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» 2010年04月01日 00時00分 UPDATE

Tales from the Cube:直流と交流の大きな違い

「直流と交流は違う」――。それは分かっていても、“その影響は同じではない”ということも理解していなければ、不具合を避けるのは難しい。

[Paul Breed(米NetBurner社),EDN]

 これは、筆者らが特急プロジェクトとして進めてようやく開発した、耐久性の高い電力変換器で発生した出来事である。その電力変換器は、システム統合を担当する会社に出荷し、そこで耐久性の高いコンピュータ機器の電源として組み込まれる予定だった。周波数範囲は40Hz〜400Hzで、100V〜300Vの通常の交流電圧と28Vの直流電圧を入力として利用する。停電が発生した際には、10分間にわたって1500Wのバックアップ用電池から電力を受け取ってUPS(無停電電源装置)として働き、低ノイズで安定な117V/60Hzの交流電圧を出力するというものであった。筆者が所属していた会社は、このような仕様に適合する民生向けの製品は製造していたが、それらは耐久性や耐環境性能の面で顧客の要求を満たすものではなかった。そこで、要求仕様を満足するよう機械的、熱的な設計を改善した製品を開発したのだ。

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 設計時に最大の懸念材料となっていたのは、85℃の周囲温度、100%の負荷という条件で、24時間のストレス試験に合格できるかどうかということであった。ただ、実際にはこの試験には1回で合格した。われわれは、製品全体が要求条件に合致していることを確認した上で、全部で200台を出荷した。

 顧客は、200台の装置を受け入れ、システムに組み込んだ後、70℃の条件で48時間のストレス試験を開始した。すると、試験の開始から36時間が経過したときに、すべての装置に壊滅的な故障が発生したのである。この問題への対応を命じられた筆者は、すぐに調査を行った。その結果、全装置で1次側のブリッジ回路が焼け飛んでいることがわかった。調査初日は最後まで原因の糸口すら思いつくことができず、こそこそと帰宅する始末だった。

 翌日、まずは再現実験を行うべきだと考えた。そこで、評価用の試作品を使って、70℃の温度で同様の試験を実施した。その結果、やはり36時間が経過したところで試作品も破損した。装置の各部は、すべて2時間以内に温度平衡に達するのに、この36時間の試験と24時間の試験でなぜ異なる結果になってしまうのだろうか。

 問題となった装置の出力パワー段は、独自の共振回路方式を採用していた。電流フィードバックによって出力トランスのバランスをとり、過負荷に対する保護のためにフォールドバック機能が働くようにしていた。また、パワー回路部でのフィードバック電流がデジタルオプトアイソレータに流れ、それに対応する出力パルスが制御回路部に送出されるよう構成していた。そして、この部分が、問題になった装置で設計を改良を施したところだった。この設計変更によって、125℃の動作温度、交流3500Vrmsの絶縁耐力を実現したのだ。

 ただし、実際の使用条件は、わずか300Vの直流電圧であった。筆者らは、交流3500Vに対応できるならば直流300Vでも問題なく使用できるはずだと考えていた。交流での使用では、電荷が絶縁障壁を超えて移動すること(Migration)はない。もちろん、ある程度の電荷は移動するのだが、その向きは交流のサイクルごとに変化する。しかし、ここに問題の原因があった。

 直流の高電圧がオプトアイソレータに加わると、一方向にのみリーク電流が流れてしまう。そして、このリーク電流は温度の上昇とともに増大する。高温動作が長く続くと、オプトアイソレータの受信側に電荷が蓄積し、動作に影響が及ぶことになる。その結果、受信パルスが停止し、制御回路のフィードバック機能が働かなくなる。最終的には、トランスが飽和して煙が出る状態にまで至るということであった。

 その後も引き続き調査した結果、直流での連続動作に対応したオプトアイソレータの場合、移動する電荷をグラウンドに逃がすためのスクリーンを内蔵していることもわかった。つまり、交流電流と直流電流との影響は同じではないのに、その知識が不足していたために問題が生じたのだ。

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