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» 2011年02月01日 00時00分 UPDATE

抵抗/コンデンサ/コイルの基本を学ぶ(3):コンデンサの基本、選択のポイント

今回は、コンデンサを取り上げる。受動部品の中で、コンデンサほど種類の多いものはない。それだけ、アプリケーションに応じてコンデンサを適切に選択することが重要だと言える。本稿では、まずコンデンサの基本的な特性項目と種類別の特徴について説明する。さらに、各種用途においてどのようなコンデンサを選択すればよいのか、そのポイントを紹介する。

[河合一,EDN Japan]

コンデンサの特性項目

 コンデンサの純粋なインピーダンスZは、静電容量値(キャパシタンス)がCであればZ=−1/jωCとなる。実際のコンデンサには、キャパシタンスCに対して等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)と等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)が存在する。これらは、周波数、印加電圧などのパラメータによって変化する(『デカップリングコンデンサの選び方、使い方』も参照されたい)。

 一般的に、コンデンサの仕様としては、ある温度条件における容量値(と容量誤差)、定格電圧、誘電正接、ESR、インピーダンスなどが規定されている。加えて、特に電源系の用途では、リップル電流の許容値も示されている。以下、各特性項目について簡単に解説する。

  • 容量値/容量誤差

 静電容量値(単位はF)はコンデンサの最も基本的な特性項目である。規定の容量値に対する誤差が容量誤差であり、コンデンサの種類によって誤差の大きさは異なる。一般的には1〜20%程度の範囲で誤差が規定されている。また、通常、コンデンサの容量値は温度依存性を有するので、温度をパラメータとした容量値の変化については個々に確認/検証しなければならない。

  • 定格電圧

 コンデンサに印加可能な最大電圧(直流DC、交流AC、パルス波)のことである。これもコンデンサの種類によって範囲が大きく異なる。例えばアルミ電解コンデンサでは6.3V〜200V程度、フィルムコンデンサでは100V〜1000V程度となっている。

 実際にコンデンサを使用する際には、定格電圧ぎりぎりでの使用は避けるべきだ。一般的には定格電圧の70%〜80%での使用が推奨される。

  • 誘電正接/ESR/インピーダンス
図9 インピーダンス特性の概念 図9 インピーダンス特性の概念

 コンデンサの純粋な容量に対して、コンデンサを形成する材質、構造によって発生する抵抗分がESR、インダクタンス分がESLとして定義されている。ESRは抵抗と同じくΩを単位としており、jωCとESRとのtanが誘電正接(tanδ)として定義されている。当然、tanδが小さいほど理想的なコンデンサに近いものとなる。

 周波数がある程度高くなると、ESLの影響が現れてくる。静電容量Cは周波数が高くなるほど小さくなるが、逆にインダクタンスLは周波数が高くなるほど大きくなる。ESRに加え、静電容量CとインダクタンスESLとの総合的なインピーダンスが、コンデンサ全体としてのインピーダンス特性として規定される(図9)。すなわち、総合インピーダンスZは、以下の式で表される。

edn1102_RLC_eq01.jpg

 総合インピーダンスの絶対値|Z|は、以下の式のとおりだ。

edn1102_RLC_eq02.jpg

 コンデンサの種類にもよるが、製品のデーターシートには、周波数をパラメータとしたインピーダンス特性の曲線が示されている。これは目的に応じて確認/検証する必要がある。

  • インピーダンス比

 上述したインピーダンス特性は、周波数をパラメータとした曲線となる。それに対し、インピーダンス比は、温度に対する依存性、すなわち温度特性としてのインピーダンス特性を規定したものだ。通常、20℃におけるインピーダンスに対する特定の温度(低温)におけるインピーダンスの比が規定されている。特に記述のない限り、周波数の条件としては120Hzが用いられる。

  • 漏れ電流/絶縁抵抗

 コンデンサの誘電体は完全な絶縁体ではない。実際には、コンデンサに電圧を印加すると、微少ではあるが漏れ電流(リーク電流)が発生する。そのため、特定の条件における漏れ電流値が仕様として規定されている。あるいは、漏れ電流から換算した絶縁抵抗値が規定されている場合もある。一般的な漏れ電流値は数μA程度、絶縁抵抗値としては数100MΩ以上だが、微少電流の検出回路など、用途によってはこのレベルの漏れ電流が問題となる場合もあるので検証を要する。

  • リップル電流/リップル電圧

 リップル電流/リップル電圧とは、直流印加電圧に重畳される交流リップル成分の電流または電圧の許容値のことである。コンデンサの構造上、リップル成分は誘電体の温度上昇を生じさせる。このため、リップル量が規定値を超えると、規定の温度範囲を超えてしまうことになる。また、リップル電流/電圧の挙動は、コンデンサに対する充放電と見なすことができる。従って、リップル電流/電圧は、コンデンサの寿命(信頼性)にも影響することとなる。

  • リップル電流の周波数補正係数

 主にアルミ電解コンデンサに適用されている仕様である。ESRが周波数特性を有していることから、周波数をパラメータとしたものとなる。規定周波数(fo=120Hz)におけるESRをRo、リップル電流をIoとし、ある周波数fxでのESRをRx、リップル電流をIxとした場合、同じだけの温度上昇が生じる条件は、以下の式で定義される。

Io2・Ro=Ix2・Rx

edn1102_RLC_eq03.jpg

 この√(Ro/Rx)が、周波数補正係数として規定されている。多くの場合、電源系の回路での平滑用コンデンサにおいて検証されるべき仕様となる。

  • 充放電特性

 これも、主に電源系の回路で用いられるアルミ電解コンデンサの仕様である。コンデンサでは、構造上の理由から、充放電を繰り返すと温度上昇が生じる。また、コンデンサのパッケージ内にガスが発生し、限界を超えると圧力によってパッケージに穴が空いてコンデンサとしての機能を失ってしまう。そのため、充放電回数についての制限が規定されている。なお、この充放電回数は、稼働時間、印加電圧、周囲温度などの要素によって変動する。また、この特性に優れるものは、通常タイプに対して、長寿命タイプあるいは充放電回数対応タイプの製品として供給されている。

コンデンサの種類

 コンデンサの種類は、一般的には誘電体の材質によって分類されることが多い。誘電体の材質および構成/構造により、静電容量値/誤差、定格電圧、ESRといったコンデンサの基本性能が決定される。こうした違いが、用途に対する適/不適として現れる。

 主なコンデンサの種類としては、アルミ電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、有機半導体または導電性高分子を用いた電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサ、マイカコンデンサなどがある。さらには、特定用途向けのものとして電気2重層キャパシタといったものもある。また、形状からの分類では、リード型と表面実装型(チップ型)に分けられる。表3は、コンデンサの種類ごとに、それぞれの特徴をまとめたものである。以下、各コンデンサの特徴について簡単に解説する。

表3 コンデンサの種類 表3 コンデンサの種類
  • アルミ電解コンデンサ

 容量値が1μF〜10000μFの範囲で最も多く用いられている。用途も電源平滑、電源デカップリング、アナログ回路全般と広範である。同じアルミ電解コンデンサでも、各メーカーは用途別に多くの種類の製品を用意している。また、用途別に最適なコンデンサを容易に検索できるようになっているので、これを活用すべきである。

  • その他の電解コンデンサ

 導電性高分子(ポリピロール、ポリチオフェン)やタンタルを誘電体材料にした電解コンデンサも何種か存在する。これらの電解コンデンサは、アルミ電解コンデンサの欠点である温度特性(温度安定性、使用温度範囲)や寿命(信頼性)を向上させたものである。

  • フィルムコンデンサ

 フィルムコンデンサは誘電体として厚さ数μmのプラスチックフィルムを用いたものである。容量値としては、100pF〜1μFのものが主流となる。温度特性に優れていること、高い定格電圧に対応していることを特徴とする。プラスチックフィルム誘電体としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイドなどが用いられる。

 構造別に見ると、内部電極の金属箔間に誘電体フィルムを挟んだ箔タイプと、内部電極に金属箔を用いるのでなく、誘電体フィルムに金属を蒸着して内部電極とする金属蒸着タイプ(メタライズドフィルム)の2種類が存在する。

 フィルムコンデンサの用途は幅広く、比較的精度が要求されるアナログ回路やACカップリング(DCブロッキング)、比較的高い耐圧が要求されるスイッチング電源、インバータ回路などが挙げられる。

  • 積層セラミックコンデンサ

 積層セラミックコンデンサは、誘電体としてセラミック(高温で焼結させたチタン酸バリウム系、酸化チタン系)を用い、それと電極を交互に重ねる構造によって所用の容量値を得るというものである。その特徴は、小型化(チップ型)が可能であること、比較的定格電圧が高いこと、ESRが小さいこと、総合インピーダンス特性が小さいことである。1pFの微小容量のものから10μF程度のものまでが製品化されている。

図10 静電容量 図10 静電容量

 積層セラミックコンデンサは誘電体の誘電率により、高誘電率系と低誘電率系に大別される。いずれも容量値の温度変化が大きいが、材質と構造の管理により温度特性をコントロール可能であり、温度特性の変化率とその精度(誤差)がJIS、EIAなどで規格化されている。図10に、高誘電率系品の静電容量の温度特性の例を示した。図中のB特性、F特性がJISの規格区分である。低誘電率系では、+100ppm/℃(A型)、0ppm/℃(C型)、−150ppm/℃(P型)、〜−750ppm/℃(U型)など温度補償型のものも存在する。

 上述したように、積層セラミックコンデンサには、さまざまな種類の製品が存在する。このことは、用途に応じ、容量、耐圧、温度特性について検証するのが重要であることの裏返しでもある。

  • 電気2重層キャパシタ

 電気2重層キャパシタは、特定の誘電体を用いるものではない。固体(活性炭など)と液体(希硫酸水溶液など)を用いて、固体〜液体〜固体間の2層面(界面)で誘電体を構成する。数100mF〜1Fといった高い容量値を実現できることが最大の特徴だが、定格電圧は10V未満と高くない。主に携帯型アプリケーションにおけるバッテリバックアップ用途や、メモリーのバックアップ電源用途に用いられる。

用途に応じた選択のポイント

写真1 コンデンサの使用例 写真1 コンデンサの使用例

 回路や用途に応じて最適なコンデンサを選択するのは、非常に重要なことである。実際の回路で要求される特性(仕様)を満足することが第一の目標となるが、もちろん、実装条件やコスト面での検討も必要となる。電子回路のプリント基板を見れば、多くの種類のコンデンサが用いられていることがわかる。写真1はその一例である。これは日本テキサス・インスツルメンツのUSBコーデック「PCM2901/2903」の評価ボードの外観写真だが、8cm×8cm程度の小型基板にもかかわらず、非常に多くの種類のコンデンサが用いられていることが見て取れる。ここでは、3種類の用途に関して、コンデンサの選択のポイントを示しておく。

  • 電源関連

 電源平滑の用途には、アルミ電解コンデンサが最も多く用いられる。また、スイッチング電源やインバータ制御などにおけるノイズ吸収や回路動作を目的とする場合には、定格電圧の高いフィルムコンデンサが推奨される。比較的低い電圧(25V以下)の高信頼性電源の用途では、タンタル電解コンデンサが推奨される。

  • 電源デカップリング

 一般的な電源デカップリングには、アルミ電解コンデンサまたは積層セラミックコンデンサの使用が推奨される。なお、1μF以上の積層セラミックコンデンサは、そのインピーダンス特性から、アルミ電解コンデンサと小容量のフィルムコンデンサを並列接続して使用するケースの代替として使えることもある。

  • アナログ回路

 CR時定数を利用するアナログ回路(フィルタ回路、微積分回路、発振回路など)では、精度と温度特性の観点から、フィルムコンデンサまたは温度補償型の積層セラミックコンデンサが推奨される。また、高精度のアナログ回路では、容量精度の高いフィルムコンデンサを用いるとよい。オーディオ/ビデオ回路のACカップリングでは、アルミ電解コンデンサまたはフィルムコンデンサの使用が推奨される。

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