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» 2010年04月01日 00時00分 UPDATE

バイパス機能で強電界入力に備える:モバイルテレビ向けLNAの設計 (1/4)

携帯電話機などに組み込まれるモバイルテレビは、着実に普及し続けている。このような小型テレビの受信機に使われるRF ICでは、利得を大きくすると、電波強度が高い状態においてミキサーやIF増幅段に負荷がかかり、信号品質が劣化してしまう。本稿では、バイパスモードを付加することで利得の低減を可能にするLNAの設計/製作の実例を示す。

[Chin-Leong Lim (米Avago Technologies社),EDN]

セルラー方式との大きな違い

 モバイルテレビの機能を機器に実装すれば、通勤時などにテレビ番組を見ることが可能になる*1)。実際、モバイルテレビの機能は、ノート型パソコンや携帯情報端末(PDA)、車載エンターテインメントシステム*2)、携帯電話機などに組み込むことができる。ただし、モバイルテレビの設計においては、注意すべき事柄がいくつかある。

 テレビ放送には、VHF(30MHz〜300MHzの超短波)帯とUHF(300MHz〜900MHzの極超短波)帯が使われている。今日の携帯電話サービスによって一般化した小型セルを用いる手法とは対照的に、テレビ放送は、歴史的に、受信可能な領域を拡大することで、より多くの視聴者を獲得してきた。具体的には、商用テレビ放送では水平電波を最大化するために、高い空中アンテナ塔と10kW〜50kWの範囲の電力レベルを利用する。これに対し、携帯電話の基地局の伝送出力は50W以下と桁違いに少ない。このような違いがあることから、モバイルテレビでは、通常の携帯電話機の受信システムとは異なる設計を行う必要がある。

 また、モバイルテレビでは、ユーザーがさまざまな場所に移動するときに、送信機と受信機との距離が大きく変化するという特徴もある。利得の小さい小型アンテナしか機器に組み込むことができないとすると、モバイルテレビの受信機は、受信可能範囲の両端でクリアに受信できるように高い感度で設計しなければならない。

 ここで問題となってくるのは、RF信号に対する利得を大きくすると、ユーザーが高出力のテレビ送信機に近づいたときに、ミキサーとIF(中間周波数)段にとっては過負荷の状態になることだ。増幅器やミキサーの過負荷によって信号波形に歪(ひずみ)が生じたら、それを簡単なフィルタや信号処理によって補正することはできないのである。

鍵は利得の低減

図1 可変利得LNA段を備える受信機フロントエンド 図1 可変利得LNA段を備える受信機フロントエンド 
表1 図1の受信機フロントエンドの利得とIP3 表1 図1の受信機フロントエンドの利得とIP3 

 ミキサーとIF段の過負荷許容量を大きくするのは、技術的には可能なことである。ただし、それに必要なハードウエアは、価格が重視されるこの種の製品カテゴリでは高価になりすぎてしまう。そのため、モバイルテレビの受信機を実用的なレベルで実装できるかどうかは、強い信号が存在する状態で、いかに全体的な利得を下げるかということにかかってくる。利得を下げることは、過負荷許容量を増やすよりもはるかにコスト効果の高い解決策となるからだ。RF信号に対する利得を変化させることができれば、ミキサー段の線形性の要件が大幅に緩和され*3)、線形性能が劣る低コストのRF ICを受信機の設計に使用することができるのである。

 筆者らは、利得の切り替えが可能な低ノイズアンプ(LNA)を備える受信機フロントエンドの分析を行った(図1)。その結果、利得を変化させれば、フロントエンド全体の3次入力インターセプトポイント(IIP3)をその変化と同じだけ改善できることがわかった(表1)。つまり、利得を変更できるレシーバは、利得が固定のレシーバに比べて強い信号に対する処理の面で優れていると言えるのである。


脚注

※1…"Mobile TV," http://en.wikipedia.org/wiki/Mobile_TV

※2…"In car entertainment," http://en.wikipedia.org/wiki/In_car_entertainment

※3…C. Baringer and C. Hull, "Amplifiers for Wireless Communications," in RF and Microwave Circuit Design for Wireless Communications, L. E. Larson, Ed. Norwood, MA: Artech House, 1997, p.369


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