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» 2011年07月08日 19時07分 UPDATE

DC-DCコンバータとの併用で:1次電池を組み込みシステムで活かす (1/2)

アルカリ電池、リチウム電池など、組み込みシステムで用いる1次電池にはさまざまな選択肢がある。そのため、用途に応じて適切な1次電池を選ぶには、その化学的性質はもちろん、温度などの外的環境、必要になる最大電力など、多岐にわたっての検討が必要になる。本稿では、まず各種1次電池の特徴について解説する。その上で、用途に応じて最適な1次電池を選ぶためのヒントとして、ダイナミックに制御可能なDC-DCコンバータとの併用方法を紹介する。

[Keith Odland(米Silicon Laboratories社),EDN]

多岐にわたる選択肢

表1 一般的な1次電池の種類 表1 一般的な1次電池の種類 

 何度も再充電が可能な2次電池は、携帯型の機器や電動自動車などを中心に、より多くの用途で使われるようになってきた。だが、現在でも、多くの組み込みシステムでは、従来からの1次電池が使用され続けている。代表的なものを挙げると、表1のようになる。以下、それぞれについて簡単に説明する。

■アルカリ電池

 1次電池には、通常、電解質として2酸化マンガンと腐食性水酸化カリウムを含む亜鉛粉を使用して製造されるアルカリ電池がある。これらの電池は、煙検知器、家庭用医療機器、携帯型オーディオ機器、および高出力の懐中電灯など、さまざまな商品/製品で使用されている。また、アルカリ電池は、OEM(相手先ブランド製造メーカー)も一般消費者も容易に入手が可能なものだ。その公称電圧は1.5V、放電電圧は0.9Vである。

■亜鉛電池

 アルカリ電池よりも前から使用されている1次電池としては亜鉛(亜鉛‐カーボン)電池がある。これは、アルカリ電池と構造的にもよく似ているが、比較的性能が低い。そのため、玩具、目覚まし時計、ラジオといった、高い性能は要求しないがコストに厳しいアプリケーションで多く利用されている。亜鉛電池は、ほとんどがOEM向けに供給されている。アルカリ電池と同様に、公称電圧は1.5V、放電電圧は0.9Vである。

■BR系リチウム電池

 1次電池の例として3つ目に挙げるのは、リチウム電池である。これには、BR系とCR系の2種類がある。BR系リチウム電池はさまざまな形状で製造されているが、最も一般的に利用されているのがコイン型のものだ。通常、BR系リチウム電池は、モノフッ化炭素(カーボンモノフルオライド)ジェルとリチウム合金を主材料として製造される。この構成は高温での性能に優れており、自己放電が少ないという特徴を備えている。そのため、長期間にわたるサービスや、比較的、低消費電力であることが要求される用途で利用される。例えば、水道やガスのメーター、熱コストアロケータ、タイヤ空気圧監視システムなどが挙げられる。これらの電池もOEM向けに多く供給されている。公称電圧は3.0V、放電電圧は2.2Vである。

■CR系リチウム電池

 CR系リチウム電池は、BR系リチウム電池と同様、負極にリチウム合金を使用するものだが、正極には2酸化マンガンを用いる。この材料は電池の内部インピーダンスを低減するのに有効である。そのため、CR系電池は一般に、BR系電池に比べて自己放電速度が若干速く、高温での特性が劣ってはいるが、大きなパルス電流が要求される用途に向いている。そのような用途としては、リモートキーレスエントリ、RFID(Radio Frequency Identification)、および時計などが挙げられる。CR系リチウム電池は、OEMだけでなく、一般消費者も容易に入手できる。公称電圧は3.0V、放電電圧は2.2Vである。

■塩化チオニルリチウム電池

 塩化チオニルリチウム電池は比較的新しいタイプの1次電池である。自己放電速度が極めて遅く、放置電池寿命がおよそ20年に達するという特徴がある。また、時間に対する放電プロファイルが平坦であり、全寿命期間にわたって端子電圧を比較的一定に維持することができるというメリットも備える。正極として塩化チオニルとリチウムテトラクロロアルミネートの溶液を、負極として亜鉛合金を使用して製造されている。この電池は、ほかのリチウム電池に比べてコストは高いが、水道やガスのメーター、産業用機器や軍用電子機器など、電池寿命が極めて長いことが要求される用途で使用されている。この電池は限られたメーカーしか製造しておらず、一般消費者向けというよりも、OEM向けの製品だと言える。公称電圧は3.6V、放電電圧は2.2Vである。

■空気亜鉛電池

 空気亜鉛電池(Zinc-air)は、ここまでに挙げたタイプの電池よりもはるかに大きなエネルギー密度を備えたものである。水酸化物ベースの溶液を使用し、空気からの酸素で亜鉛を酸化させることによってエネルギーを発生させる。一般消費者は、補聴器やカメラで用いるものとしてこのタイプの電池になじみがあるが、実際には海洋や鉄道のナビゲーション用途で大きな需要を抱えている。数年間の保存が可能だが、いったん使用を開始すると、一般消費者向けの用途の場合、電池の寿命は数百時間レベルとなる。入手は、OEMにとっても一般消費者にとっても容易だ。公称電圧は1.4V、放電電圧は0.9Vである。

電池の評価項目

 用途に適した電池を選択するには、多くの要因について評価を行わなければならない。この評価において最も一般的に使用される項目は、公称電圧、エネルギー容量、エネルギー密度、自己放電速度、および動的性能である。

■公称電圧

 公称電圧は電池の正極と負極との間で測定される電圧である。実際の用途において、より望ましい電圧や供給電流を実現するために、しばしば電池セルを直列または並列に接続して使用することになる。

■エネルギー容量

 エネルギー容量は、電池が蓄えることができるエネルギーの量である。電池のトータルエネルギーは、その電池が供給できる電流の量と端子電圧の両方の関数で表すことができる。

 SI(Système International d'unités:国際単位系)のエネルギーの単位はJ(ジュール)であるが、ほとんどの電池メーカーはミリアンペア・時間(mAh)を使用している。化学反応が異なる電池を比較する場合は、Jを使用するという方法もある。また、エネルギー容量は、E=C×VT×3.6の式を用いることにより、mAhからJへ変換することができる。ここで、EはJ単位のエネルギー容量、CはmAh単位のエネルギー容量、VTは電池の電圧である。

■エネルギー密度

 電池は電気的エネルギーを供給するものだが、その化学的性質は電気化学反応に依存する。化学反応ごとにその強さは異なり、より強力な反応を利用すれば、同じエネルギー容量でも小型の電池を実現することが可能だ。このサイズとエネルギーの比率はエネルギー密度と呼ばれている。一般的に、エネルギー密度が高いほどコストは高くなる。そのため、設計者は、常にコストとエネルギー密度の最適なバランスを求めて苦心しているのである。

■自己放電速度

 電池は永久的に使用できるものではない。たとえ使用せずに棚の中に保管しておいたとしても、電気化学反応は進行し、電池のエネルギーはゆっくりと減り続ける。自然に発生するこのプロセスは、自己放電速度として表わされる。

 アルカリ電池の寿命は一般に7〜10年程度である。BR系/CR系リチウム電池は10〜15年、塩化チオニルリチウム電池は20年以上の寿命となる。自己放電速度と、電池の寿命に影響を与えるほかの要因は、温度とデューティサイクルに強く依存している。

■動的性能

 ダイナミックな物理的パラメータも電池の性能に影響する。とりわけ、温度、出力インピーダンス、デューティサイクル、およびエネルギー供給量は、電池を選択する上で非常に重要な項目となる。

実使用時に注意すべきこと

 われわれが日常的に使用するシステムの中には、幅広い電力範囲で動作するものも多い。例えば、最新式のガスメーター/水道メーターにおけるワイヤレス検知システムの消費電力は、スリープ時はμWオーダーだが、アクティブ時にはWオーダーに達することがある。すなわち、デューティサイクルが低いスリープ時にはμWレベルであるが、デューティサイクルが高いアクティブ時(無線送信を行う場合など)はWレベルとなるということである。このような状況を踏まえ、電池にコンデンサを並列に接続し、電力消費がピークのときのエネルギー需要に対処するという方法をとっているケースもある。このような場合には、コンデンサのコスト、サイズ、リーク電流、充電回路などについて設計時に配慮しなければならない。

 また、電池の放電プロファイルにも注意を払う必要がある。放電プロファイルは、電池の化学反応や、ピーク負荷時/低デューティサイクル時の電力需要に依存して大きく変化する。さらに、温度などの環境的な要因のほか、電池を交換する間隔やシステム電圧の要件といったシステムレベルでの検討項目も、電池を選択する上では大きな要因となる。それ以外に、リサイクルの方法、有害物質や重金属の含有、輸送規則などについて十分に考慮することも重要である。

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