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電池で駆動可能なツェナー電圧計測回路Design Ideas

ツェナーダイオードのツェナー電圧(降伏電圧)を計測するには、そのツェナー電圧よりも高いDC電圧が必要である。加えて、負荷に流れる電流についても考慮しなくてはならない。

» 2010年10月01日 00時00分 公開
[Vladimir Oleynik (ロシア),EDN]

 ツェナーダイオードのツェナー電圧(降伏電圧)を計測するには、そのツェナー電圧よりも高いDC電圧が必要である。図1において、抵抗RSERによりDC電圧IINからツェナー電圧VZENまでの降下電圧が決まる。そしてRSERには、ツェナーダイオードが逆方向の降伏状態を安定して保持できるだけの電流IZENを流す必要がある。加えて、負荷に流れる電流ILOADについても考慮しなければならない。そうしなければ、VZENの値は安定せず、スペックシートに書かれたツェナー電圧の値を下回ることになる。さらに、ツェナーダイオードが計測時に消費する電力がスペックシートに定められている値を超えないようにもしなければならない。


図1 ツェナー電圧計測の原理 図1 ツェナー電圧計測の原理 ツェナーダイオードを流れる電流により、その両端に一定の電圧が生じる。
図2 ツェナー電圧の計測回路(その1) 図2 ツェナー電圧の計測回路(その1) LEDドライバが計測対象のLEDに電流を供給する。

 図2の回路は、1個または2個の単3/単4型電池を使用することで、20V〜25V程度のツェナー電圧を計測できるようにするというものだ。この回路の心臓部は米Diodes社のLEDドライバ「ZXLD381」である。これは、主として1.5V/1.2Vの電池で駆動することを前提とした製品であり、10Vの入力電圧にまで対応できる。

 図2の回路では、このLEDドライバからの出力パルスにより、10μFのコンデンサC1を充電する。C1としては、リーク電流の少ないものを使用しなければならない。このC1の充電電圧により、抵抗R1を介して被測定物であるツェナーダイオードDTESTに定電流が流れる。2つの出力をそれぞれデジタルマルチメーター(DMM)のV端子とCOM端子に接続し、スイッチS2を図2に示すよう下側にすることにより、ツェナー電圧を計測することができる。

図3 ツェナー電圧の計測回路(その2) 図3 ツェナー電圧の計測回路(その2) 2つのLEDドライバを直列で動作させることにより、より高いツェナー電圧を計測できる。

 20V〜25Vのレベル以上のツェナー電圧を計測したい場合には、LEDドライバを追加すればよい(図3)。スイッチS2.1、同S2.2が上側の位置にあると、両方のLEDドライバが直列に接続され、0.7mAの電流によって約40Vまでのツェナー電圧が計測できる。一方、S2.1、S2.2が下側の位置にあれば、両方のLEDドライバは並列に接続され、数mAの電流によって約20V〜25Vのツェナー電圧の計測が可能になる。

 D3の赤色LEDは抵抗R1とツェナーダイオードDTESTを流れる電流を視覚的に表示するために設けたものである。これは、流れる電流が多くなるほど明るく発光する。このような表示が必要なければ、D3は取り除いてかまわない。なお、このD3により、約1.8V〜2Vの電圧降下が生じる。

写真1 図3の回路の実装例 写真1 図3の回路の実装例 ツェナーダイオード両端の電圧をDMMで計測している。

 写真1は、図3のツェナー電圧計測回路を実装した例である。計測中のツェナーダイオードは米ON Semiconductor社の「BZX55C15RL」であり、そのツェナー電圧は13.8V〜15.6V。写真1でDMMに表示されている14.95Vという電圧は2.8mAの電流を流して計測したものである。

 なお、図3に示す回路を使えば、各種発光色のLEDのテストも行える。それには、ツェナーダイオードの代わりに、テストしたいLEDを順方向のバイアスがかかるように接続し、スイッチS2.1、S2.2を下側の位置にする。この回路は高効率であることから、数mAの電流で発光の始まる高輝度LEDを点灯させることも可能である。

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回路 | LED | ダイオード | LEDドライバ


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