コラム
» 2009年12月28日 16時27分 UPDATE

Signal Integrity:インピーダンスの局所的な変化

[Howard Johnson,EDN]

 異なる特性のガラスエポキシ誘電体材料で作られた2枚のプリント基板があったとする。各基板には特性インピーダンスが50Ωの伝送パターンが形成されているとしよう。両基板を連結したとき、その連結点を通過する高速信号は、基板の特性が急に変化することの影響を受けて反射を生じるのだろうか。

 このような疑問が生まれるのは、ほとんどの場合に各基板上のパターンの寸法が異なるからだ。例えば、2枚のプリント基板が同じ厚さの層構成を成しており、1つ目の基板の誘電率が4.3、2つ目の基板の誘電率が3.5であるとする。その場合、それぞれの基板に特性インピーダンスが50Ωのパターンを形成するには、2つ目の基板のパターン幅は1つ目の基板のパターン幅に比べて広くしなければならない。このように、パターンの幅と厚さを基板の材質(誘電率)に応じて調整するというのは、ごく一般的に行われていることである。

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 連結点が、余分に介在するもののない、理想的な条件の突き合わせ接続となっており、そこでパターン幅が急変するならば、その連結点では単位長当たりのインダクタンスとキャパシタンスが局所的に無秩序な状態になる。このような状況は許されないことのように感じられるだろうが、幸い、この乱れが起きるのは連結点の両側わずかの範囲に限られる。つまり、連結点からパターンの厚さの数倍ほども離れれば、連結点の両側とも各パターンのインピーダンスは設計値である50Ωを示すようになる。

 信号は、ある1点のインピーダンスからの影響は受けない。信号に影響を及ぼすのは、その立ち上がり/降下エッジが広がる範囲に対する実効的平均特性インピーダンスだけである。

 これと同様な平均化原理が、電信方程式モデルを用いた伝送線路においても利用されている。そのモデルによる伝送線路は、直列インダクタと並列(シャント)コンデンサによって構成される集中定数ブロックを複数つないだラダー型フィルタとして表される。各ブロックでの遅延量が信号の立ち上がり時間あるいは降下時間よりも短ければ、そのブロック内では、信号は連続した伝送線路を通る際と同じように伝搬する。

 局所インピーダンスというものが定義可能だとすると、このモデルでの局所インピーダンスは信号の伝搬に連れて交互に純粋なインダクタンスとキャパシタンスとが完全に入れ替わるものとなる。しかし、このこともインダクタンスとキャパシタンスの比の平均値が変化しない限り、大きな問題にはならない。そして、信号エッジがまたがるブロックの数によって、エッジの長さを表現することができる。

 プリント基板のパターン上において、信号エッジは有限の物理的長さを持つ。その長さは、単位が「s」の立ち上がり時間または降下時間と、単位が「m/s」の伝搬速度との積に等しい。プリント基板の設計で一般的に利用される英国式単位系を使用すれば、誘電率4.3の基板での伝搬速度はほぼ6インチ/ナノ秒になる。信号エッジの遷移時間を50ピコ秒(0.05ナノ秒)とすると、エッジの物理的長さは0.05ナノ秒×6インチ/ナノ秒=0.3インチとなる。プリント基板上のパターンの厚さが5milの場合、50ピコ秒の立ち上がりエッジが広がる長さ300mil(0.3インチ)は、連結による乱れの範囲に比べればはるかに大きい。

 50ピコ秒のエッジを持つ信号が、1つ目のプリント基板のパターン上を伝搬しているとする。そのエッジの半分が2つ目の基板のパターン上に到達した瞬間を考えてみよう。すなわち、エッジが連結点をまたぎ、両方の基板に広がる範囲での平均インピーダンスを考えるということである。連結点から、1つ目のプリント基板パターンを遠くのほうまで眺めれば、インピーダンスは正しく50Ωに見える。そして連結点の近くでは、パターン幅が急変することによって局所インピーダンスの乱れが確認できる。一方、2つ目のプリント基板パターンを遠くのほうまで眺めれば、インピーダンスは設計値の50Ωのままに見える。信号エッジが、インピーダンスに乱れのある領域に比べて十分に長ければ、局所的な乱れの影響は、連結点の両側に長く広がる乱れのない50Ωの伝送線路の特性によって帳消しされるのである。

 このような場合であれば、局所的な乱れはまったく問題にならない。問題が生じるのは、信号が高速になり、エッジの物理的な長さがインピーダンスの乱れの範囲と同程度まで短くなり始めてからである。

 なお、今回述べた内容は、連結点の両側のパターンが、等しい特性インピーダンスを持つ場合にだけ成り立つ。

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<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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