コラム
» 2011年01月01日 00時00分 UPDATE

Wired, Weird:ソレノイドバルブ用の節電回路

ソレノイドバルブは、電気信号をポンプなどを動かすための「エアー信号」に変換する部品だ。応答時間が短く、電気信号を機器内部で直接使わずにすむという利点がある。ただし、消費電力が大きいという課題がある。どうすれば解決できるだろうか。

[山平 豊 (ホックス(HOKS)),EDN Japan]

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 ソレノイドバルブは、電気信号をエアー信号に変換する部品である。このエアー信号は、装置のシリンダやポンプを動かすという役割を果たす。化学物質やガスを使用する装置では、それらを処理するユニット内に電気信号を取り込むと、それが原因で発火や漏電が起きることがある。そのため、電気信号ではなく、エアー信号によって装置を駆動したいというケースにソレノイドバルブを用いるのだ。

 もちろん用途にもよるのだが、各種装置では、多数のシリンダやポンプが使用される。その場合、複数のソレノイドバルブを並べて使用することになる。そして、ソレノイドバルブとしてどのような製品を用いるかという選択は、機械設計者によって行われることが多い。結果として、電気的な配慮が欠けてしまうこともある。

 筆者は、ソレノイドバルブに関するトラブルを何度か経験している。今回は、その中でも特に大きなトラブルとなった例を紹介する。

 ここで取り上げるのは、定格の消費電力が1Wのソレノイドバルブを8連にして使用した例である。15年ほど前の話になるが、このような構成でソレノイドバルブを利用した装置の開発が終了し、初号機を客先に納入した。それから半年ほど経過したころ、顧客から連絡があった。「ソレノイドバルブが異常に熱いし、モールドが剥離してしまっている」というクレームだった。状況を確認してみると、8連中5個のソレノイドバルブが常時動作しており、それらのうち隣り合ったバルブ間でモールドが剥離していた。また、その温度を測定すると120℃を超えていた。モールドの耐熱保証値は100℃程度であり、高熱によってモールドが剥離してしまっていたのだ。

図1 節電回路利用時の電力波形 図1 節電回路利用時の電力波形 

 筆者は、顧客への対応を迅速に行うために、ソレノイドバルブのメーカーの開発担当者と打ち合わせを行った。その結果は、「小型のソレノイドバルブを使用しているが、同等の大きさで消費電力が少ない製品を開発するにはかなりの時間がかかる」という返事だった。

 そこで、苦肉の策として、メーカーの技術者にソレノイドバルブの省電力化を図るための1つの案を提示することにした。ソレノイドバルブは、作動(バルブの移動)時には定格の100%の電力が必要となるが、その後は、30%程度の電力でバルブの位置を保持することができる。そこで、この要件に合わせて、ソレノイドバルブの中にタイマー回路を追加し、作動後には消費電流を減らすように動作シーケンスを変更しようと考えたのだ(図1)。

図2 ソレノイド用の節電回路 図2 ソレノイド用の節電回路 

 筆者は図2のような節電回路を考案し、タイマー回路を試作した。そして、この回路を実装する小型の基板をソレノイドメーカーに作ってもらい、それをソレノイドバルブに取り付けて、機能試験と連続動作試験を行った。その結果、ソレノイドバルブの温度は格段に下がり、動作試験でも問題はまったく生じなかった。

 発熱の問題が起きた装置は、初号機以降、いくつかの顧客に納入していた。そこで、全顧客先の装置のソレノイドバルブをこの節電回路を付加したものに無償で交換した。

 現在、そのメーカーは、標準品のほかに、図2に示した回路を備えたソレノイドバルブを「節電回路付き」とうたって販売している。クレームも拡販の材料にするとは、“転んでもただでは起きない”したたかなメーカーだと言えよう。

 この節電回路にはほかにも特徴がある。それは、100%の電力から30%の電力へ切り替えるときに、ソレノイドバルブからのノイズの発生を非常に少なく抑えられることだ。この電力の切り替えを行う際には、トランジスタの動作に数msの時間がかかる。そのため、ソレノイドバルブの電流の変化は比較的緩やかなものとなり、ソレノイドバルブの逆起電力の発生が小さくなるからである。また、バルブの位置を保持している状態では、ソレノイドの消費電力が30%に減っている。そのため、その状態から電流を完全に遮断した場合でも逆起電力は小さい。さらに、外部への接続は抵抗R1を介する形になるので、周囲へのノイズの影響がかなり小さくなった。なお、この節電回路は、リレーなどのコイル部品を使った回路にも水平展開することができる。

図3 改良版の節電回路 図3 改良版の節電回路 

 この節電回路は、15年以上も前に設計したものである。現在では、当時使っていたnpn型のトランジスタよりも、この用途にもっと適したFETが販売されている。そこで、FETを使って改良した、ソレノイドバルブ用の節電回路を紹介する(図3)。

 この回路は、シンプルな微分回路を利用することで、ソレノイド駆動時の節電を実現する。電源が接続されると、抵抗R1、コンデンサC1、抵抗R2の効果によって電圧の微分波形がQ1のゲート電圧に印加される。それにより、Q1は約60msの間オンになる。Q1がオンになると、ソレノイドL1に電流が流れ、バルブが作動する。その後、数msの時間をかけて、Q1はオンからオフに移行する。その結果、L1を流れていた電流はLEDと抵抗R3に流れ、30%程度にまで減少する。このとき、ソレノイドに流れる電流は比較的穏やかに変化するので、ほとんど逆起電力は発生しない。その後、ソレノイドの電流を遮断しても、その際に発生する逆起電力はダイオードD1によって吸収される。

 この回路は、図2の回路と比較して3つのメリットを持っている。1つは、部品点数を削減できることである。図2の回路では、タイマー回路の部分に、トランジスタ1個を含めて少なくとも3点の部品が必要だった。従ってソレノイドも含めて計9点の部品が必要になる。それに対し、図3の回路ではソレノイドを含めて8点になり、部品点数を1つ減らせる。また、高価なトランジスタは1個で済む。

 2つ目のメリットは、LEDで消費される電力を削減できることである。LEDの電流は、ソレノイドの電流から得るので、LEDで消費される分の電力は保持電力に含まれることになる。図2の回路で、LEDにかかる電圧/電流が2V/25mAであったとすると、図3の回路では50mWの電力が削減できることになる。

 3つ目は、電源仕様の改善である。FETはオン抵抗が非常に小さく、オンしている際の両端の電圧はほぼ0Vになる。そのため、この節電回路を付加しても、ソレノイドバルブを通常の場合と同じ電源仕様で使えることになる。

 この節電回路も、ソレノイドに限らず、リレーやプランジャなどの部品に適用できる。また、この回路の基板は数mm角程度の大きさに抑えられる。そのため、ソレノイドを使用した既存の回路に容易に付加することができ、節電に役立てることが可能である。

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