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残響音を忠実に反映する音声サラウンド技術、NTTエレクトロニクスが開発

» 2010年11月10日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 NTTエレクトロニクスは2010年11月、東京都内の「アキバシアター」で会見を行い、残響音を忠実に反映した2チャンネル(ch)サラウンド再生を可能にするオーディオ技術「HIFIREVERB(ハイファイリバーブ)」を開発したと発表した。2010年末までに、民生用音響機器向けの開発に用いる評価用コードの提供を開始する予定。2011年春には、同技術を搭載した業務用機器を発売する計画だ。


写真1 NTTエレクトロニクスの倉員桂一氏 写真1 NTTエレクトロニクスの倉員桂一氏 

 NTTエレクトロニクスのデジタル映像事業本部 第一製品事業部の事業部長を務める倉員桂一氏(写真1)は、「当社がこれまで扱ってきた製品は、通信機器と映像関連機器に限られていた。今回のHIFIREVERBの投入により、デジタル音響の分野にも事業分野を拡大することになる。3つ目の事業の柱として、今後も注力していきたい」と語る。

 HIFIREVERBは、主に2つの技術から構成されている(図1)。1つ目は、通常の音声データについて、歌手や演奏者などから発生する直接音と、その直接音が音楽ホールなどの演奏会場で響くことにより発生する残響音を分離する残響制御技術「Revtrina」である。Revtrinaを用いることで、既存のステレオ/モノラルで録音した音声データを、5.1chサラウンド化することが可能になる。なお、Revtrinaは、NTTコミュニケーションズ科学基礎研究所が開発した。2つ目は、ダイマジックが開発した、5.1chサラウンドの音声データを、2chサラウンド再生用の音声データに変換する技術である。なお、2chサラウンド再生とは、通常は5.1chで行う音響のサラウンド再生を、2台のスピーカで構成されるステレオ機器でも体感できるようにするというものである。具体的には、元となる音声データに対して、2台のスピーカでも音響がサラウンド再生で聴こえるように感じる仮想音源を組み込んだ音声データを生成することになる。

図1 「HIFIREVERB」の構成 図1 「HIFIREVERB」の構成

 これら2つの技術を用いた音声データの変換処理は、DSPを用いてリアルタイムで実行することが可能だ。変換処理に必要な能力は、「100MIPS(1秒間に100万回の命令を処理する能力)を少し下回る程度」(NTTエレクトロニクス)である。現時点で、HIFIREVERBに対応するDSPは、米Analog Devices社の「SHARC」と「Blackfin」のみとなっている。また、民生用音響機器の開発に用いる評価用コードの提供は、Analog Devices社の日本法人アナログ・デバイセズと、同社の販売代理店を経由して行う方針だ。

 HIFIREVERBの利用法としては、2つの方向性が想定されている。まず、放送局や楽曲の制作を行う企業が、HIFIREVERBとDSPを搭載した機器を用いて収録した音源を2chサラウンド化する用途である。もう1つは、既存のステレオ/モノラルで収録されている音源(CDやレコードなど)を2chサラウンド化する機能をAVアンプなどに搭載する用途だ。

 会見では、米THX社の音響に関する認定を取得しているアキバシアターの音響設備を利用したデモンストレーションが行われた。そのデモでは、1973年に東京厚生年金会館大ホールで録音された美空ひばりさんのコンサートのステレオ音源について、直接音と残響音を分離してそれぞれ再生した。さらに、直接音と残響音から5.1chサラウンドの音声データに変換したものを再生した後に、5.1chサラウンドの音声データを2chサラウンドの音声データに変換したものを再生する例が示された。

(朴 尚洙)

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