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試験の観点から見たLTE対応システムの開発に必要なものとは?(2/5 ページ)

» 2010年09月01日 00時00分 公開
[Reiner Goetz/Anne Stephan/Meik Kottkamp (ドイツRohde&Schwarz社),EDN]

開発/試験の流れ

 LTEをどのようにネットワークに組み込むかということも重要になる。当初から、LTE対応のユーザー端末の開発はタイトなスケジュールで進められてきた。機器メーカーは、LTEの仕様の中核が完成する前から、仕様の未完成の部分を自社による仮定に基づいて補完し、独自のプロトコルを作り込んでいた。メーカーの当初の目標は、LTEの機能と利便性をできるだけ早く示すことだった。それに対し、現在では、開発期間を短縮し、LTE製品をいち早く市場に投入することが目標となっている。

 LTEの複雑さは、多くの問題の要因となる。なぜならほとんどの場合、LTEの機能は、W-CDMAやCDMA2000、GSMなどの機能と一緒にユーザー端末に搭載されるからだ。複数の方式を1つの端末に実装すると、多様なハンドオーバーのシナリオが必要になる。設計者は、そのすべての試験を行わなければならない。さらに、LTEのユーザー端末には、LTEとは異なるタイプの技術を用いているWi-FiやGPS(全地球測位システム)、Bluetoothなどに対応することも求められている。

 携帯電話機の開発者は、開発の各段階を並行して進められるよう、モジュールを再利用する方法を検討している。ただし、その場合、開発のできるだけ早い段階でモジュール単体の試験を行うことが必要になる。結合した際に起こるであろう不具合を最小限に抑えること、また、その後の実地試験で問題が発生するのを防ぐことがその目的だ。従って、使用する試験/測定装置は、各レイヤーや機能モジュールを、単体で動作させたりバイパスしたりすることが可能なものでなければならない。

 LTE開発の重要な要素として、上りリンクと下りリンクの伝送速度がある。言うまでもなく、ユーザー端末における伝送速度は非常に重要な項目である。メーカーは性能を評価するために、RLC(Radio Link Control)レイヤーとMACレイヤー上でACK/NACK(Acknowledgement/Negative Acknowledgment)の評価試験を行う必要がある。

 設計者はMIMOのさまざまなモードを使用して、要求された伝送速度を実現することができる。従って、試験/測定装置もこうしたMIMOのモードに対応していなければならない。また、複数のアンテナに接続できるだけでなく、フェージングチャンネルのシミュレーションも可能であることが要求される。このような条件を満たさなければ、実環境下での受信器の機能を試験することはできないからだ。

 LTEは可変帯域と地域ごとに異なる17の周波数帯をサポートしていることから、さらに幅広い試験が要求される。例えば、開発者は試験のために電力レベルの制限値を示す必要がある。高い周波数帯において受信周波数と送信周波数が近い場合の試験では、制限値が異なる可能性があるからだ。

図2 LTE端末の開発の流れ 図2 LTE端末の開発の流れ LTE製品の量産に向けて、開発段階ではさまざまなモジュール単体テスト/結合テストが行われる。

 こうした複雑さを抱えているため、LTE端末では回帰テスト(リグレッションテスト)を繰り返し行う必要がある。例えば、ソフトウエア開発時の試験や実際の電波環境下での耐久試験を毎日行うといった具合だ。試験装置が高度な自動化機能や遠隔操作機能を備えていれば、容易に、かつ効率的に回帰テストを行うことができる。測定の目的は、開発者が仕様を正しく実装しているかどうかを検証するだけにとどまらない。仕様の解釈に差が生じた場合には、モジュールの安定性や堅牢性にまで測定項目が及ぶこともある(図2)。

 開発の最終段階では、認証試験システム上で適合試験を行う。開発者は完成したユーザー端末に対し、3GPPの規格適合試験として、決められた数の試験を行う必要がある。この試験により、プロトコルやRF性能がLTEの規格に適合していることが公式に実証されたことになる。

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