コラム
» 2011年04月01日 00時01分 UPDATE

Signal Integrity:インパルスの重ね合わせ

[Howard Johnson,EDN]

 筆者がスーパマーケットで買い物カートを押して歩いていたところ、後ろにいた小さな子供がキャンディやマンガの陳列された“刺激的なゾーン”に差し掛かった。すぐにその子は泣き声を上げ、駄々をこねて母親に物をねだり始めた。その直後に、隣の列にいた子供が同じ場所に着き、一緒になって泣き声を上げた。その耳障りな泣き声は、1人目の子だけのときの倍になった。それから少し間を置いて、もう1人の子供がやってきた。その子も同じような泣き声を上げた。

 筆者は、友人のChris "Breathe" Frue氏に語りかけた。「それぞれの子供は、その位置に順に到着し、いずれも同じように刺激される。それに対する反応がこのシステムのインパルス応答だ。もし、子供の流れが定常的に続くなら、同じ反応が繰り返し行われることになる」。

 「ずっとその調子だと、レジ係はたまらないだろうね」とBreatheは言った。彼はミュージシャンにして、オーディオ技術者でもあり、イコライザについて深く学びたいと望んでいた。

図1インパルスの重ね合わせ 図1インパルスの重ね合わせ 

 筆者は「子供たちがランダムな間隔で、あるいは連れ立って、刺激的なゾーンに到着する場合について考えてみよう」と言いながら、1枚の紙に、泣き声の強さと時間を軸とするグラフを描いた。そして、その上段部分に3本の曲線を描き加えた(図1)。「1人目の子がそこに到着し、標準のインパルス応答を示すと仮定しよう。それが赤色の曲線だ。次に、2人目の子供が到着したとする。どの子供も同じ標準的な反応を示すとすれば、そのときの鳴き声は2倍になるはずだ。この現象が重ね合わせってやつだね」と筆者は説明した。

 「じゃあ、3番目の曲線は時不変性を示しているのかい?」とBreatheが尋ねてきた。

 「確かに、その良い例だ」と筆者は答えた。「それぞれの子供が順に刺激的なゾーンにやって来て、その順番に反応すると仮定しよう。3人目の子供が遅れて着いたとすれば、その子の反応のピークは、母親がその子をどこかに連れていくまでの時間だけ正確に遅れていることになる。しかし、反応自体に変化はない。この現象が時不変性だ。このときの複合応答は、上段の3つの曲線を足し合わせたものになる」と、4つ目の曲線を下段に描きながら、筆者は説明を加えた。

 すると、Breatheは「君は、線形/時不変性システムが、スーパーマーケットでの子供と同じように単純に反応すると言うのかい?」と尋ねてきた。

 「私が言いたいのは、1つの短いパルス、つまりこの例で言えば、1人の標準的な子供の反応に相当するパルスによって、ある線形システムを励起すれば、そのシステムの応答特性が得られるということだ。これはインパルス応答と呼ばれている。そして、短いパルスがさらに続けて入力されたときの応答は、1つのインパルス応答を遅らせたり、スケーリングしたりして描いた応答を重ね合わせたものとして計算することができる」。

 「だけど、現実の信号は短いパルスが連続したものではないじゃないか」とBreatheは応じた。

 それに対して、筆者は「実は、短いパルスの連続なんだ」と答えた。「短いパルスの列を考え、それらの肩の部分が、先がとがった板の列のように互いにつながっている様子を思い浮かべてくれ。このとき、十分に短いパルス列を使えば、任意の信号を所望の精度で近似することができるんだ」。

 その上で筆者は言った。「どのようなシステムであれ、そのインパルス応答の波形には、線形システムの持つ情報のすべてが含まれている。その波形を計測すれば、システムの線形動作を理解するのに必要なことがすべてわかるんだ」。

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<筆者紹介>

Howard Johnson

Howard Johnson氏はSignal Consultingの学術博士。Oxford大学などで、デジタルエンジニアを対象にしたテクニカルワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次のアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com。


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