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» 2011年06月01日 00時03分 UPDATE

無線センサーの電力源の理想像を探る:環境発電に適した蓄電デバイス (1/3)

環境発電では、安定的に供給されるとは限らない自然エネルギーなどをエネルギー源として用いる。そのため、キャパシタや2次電池などを使って、電気エネルギーを貯蔵することが重要になる。本稿では、環境発電を利用するアプリケーションの例として無線センサーネットワークを取り上げ、それに適した蓄電デバイスについて説明する。

[Margery Conner,EDN]

環境発電では「貯蔵」が重要

 センサーノードやパソコン周辺機器などをワイヤレス化する場合、考慮すべきなのは無線通信技術についてだけではない。AC電源に替わるエネルギー源の開発 /確保も重要な要素となる。完全な無線システムであるなら、通信ケーブルはもちろん、電源コードも必要としないはずだからである。

 太陽光や人工光、熱、振動などのエネルギーを収集することにより、消費電力が極めて少ない機器のエネルギー源を確保できる可能性がある。実際、このような環境発電(エネルギーハーベスト)技術に高い注目が集まっていることは周知のとおりだ。この技術を適用すれば、ワイヤレス機器から電源コードを取り除き、なおかつ、通常の電池を電力源とするよりも長期間、機器を駆動することができるかもしれない。

 例えば、無線センサーノードでは、センサーがネットワークに対してバーストモードで送受信を行うときだけ動作し、それ以外はほとんどスリープ状態とすることで、低消費電力化を実現している。しかし、短時間であるとはいえ、通信に必要な電力は、環境エネルギーでリアルタイムに供給できる電力量を上回っている。そのため、何らかの形でエネルギーを貯蔵しておき、それをバースト通信時に使用する仕組みを盛り込む必要がある。すなわち、エネルギーを貯蔵する蓄電デバイスが、環境発電の利用においては重要な位置づけとなるのだ。

環境発電か、1次電池か

 環境発電は大きな可能性を秘めた技術である。しかし、無線センサーネットワークのような低消費電力のアプリケーションにおいて、現時点で最もシンプルなエネルギー供給源となるのは、自己放電電流(リーク電流)が少なく、かつ容量の大きい1次電池であろう。これについては、電池交換などのメンテナンスコストが気になるかもしれない。しかし、機器の消費電力にもよるが、使い捨ての電池でも10〜20年間電力を供給することは可能だし、この10〜20年という期間は大半の電子機器の寿命より長い。身の周りには10年以上使用している電子機器はほとんどないはずだ。

 もちろん、どのような種類(化学物質)の電池でもよいというわけではない。例えば、一般的なアルカリ電池のエネルギー貯蔵能力は同じサイズのリチウム電池の半分しかない。一方で、アルカリ電池には安価でリーク電流が少ないという利点があり、これらの特徴は、保守/点検を行わずに長期間使用できなければならない用途では重要な要素になる。

 ほとんどの時間、スリープ状態である無線通信ネットワークでアルカリ電池を使用する場合、ダイナミックに電圧を変更可能なレギュレータと組み合わせるとよい*1)。スリープ時のキープアライブ電力を抑えるために、電子回路への供給電圧をアルカリ電池の公称電圧である1.5Vのままとして600nA程度のキープアライブ電流を供給する。そして、ネットワークとの通信を行う際には、電池の電圧を基にレギュレータによって3.0Vに昇圧して電子回路に供給すればよい。仮にリチウム電池を単体で使用するとしたら、その公称電圧は3.0Vとアルカリ電池の2倍であるため、キープアライブ電力はアルカリ電池の2倍になる*2)

 一方、塩化チオニルリチウム電池は、公称電圧が3.6Vである。自己放電が少なく、10〜20年は問題なく使い続けることができる。ただし、単価がアルカリ電池の50米セントに対して約2米ドルと、コストは高くなる。例えば、寿命が最大20年程度と見積もっているアプリケーションがあるとして、コスト面で許容できるならば、塩化チオニルリチウム電池を採用するというのも1つの手だろう。塩化チオニルリチウム電池は、上述したように自己放電が少ないことに加えて、放電量が長時間一定になるという利点を持つ。電池の耐用年数の期間内であれば、電極端電圧が比較的一定に保たれる。ほかのリチウム系電池に比べて高価だという欠点があるが、現在、長寿命が要求される水道メーター、ガスメーターといった産業用電子機器や、軍需用電子機器などで使用されている。故障率は 100万個当たりわずか1個である。ちなみに、機械振動のエネルギーを基に電力を生成する小型発電機の価格は、少なくとも100米ドル程度はするだろう*3)

 産業用電子機器やインフラ装置に使用されている電子機器のうち、20年以上使用されているものはどのくらい存在するだろうか。特に、無線センサーネットワークは比較的新しいシステムであるため、数十年後どころか、数年後にはハードウエアが大きく異なるものに変わっている可能性がある。現段階では、無線センサーノード向けの蓄電デバイスとして最適なものは、結局のところ1次電池になるのかもしれない。

ハイブリッド構成での給電

Tony Armstrong 米Linear Technology社

 環境発電では、光や温度差、機械的振動、RF波などをエネルギー源として電気エネルギーを得る。これらのエネルギー源は、適切な変換器を使用することで電気エネルギーに変換できる。例えば、温度差であれば熱電発電機、振動であれば圧電素子、太陽光や室内光であれば光起電力素子を使用すればよい。このようにして環境エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みを盛り込めば、自律的に給電が行われる電子機器/システムを実現できる。必要な電力量が少なく、コストや運用場所、保守の面からAC電源や電池の使用が困難な状況となるアプリケーションは、環境発電の適用に向いているものだと言えるだろう。例えば、船積みコンテナの無線センサーや、アセットトラッキング機器、航空機や橋などの監視機構、建物や設備、遠隔の屋外施設に設置された環境モニターなどである。

 環境発電を利用した無線センサーノードの導入を検討する際には、まず、それらを動作させるのに必要なエネルギー量の見積もりから始めることになる。一般的には、センサーノードを半永久的に動作させるには、連続的にわずか48μWの電力が得られればよいという。実際に必要となるセンサーノードの動作時間が短ければ、平均電力レベルはさらに低くてもかまわない。また、変換器の出力電力をアプリケーションに応じて適切に調整し、エネルギー源が絶えているときには外付けの蓄電素子にエネルギーを貯めるといったことも可能だ。

 環境発電によって得られる電力量は一般に少量かつ変動を伴い、予想も難しい。そのため、環境エネルギーを基にする発電機(以下、ハーベスタ)のほかに、もう1つ2次電源を用意し、それらの両方に接続できるハイブリッド構成をとることが推奨される。2次電源としては、2次電池またはキャパシタを利用する。これらは、出力電力は大きいがエネルギー貯蔵量に限りがある。従って、必要なときには回路に対する電力供給源として働くが、それ以外の時間はハーベスタからのエネルギーを蓄えるという形で機能させる。このように、環境エネルギーだけだと電力が不十分なアプリケーションでは、2次電源を使用してセンサーノードを動作させるとよいだろう。

 2次電源を備えることによって、システムの設計はさらに複雑になる。まずは、環境発電による電力の不足を補うために、どのくらいのエネルギーを2次電源に貯蔵する必要があるかを検討しなければならない。必要なエネルギー量は、エネルギー源が存在しない時間や、センサーノードの動作時間、データ送受信の頻度など、さまざまな要因によって異なる。2次電源として通常のキャパシタを使用するのか、それとも電気2重層キャパシタを使うのか、あるいは2次電池を用いるのかなど、容量や種類についても検討しなければならない。また、環境発電システムが1次エネルギー源として回路の動作に十分な電力を供給できるのか、2次電源を充電できるほどのエネルギー量があるのかといったことも問題になる。

 最近では、無線センサーノード向けの環境発電製品として、光や熱、機械的振動など、多くのエネルギー源からエネルギーを抽出できるようなものが登場している。また、多くの付加機能を備えることで、実際の機器に適用するための設計作業は大幅に簡素化されている。



脚注

※1…Conner, Margery, "Run for your life: ultralow-power systems designed for the long haul," EDN, May 26, 2005, p.46

※2…Odland, Keith, "Selecting the best battery for embedded system applications," EDN, Nov 18, 2010, p.36

※3…Conner, Margery, "Energy-harvesting conference covers both cutting-edge and established technologies," EDN, June 13, 2007


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