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» 2011年10月05日 00時00分 UPDATE

広がるITSの輪、DSSSレベルIIへの対応で事故発生を抑制へ

[朴尚洙,Automotive Electronics]

 自動車に求められる要素として、「環境」、「安全」、「快適」の3つが挙げられることが多い。このうち安全については、ABS(アンチロックブレーキシステム)やシートベルトから、衝突安全ボディやプリクラッシュまで、自動車自身に装備するシステムによって高いレベルが実現されるようになっている。実際に、日本の交通事故死者数は、ピーク時である1970年の1万6765人から、2010年には4863人にまで減っている。一方、交通事故負傷者数については、2007年まで100万人を超える状態が続いていた。最近3年間は徐々に減りつつあるものの、2010年が89万6208人と死者数ほどの減少とはなっていない。

 交通事故負傷者数を大幅に減らすためには、交通事故そのものの発生を抑制する必要がある。そこで重要になって来るのが、車車間通信や路車間通信などによって実現されるITS(Intelligent Transportation Systems:高度道路情報システム)の普及である。

 日本で開発されているITSの1つにDSSS(Driving Safety Support Systems:安全運転支援システム)というものがある。DSSSは、主に一般道路で用いられるシステムで、道路に設置した路側センサーで得た交通情報を、光ビーコンを用いた路車間通信によって、車両に搭載されているDSSS対応車載機に送ることにより、ドライバーの認知/判断の遅れや誤りによる交通事故を未然に防ぐことを目的としている。

 DSSSは、2011年7月1日から警察庁の所管の下で、東京都と神奈川県の一部地域で運用が始まっている。警察庁は、2011年度末までにこれらの地域で効果測定を行った上で、2012年度以降に全国展開を進めて行く方針だ。

2つのレベル

図1 レベルによって異なるDSSSのサービス 図1 レベルによって異なるDSSSのサービス 

 このDSSSは、ドライバーに対する情報提供の方式によって2つのレベルに分けることができる(図1)。レベルIでは、路側センサーが走行車両や歩行者を検知した際に、光ビーコンを介した通信によって、その情報を車両のDSSS対応車載機に送信する。DSSS対応車載機は、受信した情報を基に、カーナビゲーションシステムなどの画面上に注意喚起のための画像を表示する。レベルIで車両側に必要なのは、光ビーコン/電波ビーコン/FM多重放送という3つの通信方式に対応する3メディア対応VICS(道路交通情報通信システム)車載機と、光ビーコンの送受信ユニットで、これらはすでに多くの製品が販売されている。

 一方、レベルIIはレベルIよりも進化した内容となっている。路側センサーによって取得する車両や歩行者の位置/速度情報、信号情報、そして停止線の位置などを含めた道路情報を総合した路側インフラ情報を、光ビーコンなどを介した通信によって、車両のDSSSレベルII対応車載機に送信する。DSSSレベルII対応車載機は、レベルIの場合と異なり、車載機が搭載車両の走行情報と受信した路側インフラ情報を基に、ドライバーに注意喚起する必要性の有無や、注意喚起する場合のタイミングなどを車載機自身で判断する。また、注意喚起の方法は、画面上への画像表示以外に音声も用いることが特徴となっている。

新型「カムリ」がレベルIIに対応

 ただし、DSSSのレベルIについては、3メディア対応VICS車載機が広く普及し始めていることからサービス提供を受けやすい状態にあるのに対して、レベルIIはDSSSレベルII対応車載機がほとんど普及していないことが大きなネックとなっている。これまで、DSSSレベルII対応車載機を市販車向けに提供できていたのは、日産自動車だけだった。それも、2009年11月に発表した「フーガ」や2010年9月発表の「エルグランド」などの高級車に限られていた。

 しかし、2011年6月には、トヨタ自動車が今後発表する新型車に、DSSSレベルII対応車載機を順次搭載して行くことを発表している。実際には、2011年9月発表の新型ハイブリッド車「カムリ」から、DSSSレベルII対応車載機の搭載が始まっているようだ。

 DSSSレベルIIの特徴の1つとなるのが、車載機を開発するメーカーごとに、その機能や動作を変更できる点にある。DSSSは、基本機能として、「一時停止規制見落とし防止支援ステム」、「出会い頭衝突防止支援システム」、「追突防止支援システム」、「信号見落とし防止支援システム」が用意されていることは枠組みとして決まっている。ただし、それぞれの機能を動作させる際に路側インフラ情報と車両の走行情報からどのような情報を用いるのか、動作した時の画面表示や音声による注意喚起をどのようにするかについては、各メーカーが“味付け”できるようになっているのである。

 また、先述した4つの基本機能以外の機能を追加することも可能になっている。トヨタ自動車のDSSSレベルII対応車載機では、「信号待ち発進準備案内」機能を搭載している。同機能では、光ビーコンから送信された信号情報を基に、赤信号が青信号に変わるまでの残り時間を棒グラフとしてカーナビの画面上に表示する。青信号になる前には、周囲の安全確認を促す表示も行う。なお、この機能は、車両が停止したことが車両の走行情報から確認された際にのみ動作する仕様になっている。

図2 DSSSレベルII対応車載機を搭載するマツダの試作車 図2 DSSSレベルII対応車載機を搭載するマツダの試作車 「MPV」をベースにしている。

 日産自動車とトヨタ自動車以外の自動車メーカーも、試作車レベルではすでにDSSSレベルII対応車載機の開発を完了している。2011年9月に、DSSSの開発を推進している新交通管理システム協会(UTMS)が神奈川県川崎市において開催した試乗会では、マツダが開発したDSSSレベルII対応車載機を搭載する「MPV」ベースの試作車に搭乗することで、DSSSレベルIIのサービスを体験することができた(図2)。マツダの開発担当者によれば、「現在は、ドライバーへの最も効果的な情報提供を行えるようなユーザーインタフェースの調整を進めているところ。まだ最適解を出せているとは言えないが、ここがDSSSレベルII対応車載機の開発で最も重要なので、慎重に開発を進めている」という。

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