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» 2010年08月15日 00時00分 UPDATE

【ビデオ講座】アナログ設計の新潮流を基礎から学ぶ:LVDSを基礎から理解する、高速、長距離、低EMIの理由(後編)

[PR/EDN Japan]
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【ビデオ講座】LVDS(第1回)LVDSを基礎から理解する、高速、長距離、低EMIの理由(後編) (クリックで動画再生)


 前編で紹介したように、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)の特徴は、「高速伝送が可能」「長距離伝送が可能」「EMI(Electro-magnetic Interference)の低減が可能」の三つである(図1)。後編では、こうした3つの特徴が得られる理由を解説していく。

図1 図1 LVDSの基本構成図
ドライバとレシーバの間を差動配線で結ぶ。ドライバを構成する電流源の出力は3.5mAでレシーバの終端抵抗が100Ωであるため、差動配線上での信号振幅は350mVとなる。こうした構成を採用するため、「高速伝送」「長距離伝送」「低EMI」という3つの特徴が得られる。

電圧振幅はTTL/CMOSの約1/7

 1つめの「高速伝送が可能」という特徴が得られる理由については、ナショナル セミコンダクタージャパンのマーケティング本部でプロダクトマーケティング課長を務める河西基文(かわにし・もとふみ)氏は、「信号振幅が350mVと小さいことに尽きる」と説明する。

 通常、3VデバイスのTTL/CMOSでは信号振幅は2.5〜3Vである。信号振幅が大きければ、単純なことだが、ハイからロー、ローからハイに遷移する時間が掛かる。電圧変化率(dV/dt)がほぼ同じだと仮定した場合、TTL/CMOSからLVDSに変更すれば、信号の遷移時間は1/7〜1/10に短縮できる(図2)。従って、この分だけデータ伝送速度を高めることができるわけだ。LVDSでは数百Mビット/秒、前編で紹介したシグナル・コンディショニング技術を利用すれば、長距離であっても数Gビット/秒のデータ伝送速度が得られる。

 ただし、データ伝送において、信号振幅を小さくすることは「諸刃の剣」と言えるだろう。データ伝送速度を高めることができる一方で、ノイズに対する耐性が低くなってしまうからだ。こうした問題については、LVDSでは差動伝送方式を採用することで解決している。差動伝送方式とは、2本の信号配線を使って逆位相の信号を送る方式である。外部からのノイズが2本の信号配線に載ってしまっても、受信時にその影響を取り除くことができる。従って、ノイズ耐性を大幅に高めることが可能だ。

 図3は、信号振幅が350mVのLVDS信号に対して、±1.5Vと大きなノイズを与えた実験の結果である。通常、信号振幅が3VのTTL/CMOS信号に±1.5Vのノイズを与えると、正常な信号伝送は望めない。しかし、LVDSの場合は、±1.5Vのノイズを与えたにもかかわらず、レシーバの出力(図3のC点)ではきれいな信号波形が得られている。「LVDSの信号振幅は350mVと非常に小さいが、TTL/CMOSを大きく上回るノイズ耐性を備えている」と河西氏は指摘する。

図2 図2 高速伝送が可能な理由
LVDSの信号振幅が350mVと低いことが、高速伝送が可能な理由である。信号振幅が低ければ低いほど、信号の遷移に費やす時間が短くなるからだ。3VデバイスのTTL/CMOS信号の振幅である2.5〜3Vと比べると、信号振幅は1/7程度。従って、約7倍の伝送速度を実現できる。
図3 図3 耐ノイズ性能は極めて高い
LVDSの差動信号に±1.5Vと大きいコモンモード・ノイズを与える実験を行った。信号には大きなノイズが載っているものの、受信端(C地点)ではきれいな方形波が得られている。差動信号を使っているため、コモンモード・ノイズを打ち消すことができるからだ。

±100mVまで受信可能

図4 図4 EMIと差動配線
LVDSの特徴の1つである低EMIは、差動配線を採用している点に起因する。それぞれの配線に流れる電流が作る電磁界成分が強く結合するため、強いノイズは放射されない。

 ノイズ耐性が高いことは、LVDSの2つめの特徴である「長距離伝送が可能」なことに大きく貢献している。LVDS信号を長距離伝送しても、ビット誤り率を低く抑えることができるからだ。

 しかし、信号配線には寄生抵抗成分や寄生容量成分が存在する。長距離伝送すれば、それらの影響によって350mVしかない信号振幅はさらに小さくなってしまう。こうした問題についてLVDSは、レシーバの工夫で対処している。具体的には、最小で±100mVの信号振幅があれば、受信可能な回路を採用していることである。「信号振幅が多少減衰しても、LVDSでは正常に受信することが可能だ」(河西氏)という。データ伝送距離は、伝送媒体に依存するが10m程度でもまったく問題なく伝送できる。

 3つめの特徴である「EMIの低減が可能」な理由は、差動伝送方式を採用している点にある。図4のように、差動線路を構成する2つの信号配線が作る電磁界は互いに結合してしまうからだ。このため、電磁界が遠方に放射されない。電磁界が理想的に100%結合していれば、EMIはゼロに抑えられる。

 しかし、過信は禁物だ。LVDSを採用すれば、EMIに関する問題から完全に解放されるわけではない。例えば、LVDSのドライバ・チップを実装したプリント基板のグラウンド層(面)の電位が変動していると、これによって発生した電流が同軸ケーブルのグラウンド(シールド)線を介して流出し、強いEMIの発生源になってしまうのだ。従って、LVDSのドライバ・チップを搭載するプリント基板のグラウンド層(面)のインピーダンスを低く抑え、電位変動が発生しないように設計時に配慮する必要がある。

M-LVDSを使えばさらなる長距離伝送が可能に

 一般的なLVDSドライバ/レシーバを使えば、200Mビット/秒の信号を10m程度伝送できる(図5)。しかし、用途によっては、10m以上の距離を伝送する必要に迫られる可能性もある。例えば、通信/ネットワーク機器やサーバー機、ストレージ機器などのパックプレーン接続などの用途だ。

 こうした用途に対しては、M-LVDSという仕様を用意している。頭文字のMはMultipointの意味で、バス接続や長距離接続を可能にする仕様である。一般的なLVDSに比べて、定電流源の大きさが約3倍に相当する11mAに高めることで、100Mビット/秒の信号を約50mの伝送することを可能にした注1)。ただし、データ伝送速度は一般的なLVDSより低く、最大250Mビット/秒が限界である。

 M-LVDSを使った伝送実験の結果が図6である。使用したチップは、M-LVDSに対応したドライバとレシーバを集積したトランシーバ・チップ「DS91C176」である。このチップを2つ使って、50MHz(100Mビット/秒)のM-LVDS信号を50m伝送した際の波形を観測した。ケーブル長が長いため、波形が鈍っているものの、問題なくデータを伝送できている(ただし、送信と受信のオフセット電圧は+3.8V、−1.4V以内であることが求められる)。

図5 図5 データ伝送速度と伝送距離の関係
LDVSドライバIC「DS90LV047A」の場合である。伝送距離(ケーブル長)が長くなると、データ伝送速度は低くなる傾向にある。
図6 図6 M-LVDSの伝送波形
M-LVDSを使えば、50mと長いケーブルを介した高速伝送が可能になる。図は、M-LVDS対応トランシーバ・チップDS91C176」を使った伝送実験の結果だ。50MHz(100Mビット/秒)のM-LVDS信号を50m伝送したところ、波形には鈍りが見られるが、問題なく信号を伝送できた(ただし、送信と受信のオフセット電圧は+3.8V、−1.4V以内であることが求められる)。

注1)M-LVDSの信号振幅は、終端抵抗の値で決まる。例えば、バス接続における2点の遠端の終端抵抗がいずれも75Ωの場合は、(75+75)/2Ω×11mA=412.5mVとなる。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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