中にあることに違いはない。そのため、強電の知識の中にも、弱電技術者にとって参考になるものが存在する。そこで今回は、そうした事柄をいくつかピックアップして紹介する。

交流配線は「白」がグラウンド

 家庭に供給されている100Vの交流電源には、白と黒の配線が使用されている。白の配線は接地されており、黒の配線に触ると感電する。接地側をニュートラル、反対側をラインと呼び、それぞれ「N」と「L」で表す。

 一方、弱電の世界ではマイナス側の電圧に黒の配線がよく用いられ、多くの場合、接地となる。そのため、100Vの交流電源でも同様に黒が接地側だろうという勘違いが生まれることになる。

 家庭のコンセントは左側が接地なので、白い電線をつなぐ。昔の屋内配線は、単線を碍子(がいし)引きで配線していた。横方向に配線する場合には上が白で、下が黒になる。当時、筆者は「苦労した(黒下)」と覚えていた。

スイッチは3種類

 各種のスイッチを機能別に見ると、次の3種類に分けられる。

・遮断器:ブレーカ、ヒューズなど

・開閉器:電源スイッチなどの普通のスイッチ

・断路器:ナイフスイッチ、ACコンセント、コネクタなど

 ここで「遮断器」、「開閉器」、「断路器」は、強電の用語である。強電の遮断器は、発電所やビルの受電設備で使われており、短絡事故が起きたときに、その個所と回路を遮断する役割を果たす。開閉器は工作機械などで使われるスイッチである。大電力を扱う用途で用いられる電磁開閉器のように、開閉器は手で直接操作するスイッチであるとは限らない。断路器は、設備の点検時に回路を切り離すために用いる。なお、上記で具体例として挙げたものは、弱電技術者になじみがある部品により機能の概要を示そうとした結果である。「ACコンセントは、断路器とは呼ばない」といった指摘もあるかと思うが、3種類の機能を理解してもらうための例として理解してもらいたい。

 一般に使われるスイッチは、開閉器に相当する。代表例である電源スイッチには、接点が火花によって磨耗しないことが要求される。また、操作回数も多いので耐久性も求められる。

 断路器について理解するには、例に挙げたナイフスイッチを思い浮かべればよい。電流が流れていない状態で開閉するようにし、開閉時に火花が飛ぶような使い方をしてはならない。

 遮断器は、故障が発生したときに回路をオープンにする。遮断器に関連して知っておきたいことは、電源インピーダンスがゼロの理想電源は、実際には理想的なものではないということだ。もし電源インピーダンスがゼロだと、短絡事故で接点を開いたときに火花が飛び、アーク放電へと発達する。すなわち、電源インピーダンスがゼロだと、遮断できずに遮断器を壊してしまうのだ。遮断器のスペックには「遮断電流」という項目があり、そのような電流の限界値を規定している。遮断電流は定格電流に比べてかなり大きな値となる。

 スイッチ製品のスペックを見ると、交流電圧については125Vの耐性があるのに、直流電圧については30Vしかなかったりする。なぜ、直流電圧には弱いのだろうか。その理由は、交流は電流がゼロになる瞬間があるので遮断しやすいが、直流にはそれがないので遮断が難しいからである。接点を開いたときの火花が消えず、アーク放電へと発達してしまうのだ。なお、スイッチのスペックでは、交流に関しては負荷の力率についても規定されている。電圧と電流の値だけでなく、直流、交流、力率といった要素が関係してくるので、スイッチは意外に複雑である。

なぜ強電の知識が必要なのか

 懐中電灯ぐらいの回路であれば、電線同士を接触させたり離したりすることでスイッチとして機能させることもできる。これであれば、上述した3つの機能に関する知識は不要だ。しかし、電力を扱う回路では、これらの知識が必要となる。例えば、ACコンセントのところが火花で黒くなってしまった機器を見かけたことはないだろうか。それは、3つの機能についての知識がないために、誤った使い方をしてしまった例である。「電源インピーダンスはゼロが理想」という教科書的な知識だけでは足りない。繰り返しになるが、実際には、電流を制限するために適度なインピーダンスが必要となる。また、ヒューズの選択では、電流の値だけでなく、直流、交流の違いも重要になる。

 「大元のブレーカさえ切っておけばよい」という考え方も危険だ。各装置の電源を切ってからブレーカを切らないと、多くの電流が流れてブレーカの接点を傷めるからである。安全のことを考えると、複数の個所で電源を切ることが必要だ。はんだごてをコンセントから抜かずにブレーカを切り、翌日ブレーカを入れると、誰も使わないはんだごてに電源が入り、火災になるといったことが起こり得る。

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