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» 2010年09月01日 00時00分 UPDATE

対応システムの開発に必要なものとは?:試験の観点から見たLTE (1/5)

高速通信を実現する次世代無線通信規格として、LTEには大きな期待がかかっている。2010年のLTEネットワークの商用化に向けて、技術者は開発中のLTE端末や基地局に対してさまざまな試験シナリオを適用し、単体試験や結合試験、小規模な実地試験を行っているところだ。では、新たな規格であるLTEに対応した機器の開発では、従来とは異なるどのような測定手法や試験装置が必要になるのだろうか。

[Reiner Goetz/Anne Stephan/Meik Kottkamp (ドイツRohde&Schwarz社),EDN]

新規格にかかる期待

 新しい無線通信技術であるLTE(Long Term Evolution)の規格は、国際標準規格である3GPP(Third Generation Partnership Project) Release 8の一部として2009年3月に完成した。LTEは、GSM(Global System for Mobile Communications)/EDGE(Enhanced Data GSM Environment)、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)/HSPA+(High Speed Packet Access Plus)、CDMA2000/EV-Do Rev.Aといった従来の無線通信技術を拡張したものである。LTEは、エンドユーザーに対して伝送速度やネットワーク容量の向上、遅延の大幅な改善を約束する。また、ネットワーク事業者にとってもLTEは有益なものである。ウェブの閲覧やゲーム、映像配信などのサービスを効率的かつ安価に提供できるようになるからだ。また、新しい移動通信サービスの門戸が開かれることも期待される。

 こうした中、28カ国、59の事業者がLTEの導入計画を発表しており、2010年には多くの商用ネットワークの運用が開始される予定である。それに向けて、LTE関連製品/設備のメーカーや販売業者は、デバイスの単体試験、2〜3の基地局と他社のユーザー端末を含めた小規模な実地試験など、さまざまな試験を実施している。多数の基地局と相当数のLTEユーザー端末を使った大規模な試験ネットワークにより、ユーザーの視点での利用試験も行われている。

 LTEの開発や試験には、新たにどのようなことが求められるようになっているのか。また、どうすれば実験室の中でもLTEの性能を適切な方法で評価したり、効果的に検証したりすることが可能になるのだろうか。

現3GPP規格とは異なるもの

 3GPPのメンバーは、既存の技術をベースとしてLTEの規格を策定した。LTEと既存技術には多くの相違点がある半面、共通点が多いのも当然のことだと言える。例として、パケット通信技術として定着しているHSPA+と比べてみよう。LTEでは、基地局からユーザー端末にデータを伝送する際のリソース割り当ては、HSPA+と同様にユーザー端末からの応答によって決まる。ユーザー端末は通信チャンネルの受信品質を確かめた上で、割り当て可能な最大のリソースサイズを基地局に通知する。相違点の1つは、LTEではHSPA+よりもかなり応答が速いことだ。HSPA+のTTI(Transmission Time Interval)が2ms、W-CDMAが10msであるのに対し、LTEのTTIは1ms。すなわちLTEでは、1msごとに電波状況に応じて伝送速度を変更できるのである。

図1 OFDMAの概念図 図1 OFDMAの概念図 LTEが採用するOFDMAは、15kHzのサブキャリアを数多く用いることによってリソースの細かい割り当てを可能にする。

 LTEと現在の3GPP規格の最大の違いは、無線インターフェースの実現方法にある。LTEはOFDMA(直交周波数分割多元接続)とMIMO(Multiple Input Multiple Output)を採用しているほか、フラットなIP(Internet Protocol)ネットワーク構造を利用している。OFDMAの特徴は、リソースを細かく割り当てられることだ。この特徴は、GSMの帯域幅が200kHz、W-CDMAが5MHzであるのに対し、LTEは15kHzと狭いサブキャリア(副搬送波)を数多く用いていることによる(図1)。OFDMAに加えて、20MHzの最大チャンネル幅と4本の送信/受信アンテナを採用したことが、高速かつ大容量にという要求を満たすための最低条件だったと言えるだろう。

 また、LTEでは論理チャンネルと物理チャンネルのマッピングを大幅に簡略化している。これは、専用チャンネルを共用チャンネルに置き換え、MAC(Media Access Control)レイヤーのエンティティとRRC(Radio Resource Control)状態の数を減らすことで実現した。一方、プロトコル内の並列プロセスの数は増加した。MIMOを使えば、複数のデータストリームを結合することができる。暗号化機能も変更された。LTEでは、eNodeBとMME(Mobility Management Entity)は別の暗号キーを使用する。また、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤーとNAS(Non-Access Stratum)レイヤーにおけるデータの暗号化方法も異なっている。ちなみに、W-CDMAでは、NASレイヤーはまったく暗号化されていない。

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