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» 2011年05月01日 00時02分 UPDATE

問題解決のためのポイントをつかむ:基礎から学ぶシグナルインテグリティ (1/3)

大容量のフラッシュメモリーを搭載する機器では、従来よりも高いデータ転送速度が求められるようになっている。転送速度を高めつつ、転送時のエラーを低減するには、シグナルインテグリティの対策が重要となる。本稿では、高速デジタル信号を扱う機器を設計する際に、シグナルインテグリティを確保するために必要となる基礎知識や設計手法について説明する。

[Perry Keller (米Agilent Technologies社),EDN]

増大するデータ転送速度

 フラッシュメモリーの大容量化が進むとともに、データの転送速度を高速化したいという要求も高まっている。このような要求に応えられる高速インターフェースを備える機器を設計する際には、シグナルインテグリティ(信号品質)を確保するための対策がますます重要になることが予想される。

 新たに開発されているフラッシュメモリーのインターフェースの周波数は、最大で6GHzに達する。このような高い周波数を用いるには、従来よりも信号の立ち上がり時間(遷移時間)を短くする必要がある。

 ただし、立ち上がり時間が短くなると、信号の高周波成分がはっきりと現れるようになる。この高周波成分は配線の影響を受けやすいので、シグナルインテグリティに関する問題はより大きくなってしまう。また、高周波成分は、低周波成分より損失が大きいので、歪(ひずみ)や符号間干渉(ISI:Intersymbol Interference)も引き起こされやすくなる。

 さらに、機器に搭載するメモリーの大容量化が進む一方で、コスト低減に対する厳しい要求によって、低価格の基板材料の採用や基板層数の削減などが余儀なくされる可能性がある。このことにより、シグナルインテグリティが犠牲になることもあるだろう。

現象と原因、解決策

 フラッシュメモリーの例のように、高速なインターフェースを備える機器を設計する際には、シグナルインテグリティの問題に対処しなければならない。そのためには、問題の原因と解決策を理解しておくことが重要である。シグナルインテグリティに影響を与える要因としては、信号の反射や歪、クロストーク、グラウンドバウンス、ジッターなどが挙げられる。

■反射と歪

 信号の反射と歪は、信号配線の品質と関連している。信号は、信号配線上にインピーダンスの不連続点が存在すると、その不連続点において反射する。この反射波は、信号配線を伝わって歪を引き起こす。また、反射波は、インピーダンスの不連続点から、元の信号の送信側と受信側の2方向に進む。別のインピーダンスの不連続点があると、そこで反射波自体も反射するため、元の信号には複雑な形の歪が生じることになる。その結果、リンギングやオーバーシュートが発生したり、信号の傾きが逆転したりするわけだ。

 逆に言えば、個々の信号配線においてインピーダンスの不整合が発生しないよう十分に気を配って設計を行えば、信号の反射と歪に起因するシグナルインテグリティの問題を回避できるということである。

■クロストーク

図1 クロストークの例 図1 クロストークの例 上側の波形が高速に変化する際にエネルギーが伝搬し、下側の波形にノイズが発生していることがわかる。

 クロストークの問題は、複数の信号配線における相互作用が原因となって発生する。変化(ハイからロー、ローからハイへの変化)が比較的少ない信号線の隣に、変化が多い信号線を配置するとしよう。この場合、容量性カップリングと誘導性カップリングによって、変化の多い信号線のエネルギーが、変化の少ない信号線に伝搬する。このクロストークによって、システムの動作に問題が生じるほどの波形の乱れが発生することがある(図1)。

 クロストークは、グラウンドと電流リターンパスの設計が最適でないために発生することが多い。ほとんどのプリント基板では、グラウンド層が電流リターンパスとして使用される。機器に用いるプリント基板の層数を増やす余裕があるときには、この方法を採用すればクロストークは発生しにくくなる。しかし、コスト低減が求められるときには、プリント基板のグラウンド層を削減せざるを得ないこともある。この場合、信号配線に隣接してグラウンド線を配置したり、シングルエンド信号の代わりに差動信号を使用したりするなど、ほかの方法で対処しなければならない。

■グラウンドバウンス

 グラウンドバウンスは、クロストークとは違い、電源配線に起因して発生する。ICやプリント基板などでは、電源配線とグラウンド配線に、必ずインダクタンスが存在する。そして、入出力する信号がローからハイまたはハイからローに変化する際には、電源配線に過渡的な電流が流れる。この過渡電流は、多くの信号が同時に変化すると、より大きなものとなる。電源配線とグラウンド配線が持つインダクタンスや抵抗により、この過渡電流がスパイク電圧に変換される。スパイク電圧は、ノイズとしてほかの信号の中に現れたり、グラウンド電圧を変動させたりする。この現象がグラウンドバウンスである。

 グラウンドバウンスへの対策としては、グラウンド層、あるいは複数本のグラウンド配線と電源配線を用いてインピーダンスを低下させることが挙げられる。これにより、SSO(Simultaneous Switching Output:同時スイッチング出力)ノイズを低減することができる。また、振幅の小さい電圧の利用や信号の変化を最小限に抑えるプロトコルの使用も効果がある。

■ジッター

図2 ジッターの例 図2 ジッターの例 黄色の線で示した部分がジッターに相当する。

 ジッターも、シグナルインテグリティに影響を与える大きな要因である(図2)。上述した信号の反射と歪、クロストーク、SSOノイズは、すべてジッターの原因になり得る。また、符号間干渉による伝送路での損失や、PLL(位相同期回路)のノイズ、EMI(電磁放射)ノイズ、送信側と受信側の閾(しきい)値電圧の違い、内部回路の遅延/不整合によってもジッターが発生する可能性がある。

 ジッターに対する対策は、ジッターの発生原因によって異なる。例えば、適切な電磁波遮へいを行うことは、EMIが引き起こすジッターに対して有効な対策となる。しかし、電源ノイズに起因するジッターには効果がない。ジッターへの対処で最も重要なのは、ジッターがランダムに発生するのか、周期的に発生するのか、システムの何らかの動作と関係があるのかを理解することであろう。

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