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» 2010年02月01日 00時00分 UPDATE

6つのポイントから最適解を導き出す:「コンパレータ」の選択基準 (3/4)

[Paul Rako,EDN]

POINT 4 : 電源電圧

 コンパレータの出力方式を選択し、消費電力や速度、ノイズに関する要件について決定したら、次に検討するのは電源電圧である。かつてのCMOSプロセスで製造していた低速/低消費電力のコンパレータには、電源電圧が5Vであるものが多い。一方、旧式のバイポーラプロセスを用いた製品は±15Vの電源電圧で動作する。それに対し、最新のCMOS/BiCMOSのプロセスで製造された製品は、12V以上の電源電圧を実現することができる。Maida氏は、「以前は、非常に高速なコンパレータではバイポーラタイプの電源が使用される傾向にあった。同相入力電圧範囲をグラウンドレベルまで引き下げることができなかったからだ」と説明する。

図4 LM339の不適切な使用例 図4 LM339の不適切な使用例 コンパレータの片側の入力電圧が正電源レールの近傍にある。この回路では、LM339に十分な動作余裕が得られず、意図したようには機能しない。

 それに対し、National Semiconductor社の「LMH7322」は、グラウンドを負の電源レールとする場合でも、−200mVまでの入力電圧範囲を実現している。

 バイポーラプロセスは、より高い電源電圧を実現することができる。例えばLinear Technology社の「LT1716」の電源電圧/入力電圧は最大44V、電源電圧が5Vの場合の消費電流はわずか35μAである。同社の高速コンパレータの多くは、0V〜5Vだけでなく±5Vの入力に対応する。

 National Semiconductor社が古くから提供するコンパレータ「LM339」は、いまだに多くの技術者に利用されている製品である。しかし、同製品は、入力電圧が電源レールの近傍の値になるような回路では使用できない(図4)。電源電圧範囲以上または以下の出力を許容する製品もあるが、入力端子が負電源レール以下になると出力が反転してしまうものもある*12)

■同相入力電圧範囲

図5 同相入力電圧に対する入力バイアス電流の変化(提供:Analog Devices社) 図5 同相入力電圧に対する入力バイアス電流の変化(提供:Analog Devices社) レールツーレール入力型のコンパレータは2つの入力段を持つ。バイポーラタイプの製品の場合、同相入力電圧範囲内における変化に伴い、入力バイアス電流の方向が反転する。

 電源電圧の範囲に関連する項目として、コンパレータが正常に動作する入力電圧の限界値を表す同相入力電圧範囲がある。

 Analog Devices社の「ADCMP60x」やスイスSTMicroelectronics社の「TS3021」のようなレールツーレール(Rail-to-Rail)入力段を備えるコンパレータは、同相入力電圧範囲が比較的広い。これらには、入力段が2つあり、n型トランジスタ/FETの入力段とp型の入力段が並列に接続されている。入力電圧がグラウンドまたは負の電源レールに近いときには主にp型の入力段が機能し、入力電圧が正の電源レールに近づくと主にn型の入力段が機能する。通常、この種の製品は、正の電源レールから1V〜2V低いポイントで入力段が切り替わるようになっている。

 図5のグラフは、ADCMP60xにおける同相入力電圧と入力バイアス電流の相関を示したものである。同相入力電圧が負から正に変わると、入力バイアス電流が負から正へと変化しており、レールツーレール入力段を持つコンパレータの特徴がよく表れている。

 なお、レールツーレール型に特有のオフセット電圧を最小化するアーキテクチャも存在する。

シミュレーション上の問題点

 SPICEモデルを用いたコンパレータ回路のシミュレーションで問題が発生することがある。多くの半導体メーカーのトップが、古いSPICEモデルは新しいものよりもかなり信頼性が低いことを認めている。Texas Instruments社は、無償のSPICEシミュレーションツール「TINA-TI」において、より優れたコンパレータのSPICEモデルを提供できるように努めているという。また、同ツールでは、すべての回路図と波形をメタファイルとして米Microsoft社の「Word」や「PowerPoint」にカットアンドペーストすることができる。 高速コンパレータを扱う場合、プリント基板が設計における重要な要素になることを覚えておくべきだ。レイアウトによって浮遊容量やクロストークが生じ、それらによる2次的な効果をモデル化していないSPICEシミュレーションでは正しい結果が得られない可能性がある。さらに、最新型の非常に高速なコンパレータを扱う場合、SPICEシミュレーションで問題が生じる可能性がある。Analog Devices社のマーケティングマネジャを務めるJames Frame氏は、「性能が高くなるほど適切なモデルを得るのが難しい。われわれは、まだ新しい製品に対応したSPICEモデルを手に入れていない」と述べた上で、同社が新たなSPICEモデルの開発を検討中であることを明らかにした。その一方で、「顧客に誤った情報を与えることのないよう、十分に正確なモデルが得られた場合にのみ、それらをリリースするつもりだ」と同氏は述べた。



脚注

※12…"LM139/LM239/LM339/LM2901/LM3302 Low Power Low Offset Voltage Quad Comparators," Note 3, National Semiconductor, March 2004, http://www.national.com/ds/LM/LM139.pdf


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