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フライバック用の電源コントローラIC、100W〜200Wのスイッチング電源の効率を向上

» 2011年01月24日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 米Fairchild Semiconductor社は2011年1月、PFC(力率改善回路)とPWM(パルス幅変調)の制御機能を備える電源コントローラICの新製品「FAN6920MR」を発表した。AC-DC変換回路としてフライバック方式を用いるスイッチング電源向けの製品で、定格電力が90W〜200Wのときに、LLC(コイル/コイル/コンデンサ)共振方式によるAC-DC変換を行うスイッチング電源よりも効率を高められることを特徴とする。主に、LEDバックライトを用いた液晶テレビや、ノート型パソコンの小型ACアダプタ、屋外用LED照明などの用途に向ける。1000個購入時の単価は、0.82米ドル。すでに量産を開始している。

 スイッチング電源のAC-DC変換回路は、定格電力が100W以下の場合にフライバック方式を、100Wより大きい場合にLLC共振方式が用いるのが一般的である。フライバック方式には、スイッチング電源のシステム構成が簡素であるという特徴がある。その一方で、100Wを上回るような高い定格電力を持つスイッチング電源では、高い効率が得られないという問題があった。このため、定格電力が100Wより大きいスイッチング電源には、LLC共振回路が用いられてきた。

図1 デュアルスイッチフライバックを用いたPFC付きスイッチング電源 図1 デュアルスイッチフライバックを用いたPFC付きスイッチング電源 

 これらに対して、FAN6920MRは、フライバックトランス部におけるスイッチングを2個のFETを使って行う「デュアルスイッチフライバック」に対応している。図1は、デュアルスイッチフライバックを用いたPFC付きスイッチング電源の回路ブロック図である。FAN6920MRは、図中の昇圧型コンバータ(Boost Converter)とデュアルスイッチフライバックコンバータ(Dual Switch Flyback Converter)の部分の制御用回路を集積している。フライバックトランスの入力部のハイサイドとローサイドにスイッチング用のFETが配置されている点がこの手法の特徴的なところである。この手法を用いることにより、システム構成が簡素なことを特徴とするフライバック方式を用いながら、定格電力200Wまでのスイッチング電源において高い効率が得られるようになる。

 このほかにも、デュアルスイッチフライバックはさまざまな特徴を備えている。100W以上のスイッチング電源に広く用いられているLLC共振回路と比べると、入力電圧範囲をより広く取ることが可能で、過渡応答特性にも優れる。また、図1の右側にある同期整流回路に用いるFETを、2個から1個に削減できる。ただし、デュアルスイッチフライバックでは、ハイサイドのスイッチング用FETを駆動するためのドライバICが必要になる。Fairchild社は、「現在、駆動回路も集積した製品の開発も進めている」としている。

図2 漏れインダクタンスによる電力の回収 図2 漏れインダクタンスによる電力の回収  漏れインダクタンスの電力を回収する流れを青い矢印で示した。

 低負荷時の効率が高いこと、待機時の消費電力が少ないことも、デュアルスイッチフライバックの特徴として挙げられる。Fairchild社は、定格電力90Wの電源ボードについて、デュアルスイッチフライバックとFAN6920MR用いたものと、LLC共振回路と他社の電源コントローラICを用いたものを試作し、それらの評価を行っている。この評価において、AC電圧が115Vで負荷が25%の場合、前者の効率が91%であるのに対して後者は88.5%となった。そして、AC電圧が230Vで負荷が25%の場合、前者の効率が93%であるのに対して後者は88.5%であった。なお、負荷が50%以上の場合には、AC電圧の値にかかわらず、両者の効率はほぼ同じであった。また、定格電力が90W以上、200W以下の場合にも同様の特性が得られた。待機時の消費電力については、「LLC共振回路では実現が難しい0.3W以下という値を、デュアルスイッチフライバックでは容易に実現できる」(同社)という。

 デュアルスイッチフライバックは、通常の1個のスイッチを用いるフライバック方式と比べても利点がある。通常のフライバック方式では、スイッチがオフのときに、フライバックトランスからの漏れインダクタンスに対応するためのスナバー回路をFETに付加する必要がある。一方、デュアルスイッチフライバックでは、この漏れインダクタンスによって生じる電力を、ダイオードを介して昇圧型コンバータのコンデンサに充電することができる(図2)。Fairchild社は、「通常のフライバック方式では、漏れインダクタンスによる電力をスナバー回路から熱として逃がしていた。デュアルスイッチフライバックは、漏れインダクタンスによる電力を回収できるので、より高い効率が得られる。また、スイッチング用のFETとして、より安価な製品を用いることも可能になるだろう」としている。

写真1 小型ACアダプタ向けの品種を用いて試作した電源ボード 写真1 小型ACアダプタ向けの品種を用いて試作した電源ボード 

 FAN6920MRには、機器に内蔵するタイプのスイッチング電源向けの品種と、小型ACアダプタ向けの品種がある。先に述べた試作電源ボードには、機器内蔵タイプの品種を用いている。小型ACアダプタ向けの品種についても、定格電力が90Wの電源ボードを試作している。この電源ボードの外形寸法は95mm×60mm×16.5mmと小さい(写真1)。効率は、全負荷領域でほぼ90%以上を達成している。待機時の消費電力は約0.2Wであった。

(朴 尚洙)

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