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» 2011年05月01日 00時03分 UPDATE

LCDを追随する有機EL、電子ペーパー:ディスプレイ技術の止まらない進化 (1/5)

液晶ディスプレイは、旧来型のブラウン管を置き換えるものとして、広範な用途で主役の座を射止めた。そして、液晶ディスプレイは、現在も継続的に改善されている。しかしながら、有機ELディスプレイや電子ペーパーなども、少しずつではあるが用途を拡大しつつある。では、それぞれのディスプレイ技術には、どのような特徴があり、どのような進化を遂げているのだろうか。

[Brian Dipert,EDN]

LCDは完全なる勝者か?

 ブラウン管ディスプレイから液晶ディスプレイ(LCD)への移行が急速に進んでいる。パソコンのモニターやテレビはもちろん、さまざまな携帯型電子機器でも小型のLCDが幅広く使用されるようになった。さらには、LCDを利用したデジタルサイネージなども次々に登場している。

 その一方で、LCDにはいまだに解消できていない欠点がいくつかある。例えば、リフレッシュレートが低いこと、応答時間が長いため残像が残りやすいこと、視野角に制限があること、コストが高いこと、直射日光や強い外光の下では視認性が低いことなどである。

 こうした欠点を克服し、LCDをさらに重要な技術として発展させるべく、メーカーは解決策を模索し続けている。従来のLCDの基本性能を大幅に向上することに注力するというのは1つの考え方であろう。だが、もっと飛躍して、超薄型の民生用電子機器では有機ELディスプレイを、電子書籍リーダーでは電子ペーパーを活用する意向を示しているメーカーもある。生産コスト、言い換えれば価格の面から見て、あらゆる用途に適しているディスプレイが理想的なのは確かだ。しかし、これまでの傾向から言えば、“決定版”とも言えるようなディスプレイ技術など存在しないことは明らかである。また、独創的なディスプレイ技術が現れ、その新技術がLCD技術に取って代わる可能性もあるだろう。

LCDの種類

図1 LCDの構造 図1 LCDの構造 LCDの構造はわかりやすい(a)。しかし、構造を少し変えると大きな違いが生まれる。RGBの3つのサブピクセルを使用する方法は、最も一般的なカラー表示形式である(b)。それ以外に、(c)の「PenTile」技術など、さまざまな形式がある。

 まず、LCD技術のこれまでの進化の過程について説明する。

 図1(a)は、LCDの基本構造を示したものである。2枚の偏光フィルタを偏光方向が直交するように並べると、バックパネルの反射板で反射された周辺の光(外光)やバックライトの自発光を遮り、黒色に見える画素列ができる。このように、光を遮るように偏光方向を直交させた偏光フィルタでねじれた液晶をはさんだものが、現在最もよく使用されている TN(Twisted Nematic:ねじれネマティック)型LCDである。

 TN型LCDでは、液晶分子が印加電圧に応じてさまざまな角度にねじれ、任意の量の光を通す。電界の正確な制御とリフレッシュパターン変調技術を組み合わせることで、各画素に対してすべてのグレースケール値を作り出すことができる。

 現在主流となっている駆動方式には、次の2種類がある。1つは、LCDの黎明期に普及したパッシブマトリックス駆動方式(単純マトリックス駆動方式)である。同方式を採用したLCDでは、格子の交差点に順次個別にアクセスし、リフレッシュされるまでの間は各画素の状態が保持されるようになっている。そのため、解像度が増して画面が大型化するに連れ、応答速度が遅くてコントラスト比が低いというLCDの欠点が、さらに目立つこととなった。

 次に登場したアクティブマトリックス駆動方式のLCDは、パッシブマトリックス駆動方式の構造に加えて、各画素にアクティブ素子を追加したものである。アクティブ素子としては、通常はTFT(薄膜トランジスタ)が用いられる。これによって、任意の画素を確実に点灯できるようになった。X電極が、ある画素のアクティブ素子をオンにした後、Y電極に電圧がかかると、オン状態の画素が点灯する。ディスプレイのリフレッシュは、すべてのX電極に対して順番に行うようになっている。

写真1 IPS型LCDを採用したApple社の製品 写真1 IPS型LCDを採用したApple社の製品 Apple社の「Cinema Display」(a)、「iMac」(b)、「iPad」(c)、「iPhone 4」(d)は、いずれもIPS型LCDを採用している。従来、IPS型LCDは一部の市場に向けた特別な技術だった。しかし、Apple社が採用したことによって、導入を検討するメーカーが今後は増えていきそうだ。

 さらに、視野角や黒色の深度など、ユーザーからの性能に対する要求が高まったことを受けて、IPS(In-Phase Switching)方式のLCDが登場した。電圧をかけると液晶分子がガラス基板から立ち上がるTN型 LCDに対し、IPS型LCDでは、液晶分子がガラス基板に対して平行のまま回転するように動く。そのため、視野角による色の変化やコントラストの変化が少ないという特徴が得られる。ただし、1画素当たり2個のトランジスタが必要となり、TN型LCDよりも高価になるというデメリットを抱えている。また、 1画素当たりの回路規模が増すことで光透過率が低くなることから、バックライトを明るくして光の強さを補う必要がある。そのため、消費電力も多くなる。

 IPS型LCDは、当初、プロ向けの高価なディスプレイや同技術本来のコスト高を容認できる一部のニッチなアプリケーションにのみ使用されていた。こうした中、米Apple社は最新のフラットパネルディスプレイである「Cinema Display」のほか、「iMac」、「iPad」、「iPhone4」に、韓国LG Display社が開発したEnhanced IPS型LCDを採用した(写真1)。Apple社がIPS型LCDを採用したことで、この方式の製品の量産規模が拡大し、低価格化が進むことが予想される。そのため、ほかの潜在的な顧客もIPS型LCDを利用しやすくなりそうだ。

 TN方式とIPS方式の中間的なVA(Vertical Alignment)方式も、IPS型LCDに近い品質を提供する。VA型LCDでは、液晶分子を一方向ではなく四方に倒すというマルチドメイン配向を用いる。1画素に必要なトランジスタは1個だけなので、IPS型LCDよりも画素当たりのコストは低くなる。

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