コラム
» 2011年09月06日 16時36分 UPDATE

Wired, Weird:LED照明のリスク

LED照明はよいことばかりではない。これまでの照明にはなかった落とし穴が幾つかある。例えば、発光タイミングの問題や発熱が少ないことによる問題、力率の問題だ。低力率に対応するには、LEDの電源回路に工夫が必要だ。

[山平 豊(ホックス(HOKS)),EDN]

 近年になって、LEDを用いたさまざまな照明機器が製品化されるようになっている。世間では、LED照明がエコ時代の寵児(ちょうじ)として持てはやされており、その電力効率は蛍光灯を用いた照明機器を凌駕しつつある。また、長寿命という特徴は、照明機器としての将来性を約束するものといえるだろう。

 一般的なLED照明は、消費電力が15W未満で、寿命が4万時間と言われている。市場を急拡大させているLED照明のあおりを受けて、白熱電球は駆逐されており、電球型蛍光灯の市場の伸びも頭打ちの状態になりつつある。また、発熱の少ないLED電球では、人感センサーを搭載した製品も登場している。こういった製品は、通常のLED電球よりもさらに消費電力を抑えることが可能だ。

 今後もさまざまな用途に向けてLED照明が開発されるだろうし、LED照明の市場もさらに拡大していくと考えられる。特に、東日本大震災後の日本では、「節電」という言葉の重要性が高まっている。再生可能エネルギーを用いた発電システムとLED照明が、ますます推進されていくことは間違いない。

 しかし、昔から、新しい技術を用いた製品は、その良い側面ばかりがクローズアップされて取り上げられることが多い。その一方で、悪い側面については、過小に扱われる傾向がある。今回は、あえてLED照明の短所をピックアップしてみようと思う。

 まず、LED信号機から見てみよう。LED信号機には、何個のLED素子が使用されているのだろうか? 一般的には、信号機の各信号灯につき、LED素子が192個使用されているようだ。これは、LED素子を直列に32個接続したLEDストリングが6系統あるためと考えられる。LED信号機の回路基板では、AC100Vを全波整流して、先に述べたLEDストリングに対して約25mAの電流を流している。その消費電力は、1系統で約2.5W、6系統で15Wとなる。従来の信号機の消費電力が70W程度だったことを考えれば、消費電力は約80%削減できていることになる。

 とはいえ、LED信号機にはいくつかの問題点が指摘されている。1つ目は、以前から提起されている、ドライブレコーダとの相性の問題である。これは、ドライブレコーダに搭載されているカメラの1秒間の撮像回数が30回であることと、西日本地区の商用電源周波数が60Hzであることに起因している。つまり、LEDが発光していないタイミングと、カメラの撮像のタイミングが合ってしまうと、ドライブレコーダにはLED信号機が点灯していない状態で映像が残ってしまうのである。例えば、青信号で交差点に進入したにもかかわらず事故に遭遇した場合、通常であれば衝突時に撮影されたドライブレコーダの映像を証拠として提出することができるはずだ。しかし、先に述べたような事態が起こると、その映像の中で信号は点灯していないために、証拠として利用できない可能性がある。

 2つ目の問題は、寒冷地の冬場でしばしば発生する。LED信号機は、発熱が少ないことも特徴の1つである。しかし、吹雪などで信号機に雪が付着すると、その雪が解けないために信号灯の表示を確認できなくなることがある。この場合、運転手が赤信号を認識できずに交差点に進入してしまう可能性があるので、交通事故が発生しやすくなってしまう。寒冷地の冬場は、信号機の表示に注意を払っておかないと思わぬ事故に遭遇するかもしれない。

図1 市販されているLEDライトの電源回路 図1 市販されているLEDライトの電源回路 

 3つ目の問題は、LED信号機の低力率に原因がある。AC電圧を整流した後の電源電圧がDC90Vを上回らないとLED信号機は点灯しない。つまり、DC90V以下の低電圧のタイミングにおいてLED信号機は消灯しているので、その間は無効電力を生み出していることになる。

 次に、市販のLEDライトの事例について紹介しよう。蛍光灯代わりに利用できる160灯のLEDライトが、通販やオークションなどにおいて安価な価格で販売されている。筆者も100円オークションで購入した。このLEDライトを分解したところ、帽子型のLED素子を直列に40個接続したLEDストリングを4系統用いており、それぞれの系統が電源回路に接続されていた。図1は、この電源回路の回路図である。

 図1について簡単に説明しよう。まず、入力部にあるコンデンサC1でLEDの電流を調整している。次に、ダイオードブリッジでAC100Vを整流してから、LEDストリングに直流電流を流している。LEDストリングには40個のLED素子が直列に接続されているので、各LEDの順電圧(VF)を3Vとすると、LEDを点灯させるにはDC120V以上の電圧が必要になる。一方、各LEDに印加される電圧が2.5V以下になるとLEDは発光しなくなる。つまり、LEDストリングは、印加電圧がDC100V以下になると消灯してしまうのだ。このことは、整流電圧がDC100V以下になっているときには電流が消費されないため、無効電力が発生していることを意味するので、電源回路の力率はかなり低いと言わざるをえない。また、消灯している時間が長いため、照明としてのちらつきが大きく、健康被害を起こしやすいという報告もある。これは、商用電源を全波整流してLED素子を点灯させる際の点灯周波数が100Hzもしくは120Hzになるためである。

図2 試作した36灯のLEDライト 図2 試作した36灯のLEDライト 

 力率を向上してちらつきの影響をなくすために、PFC(力率改善)回路を組み込んだ製品も市販されている。ただし、PFC回路を用いたとしても、それに付随する問題が発生する。まず、電力効率が悪くなってしまう。次に、AC100Vを整流してからアップコンバートするので、DC200V程度の電源が内蔵されることになる。こういった高電圧の回路を機器に内蔵することは、機器の安全性の低下につながる。もちろん、電源回路には、高耐圧のコンデンサを用いる必要がある。さらに、せっかくのLEDの長寿命性が、電源の寿命によって損なわれてしまう。コストアップになることも確実である。なお、LED電球は、小型であるため内部にPFC回路を組み込むことはかなり難しい。

 LED照明が、低力率であること、そのために無効電力を生み出しているリスクがあることは、環境面で見ればマイナスの材料になる。今後、LED照明の市場導入がますます進んでいくことは明らかだ。ということは、LED照明に起因する無効電力の増大は、将来大きな社会問題になる可能性がある。また、LED照明のちらつきによる健康被害は、早急に解決すべき問題でもある。

 LED照明の長所を生かしつつ、その短所もカバーするにはどうすれば良いのだろうか? この問題に対して、筆者からの提案を示そう。スイッチング電源の弊害でもある無効電力を、小型のLED照明によって有効利用するのである。このアイデアを生かして、低価格で製造できる36灯のLEDライトを試作した(図2)。黄色の線で囲んだ部分が電源部である。この電源部は、ラジアル部品で回路を組んでも20mm×30mm程度の面積に収まる。次回は、このLEDライトの詳細について紹介する。


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