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» 2010年12月01日 00時03分 UPDATE

1GHz〜4GHz帯域品は充実一途:過熱するミッドレンジオシロ市場 (1/3)

ハイエンドのオシロスコープ市場では、“業界最高”の称号を得るべく、激しいスペック競争が繰り広げられている。しかし、多くのユーザーにとって現在いちばん注目すべきなのは、1GHz〜4GHzの帯域をサポートするミッドレンジ品であろう。実際、計測器メーカーは、このランクの製品についても注力しており、ユーザーには非常に幅広い選択肢が提供されるようになっている。

[Rick Nelson,EDN]

安定した市場

 計測分野の主要メーカーは、互いに競い合って、記録的な周波数帯域を実現するオシロスコープ製品を開発している。そうしたハイエンドの製品が、業界で大きな注目を集めているのはある意味当然のことである*1)。しかし、実際には、最大周波数帯域が1GHz〜4GHzのミッドレンジのオシロスコープでも、必ずしも要求レベルの低くない多くの用途に対応することができる。そして、このようなミッドレンジのオシロスコープのメーカーは、トリガー機能や、波形の取得機能、データの解析機能、プローブのオプション、ユーザーインターフェースなど、さまざまな機能を組み合わせた製品を開発している。それにより、ユーザーの現在の用途に必要な機能/性能のレベルを満たすとともに、将来のより厳しい要件にも対応できるだけの余裕を持った製品を、適切な価格で選択できるようにしている。

 1GHz〜4GHz程度の帯域をサポートするミッドレンジのオシロスコープの市場は、メーカーにとっては非常に魅力的なものである。ドイツRohde&Schwarz(以下、R&S)社のテスト/測定部門は、2010年6月に発表したミッドレンジのオシロスコープ製品により、この市場への新規参入を果たした。それらの新製品を発表する記者会見で、同社の最高経営責任者(CEO)を務めていたMichael Vohrer氏(現在は退任)は、「当社はこれらの時間ドメイン製品によって新たに市場に参入したわけだが、このことは、周波数ドメイン製品の市場における当社のシェアを拡大することにもつながる」と述べた。その上で同氏は、「オシロスコープの市場は10億米ドルの規模。非常に多様な顧客が存在するため、ほかの市場よりも安定している」と付け加えた。

 R&S社が発表した新しいオシロスコープ「RTOシリーズ」には、帯域が1GHzのモデルと2GHzのモデルがある。しかし同社は、それ以下の帯域に対応していないわけではなく、500MHz帯域の「RTMシリーズ」もRTOシリーズと同時に発表している。これら2つのシリーズにより、最も大きな市場である500MHz〜2GHzの製品分野に対応するということである。

 米Frost&Sullivan社でテスト/測定担当のシニアリサーチアナリストを務めるPrathima Bommakanti氏も、この市場が重要だという意見に同意する。同氏は、「米Tektronix社や米Agilent Technologies社といった大手企業も、500MHz〜2GHz帯域のミッドレンジ製品分野を、確実な需要のある市場だと見込んでいる」と述べる。また、Bommakanti氏の調査からは、8000〜2万米ドルで販売される500MHz〜2GHz帯域のオシロスコープに一定の需要があることが明らかになっているという。

有力企業の参入

写真1「RTOシリーズ」 写真1「RTOシリーズ」 R&S社は、このRTOシリーズによってオシロスコープ市場に参入した。同シリーズには、2チャンネル版と4チャンネル版があり、帯域は1GHzまたは2GHzである。サンプリングレートは10Gsps。タッチスクリーン方式のユーザーインターフェースをサポートする。

 R&S社の製品は、ミッドレンジのオシロスコープとしては後発となる。では、先行するメーカーと勝負するために、同社の製品はどのような特徴が盛り込まれているのだろうか。

 R&S社のRTOシリーズには、サンプリングレートが10Gsps(ギガサンプル/秒)の2チャンネル版と4チャンネル版がある(写真1)。そしてRTOシリーズは、タッチスクリーン方式のユーザーインターフェースをサポートしている。一方、帯域が500MHzのRTMシリーズは、サンプリングレートが5Gsps。タッチスクリーン方式のインターフェースは備えていないが、素早く測定が行えるように、7秒以内での起動を実現している。RTMシリーズの価格は5000ユーロ(約57万円)から、RTOシリーズは1万2000ユーロ(約138万円)からとなっている。

 実は、R&S社が時間ドメインの製品分野に参入するのはこれが初めてではない。同社は2005年に、ローエンドのオシロスコープのメーカーであるドイツHAMEG社を買収した。HAMEG社は引き続き、およそ4000ユーロ(約46万円)以下の価格帯のオシロスコープを供給している。R&S社のテスト/測定部門は、同社直属の営業部門によって、帯域が500MHz以上で価格が4000ユーロ以上のオシロスコープの市場を対象にするという関係にある。

 R&S社でスペクトルアナライザ/ネットワークアナライザ/EMC(電磁両立性)テスト/オシロスコープの部門を率いるJosef Wolf氏は、2010年6月の記者会見で、RTOシリーズの開発活動についてコメントした。その開発では、アナログ、ミックスドシグナル、デジタルの各サブシステムのハイレベルな集積に焦点を当てたという。特に大きな目標は、低ノイズのアナログフロントエンドを実現することだった。この目標に向けて、同社は、SiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスで製造したシングルコアのA-Dコンバータを採用した。そのA-Dコンバータは、サンプリングレートが10GHzでENOB(有効ビット数)が7以上というものである。また、1500万ゲートから成る90nmプロセスのASICによって、ハードウエアベースでデジタル信号処理機能を実装し、100万回/秒の波形更新レートを実現した。

 また、RTOシリーズでは、2GHz帯域のハイエンドモデルにおいて純粋なデジタルトリガーシステムを採用し、アナログトリガーとソフトウエアによる補償処理だと生じる可能性のある整合誤差をなくしている。同社によると、RTOシリーズのトリガージッターは、ps(ピコ秒)レベルではなく、fs(フェムト秒)レベルであるという。加えて、デジタルトリガーでは、アナロググトリガーで問題となるリアーム動作による遅延時間が存在しない。この遅延時間が原因で、アナログトリガーでは、トリガーの直後に生じたイベントが取得できない可能性がある。Wolf氏によると、RTOシリーズは、デッドタイム(ブラインド時間)が競合製品の最大1/20であり、間欠的に生じる問題の特定の面で優位性を持つという。

 R&S社のオシロスコープ新製品が、その価格、性能、機能によって、どれだけの市場シェアを獲得するかについては今後の動向を見守る必要がある。Frost&Sullivan社のBommakanti氏は、「2011年になれば、その様子がより明らかになるだろう」と述べている。ただし、同氏は現時点で、R&S社の新製品の競争力は高いと見ている。「R&S社の製品は、すでにこの市場でかなりの競争力を持っていると市場関係者らは見ている。汎用テスト機器市場を何年も調査してきたわれわれは、R&S社は、テスト/測定機器市場全体において品質の高さという同社のブランド力を生かすことができると考えている。オシロスコープは、同社の製品ラインアップに単に欠けていただけにすぎない」と同氏は説明する。

 R&S社のテスト/測定部門を率いるRoland Steffen氏によると、「当面、当社がオシロスコープの販売対象とするのは、当社の周波数ドメイン製品をすでに利用しており、さらにその帯域のオシロスコープも必要とする顧客だ」という。その後、既存の顧客以外への販売にも本格的に取り組むつもりである。


脚注

※1…Rowe, Martin, "Agilent introduces 32- GHz oscilloscope," Test & Measurement World, April 27, 2010


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