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進化する組み込み向け計測技術(3/4 ページ)

» 2010年10月01日 00時00分 公開
[Rick Nelson,EDN]

■Agilent社

 ESCに参加しなかった大手計測装置メーカーに、米Agilent Technologies社がある。同社のオシロスコープ部門でシニアプロダクトマネジャを務めるJoel Woodward氏は、ミッドレンジクラスのオシロスコープ「InfiniiVision 7000」や組み込みシステム市場向けのミッドレンジのオシロスコープ「Infiniium」シリーズを担当している。同氏は、Agilent社がESCに出展しなくなった理由として、「見込み顧客に対しては、インターネットを使って売り込む方法が、最も費用対効果が高いことがわかった」と述べ、遠隔地からウェブブラウザを用いてアクセスできる機能を備えている測定器を例に挙げた。この場合、見込み顧客は展示会に足を運ばなくても、遠隔地からその測定器を動作させたり、すべての機能のデモを見たりすることができるという。

写真3Agilent社の「ウェッジ・プローブ・アダプタ」 写真3 Agilent社の「ウェッジ・プローブ・アダプタ」 ウェッジ・プローブ・アダプタは、その名のとおり、くさび型のものとなっている。基板に狭い間隔でICが実装してある場合でも、ICの端子同士をショートさせることなく接続することができる。

 Woodward氏は、「もし当社がESCに参加していたとすれば、ロジックアナライザとオシロスコープを展示したと思う。これらの測定器が採用している技術は、複数の市場に適用できるからだ」と続けた。このほかに、同社はおそらくプローブ技術も披露しただろう(写真3)。何を測定するにせよ、基板上の信号にアクセスできなければならないケースが生じ得るので、プローブ技術も重要だ。

 また、Agilent社はFPGA向けの製品を重視する考えだ。FPGAの市場は1990年代初めこそニッチなものだったが、現在は30億米ドルの規模にまで成長した。Woodward氏は、「FPGAは、医療や民生、産業、航空宇宙/防衛のほか、モバイルコンピューティングなども含めた組み込みシステムでも、非常に重要なデバイスとなってきている」と語る。Agilent社は、FPGAを使った組み込みシステムの設計者向けに「ダイナミックプローブ」を提供している。これは、FPGAの外部端子を用いてFPGA内部の信号のモニターを可能にするというものである。

画面1「Infiniiumシリーズ」を用いたシリアルバスの解析画面 画面1 「Infiniiumシリーズ」を用いたシリアルバスの解析画面 シリアルバスは、多くの場合、デバッグ時の重要なアクセスポイントになる。Agilent社のオシロスコープInfiniiumシリーズは、プロトコルレベルのトリガー設定のほか、I2CやPCIeなど15種類以上のシリアルバスに対応するデコード機能を備えている。同社の最新プロトコル解析アプリケーションは、JTAG(IEEE1149.1)をサポートしている。

 Agilent社がESCに参加していたら、メモリーやシリアルバスに関連する技術も披露していただろう。Woodward氏は、「DDR(Double Data Rate)メモリーは組み込み市場にすっかり定着した。多くの組み込みシステム開発グループがDDRメモリーを使用しているため、それにかかわる評価やデバッグの方法については早急な対応が求められている」と指摘している。対象となる製品には、物理レイヤー/プロトコルレイヤーの解析に用いるオシロスコープやロジックアナライザがある。Woodward氏は、I2CやSPIといった低速シリアルバスに対するニーズが遍在することについては、LeCroy社やTektronix社と同意見だ。このほか、組み込みシステムでは高速バスも使われるようになってきた(画面1)。Agilent社は約20種類のプロトコル解析用製品を提供しており、その多くはオシロスコープと接続して使うことができる。

ソフトウエア企業の取り組み

 ソフトウエアメーカーも、組み込みシステムの試験に向けたソフトウエアパッケージを開発し、顧客の期待に確実に応えようとしている。事実、ESCには、計測装置メーカーだけではなく、ソフトウエアメーカーも出展していた。ここでは、組み込みシステム向けソフトウエアツールスイートを提供する米Kozio社の例を紹介しよう。

 Kozio社は、ESCにおいて、設計検証用、製造試験用、実地試験用の各種ソフトウエアのアピールに力を入れていた。同社の共同創設者の1人で最高事業開発責任者を務めるJoseph Skazinski氏は、「当社のツールスイートは、回路基板上のさまざまなデータパスを扱えるほか、機能領域をまたがる標準化された診断テストを提供している」と説明した。また、同社のツールスイートは、ユーザーに最大限の制御手段を与えながら、高速かつ自動的にトラブルシューティングが行えるようになっている。Skazinski氏によると、「このツールスイートを使えば、テストに関する開発とデバッグに顧客が費やすコストをプロジェクト当たり10万米ドル削減できる上、開発期間を3カ月短縮可能だ」という。

 Kozio社のツールスイートは、ますます複雑化する回路基板の設計に取り組む技術者を支援してくれる。Skazinski氏は、「回路基板の平均寸法は、この15年間で101平方インチ(約650cm2)から75平方インチ(約480cm2)に縮小した」とする米Mentor Graphics社のデータを挙げた。一方で、部品数は649個から3399個に、端子数は4214本から1万3505本に、端子間接続の本数は5190本から1万960本に増加しているという。その上、設計者は、厳しい開発スケジュールや限られた資産、設計部門と製造部門の緊密度の薄い仕事の進め方、遠隔部門との協働などにも対処しなければならない。

 Kozio社の設計検証用ツールは、対話型デバッグ機能のほか、不具合個所の特定機能、リグレッションテストなどをサポートしている。製造試験用ツールは、並列試験やIP(Intellectual Property)保護に対応しており、製造受託会社もこれらのツールを利用できる。実地試験用ツールは、BIST(Built-In Self Test)や診断プログラムをサポートしている。また同ツールは、メモリーやデータバス、ユーザーインターフェース、ディスプレイ、カメラのほか、音声機能やネットワーク機能、無線通信機能にも対応できる。

 Kozio社は、米Applied Micro Circuits社のストレージプロセッサ「PowerPC 460GTx」および「同460SX」に対応する診断用ソフトウエア「kDiagnostics Design Suite」の拡張版を発表している。また、同社は2010年3月、米Texas Instruments社の新しいアプリケーションプロセッサ「OMAP 4」に対応することを明らかにした。

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