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電池の負荷応答を模擬できるシミュレータDesign Ideas

» 2010年08月01日 00時00分 公開
[Barry Galvin (米GRAE社),EDN]

 電池で駆動する機器を設計するためには、電池のさまざまな特性について知っておかなければならない。例えば、電池の寿命は、その出力電圧よりもESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)特性によって決まることのほうが多い。この傾向は、特に電池の電圧をスイッチングレギュレータで昇圧するシステムで顕著になる。


図1 電池のシミュレータ回路 図1 電池のシミュレータ回路 この回路を使用すれば、さまざまなタイプの電池の負荷応答をシミュレーションすることができる。

 本稿では、電池のESR特性を模擬できるシミュレータ回路を紹介する。図1の回路において、赤色の破線で囲んだ負荷応答フィードバックネットワークの部分の定数値を変更すれば、さまざまなESR特性を模することができる。それにより、リチウムイオン電池やアルカリ電池を含むほとんどのタイプの電池の特性を表現できる。また、試験の対象となる機器に0.5V〜4.2Vの電圧と数Aの電流を供給し、その条件における各種電池のESRを模擬することが可能である。ESRが最終値(定常値)に達するまでの遅延時間は、ポテンショメータRESRを調整することで設定する。

図2 シミュレーション波形(その1) 図2 シミュレーション波形(その1) コンデンサC4を取り除いた場合の結果。シミュレータ回路の出力は、大型リチウムイオン電池の応答に近いものとなる。
図3 シミュレーション波形(その2) 図3 シミュレーション波形(その2) コンデンサC4を使用した場合の結果。シミュレータ回路の出力は、小型電池の応答に近いものとなる。

 IC1は高精度の5V基準電圧源であり、これにより無負荷時の出力電圧を設定する。パワー出力部は、電源電圧を8Vとし、トランジスタQ1を用いて構成している。抵抗R8は出力パワーを制限するために使用する。出力電流量を抵抗R9で検知し、それをIC4で20倍に増幅する。IC4からの出力信号が負荷応答フィードバックネットワークに入力され、ここでESRのレベルと応答時間の両方が調整される。なお、この回路図では、電源のバイパスコンデンサは省略している。

 先述したように、負荷応答フィードバックネットワークの定数を適切に選定することにより、電池の種類やサイズに応じたシミュレーションが行える。まず、この部分の回路からコンデンサC4を取り除き、抵抗RESR1、RESR2、RESR3、RESR4を100kΩにすると、最も基本的なESR特性を模擬することになる。具体的には、コンデンサC4を取り除き、1Aのパルス負荷電流を入力すると、その応答は2000mAhの18650型(直径18mm、長さ65mm)リチウムイオン電池の応答に非常に近いものとなる(図2)。一方、コンデンサC4を使用した場合には、200mAhの小型リチウムイオン電池の応答に近い出力特性が得られる(図3)。このような調整を適切に行うことにより、さまざまな応答特性を得ることができる。

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