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LXI/PXI がもたらすメリット計測器向けの通信規格(2/3 ページ)

» 2010年03月01日 00時10分 公開
[Rick Nelson,EDN]

イーサーネットを活用するLXI

 LXIコンソーシアムの会長で、米Agilent Technologies社に所属するVon Campbell氏は、米フロリダ州オーランドで開催された技術カンファレンス『Autotestcon 2009』(2009年9月14日〜17日)において、「現在、1211種もの製品がLXI規格に準拠していると認定されている。これは1年前と比べて約1.5倍の数字だ。また、LXI規格に準拠する計測器を製造する企業は24社に上る」と述べた。さらに、「LXI規格に準拠する計測器は、高性能の計測システムを構築するのに必要な製品カテゴリをすべてカバーしている」(同氏)という。

 Autotestconでは、Campbell氏以外にも複数の人々がLXI規格についての講演を行った。米The MathWorks社で「MATLAB/Simulink」向けテスト/計測製品担当マネジャを務めるRob Purser氏、Pickering Interfaces社の販売/マーケティングマネジャを務めるBob Stasonis氏、Agilent社のシニアマーケティングエンジニアであるChris Van Woerkom氏、米VTI Instruments社のビジネス開発担当バイスプレジデントTom Sarfi氏の4氏である。

 まず、MathWorks社のPurser氏は、「イーサーネットは30年もの間進化し続け、互換性を維持してきた。そして、LXI規格は、このイーサーネットを活用することにより、相互接続のコストを低減するとともに、計測システムの長期的安定性を保証する。LXI規格を利用して計測器間を接続するのに、特殊なハードウエアは必要ない」と同規格の利点を強調した。その一方で、同氏は、「とはいえ、接続に用いるイーサーネットケーブルとして、安価な製品を使うのだけは止めたほうがよい」と警告した。また、LXI規格が最新技術に対応していること、さらにLXIをGPIB、PXIなど、ほかの規格に準拠する計測システムとともに使用できることも説明した。

 Purser氏が、LXI規格の最大の特徴として挙げたのが、計測器をイーサーネットを使って接続する際の設定の容易さである。「多くの計測器はイーサーネットインターフェースを備えている。しかし、イーサーネットで計測器間を接続しようとすると、膨大な数のLANオプションを設定してから、計測器を検出し、計測器と計測ソフトウエアを接続しなければならない。さらには、計測処理を調整するための手段も必要になる。一方、LXI対応の計測器には、標準のLAN設定が提供されており、計測器をLANに接続する際の細かな作業が簡略化される」(同氏)という。

画面1『Autotestcon』におけるMathWorks社のデモ画面 画面1 『Autotestcon』におけるMathWorks社のデモ画面 MathWorks社は、「MATLAB」と、Agilent社およびTektronix社のLXI準拠の計測器を用いて、ケーブルインピーダンス特性の計測についてのデモンストレーションを行った。

 LXI対応の計測器の設定がいかに容易であるかを示すために、Purser氏はAutotestconのMathWorks社展示ブースにおいてデモンストレーションを行った(画面1)。このデモでは、MATLABが動作するパソコンと、Agilent社と米Tektronix社の計測器を相互に接続して、通信チャンネル計測の設定作業を行う様子が示された。

 LXI規格の機能について説明を行ったのは、Agilent社のVan Woerkom氏である。LXI規格は、計測器向けに一貫したLAN通信サービスを提供し、計測器向けのLAN検出もサポートしている。計測器向けウェブページの標準規格や、IVI(Interchangeable Virtual Instrument)ドライバについても定義されているという。また、同氏は、LXI規格に準拠する製品は相互運用性テストを必要とすること、トリガーと同期用の拡張機能を提供することについても言及した。

IT部門との連携

 IT部門とやりとりしたことのある人なら、計測器におけるLAN接続は、便利な機能というよりも、バグの元凶だと感じているかもしれない。Pickering Interfaces社のStasonis氏は、Autotestconの講演において、計測器を企業内のネットワークに接続する際に遭遇する問題の回避方法について触れ、ファイアウォールへの対処法やIT部門との連携方法に関するアドバイスを行った。「当然のことながら、IT部門はアップタイムやセキュリティの問題に対する関心が高い」(同氏)という。

 Van Woerkom氏は、「自動計測システムの要件がそれほど複雑でない場合には、IT部門を煩わすことのないような構成で十分かもしれない」と述べた。その上で、パソコン、ルーター、LXI規格に準拠する計測器から成るシステムを示した(図1)。これは、隔離されたサブネット内での利用を想定したものである。計測器の設定は、DHCP(動的ホスト構成プロトコル)を用いてルーターに任せることができるが、手作業でIP(Internet Protocol)アドレスとエイリアスを割り当てれば、アドレスの再割り当てに関連する問題を防ぐことができ、プログラミングも容易になる。Van Woerkom氏は、「固定アドレスのほうがプログラムは簡単だ」と語った。

図1 LXI規格を用いた計測システムの例 図1 LXI規格を用いた計測システムの例

 建物内のみならず、建物の外にある計測器と通信を行う場合や、実験室内の計測器を遠隔操作する場合には、IT部門の関与が必須である。こうしたケースでは、「必要となるIPアドレスの数を特定し、遅延を最小化して検出を簡素化するネットワーク構成を定義し、帯域幅と使用するサービスおよびプロトコルの観点からネットワークのトラフィック量の予測を示す必要がある」(Stasonis氏)という。これらに加えて同氏は、「計測結果の保存場所や、ウイルスから保護するためのシステムアップデート方法なども決定しておいたほうがよいだろう」と述べた。

 Autotestconの講演でトリを務めたのがVTI Instruments社のSarfi氏である。Sarfi氏は、LXI規格の各クラスの特徴を概説した。

 まず、クラスCは基本構成であり、LXIクラスC対応のほかの計測器との相互運用性が保証されている。クラスBは、IEEE 1588規格に準拠しており、計測器間における同期機能を提供する。各計測器は、通常、近接する計測器とは少し異なるクロック速度で動作している。クラスBのシステムには、時間を管理するマスターと複数のスレーブが存在し、タイムスタンプを用いてクロックの差を数十nsに抑えているとSarfi氏は述べた。

 最後に同氏は、8レーンのM-LVDS(Multipoint Low Level Differential Signaling)バスを備え、誤差を伝搬遅延以下に抑えて、ハードウエア速度での正確な非同期ハンドシェイクをサポートするクラスAについて説明し、講演を終えた(米EDN誌の姉妹誌であるTest&Measurement Worldのウェブサイトでは、Autotestconにおけるこれらの講演をウェブキャストで提供している)*2)


脚注

※2…http://www.tmworld.com/webcast/All_Webcasts/2258-How_to_Create_Advanced_ATE_Systems_with_LXI_Building_on_the_Industry_s_Best_Practices.php


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