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初めてのLED照明製作――研修生はいかにしてトラブルを克服したのかWired, Weird(1/2 ページ)

LED照明は多数のLED素子を直列に接続するので、注意深く作業していても部品の取り付けミスを犯しやすい。そこで、基板に実装されたLED素子の故障や極性の確認を簡便に行う検査方法を紹介しよう。この検査方法ではDCモーターの発電機能を使う。

» 2011年12月06日 18時59分 公開
[山平 豊(ホックス(HOKS)),EDN]

 筆者の務める職場で、高専(高等専門学校)の学生のインターンシップ研修を行った。研修テーマとして選んだのは「LED照明の製作」である。学生たちがこの研修の過程で起こしたさまざまなトラブルは、この回路を試作する際の注意事項として大変参考になった。

 研修のテーマであるLED照明は、小型基板(95×72mm)に36個のLED素子とLED照明回路を搭載するものだ。LED照明回路は、前回の記事で紹介したものを使用した(図1)。図2は、筆者が製作したLED照明のサンプル基板である。


図1 研修で使用したLED照明の回路図 図1 研修で使用したLED照明の回路図 
図2 筆者が製作したLED照明のサンプル基板 図2 筆者が製作したLED照明のサンプル基板 上の写真は基板の表側。LED照明の各回路の設置位置を赤色の線で囲んで示している。下の写真は基板の裏側である。

 使用した部品は秋月電子通商の通販を利用して購入した。部品点数は57点で、部品代の総計は700円弱となった。ただし、部品代の半分近くを占めたのは、36個の白色LED素子(単価9円)である。

 研修を行った2人の学生(研修生)のLED照明の組み立てプロセスは対照的だった。1人は、サンプル基板と回路図の両方を使って組み立てた。しかし、もう1人は、サンプル基板を参考にせず、回路図を見ながら独自の部品配置で組み立てを行ったのである。

 製作工程は、部品の確認、電源回路の組み立て、電源回路の電圧出力確認、定電流回路/ミラー回路/LED素子部の組み立て、DC電源を用いた調整、AC100Vによる動作確認という順番で進めた。以下に、各工程で行った作業と、研修生が起こしたトラブルについて紹介しよう。

■部品の確認

 研修生には、組み立てに必要な部品がそろっていることの確認と各部品が持つ機能の理解のために、1点ずつ部品を確認しながらそれらを回路図の横に置いてもらった。こうすることで、部品に関する基礎的な知識が身に付く。

 まず、抵抗については、カラーコードに対する理解を深めてもらえたようだ。研修生は、カラーコードに関する予備知識はあるものの、カラーと番号が抵抗値とどのように対応しているかまではしっかりと理解していないように思えた。そこで、コード番号順に茶(1)、赤(2)、橙(3)、黄(4)、緑(5)、青(6)、紫(7)、灰色(8)、白(9)、黒(0)であることと、抵抗値の数字配列の意味(AB×10C)を説明し、ノートにメモを取らせた。また、22Ωと33Ωの抵抗は、色の組み合わせが似ていて判別が難しいので、マルチメーターで測定して確認してもらった。

 ダイオードブリッジが、ダイオードを4個使った全波整流する回路であることも理解してもらわなければならない。そこで、ノートに書き込んだ4個のダイオードの間に接続線を引き、交流入力が直流出力に変わる動作を電流の流れから確認するという作業を行った。

 トランジスタの端子配置は、小電力部品の場合、シルク表示面を正面、端子を下側にしたときに、左からE(エミッタ)、C(コレクタ)、B(ベース)となる。ECB(読み方はエクボ)で覚えると良い。一方、放熱板がある部品は、放熱板を正面にして端子を下側にすれば、左からECBとなる。FETについては、トランジスタのECBが、それぞれS(ソース)、D(ドレイン)、G(ゲート)になるだけで、端子配置はトランジスタと同じになると説明した。トランジスタは、マルチメーターのダイオードモードで、ベースをアノード側に見立ててエミッタとコレクタのVFを測定してもらった。FETでも同様の簡易検査ができればよかったのだが、残念ながら手持ちのマルチメーターはFETの検査に対応していなかった。

■電源回路の組み立て

 ダイオードブリッジ、可変抵抗、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、FETの順番でプリント基板に実装する。各部品は端子を折り曲げてからプリント基板に挿入し、その後で端子が適切な長さになるようにカットし、最後にハンダ付けした。

 ハンダ付けで留意すべきポイントとして、「試作品や手作り品は、部品の選定ミスや配線ミスが必ず発生するので、後で部品が交換しやすいようにハンダ付けすべきである」ことを特に強調した。具体的には、端子と基板のランドをハンダ付けするのではなく、折り曲げた端子と他の端子が重なる部分をハンダ付けするといったような手法がある。こうしておけば、ランドの位置で部品の端子をカットしてからハンダを除去することで簡単に部品の交換を行える。ACプラグにケーブルを配線する際には、プリント基板に直径0.1mmのリード線(より線に使われる単線を用いる)をヒューズの代わりに取り付けてから、ACコードをハンダ付けさせた。ACコードの反対端は、ACプラグにネジ止めした。

■電源回路の電圧出力確認

 DC40Vまでの直流電圧を出力できる可変電源装置を使用して調整する。まず、電源入力が短絡していないことをマルチメーターで確認する。次に、電源装置の電圧出力をDC35Vにして電源回路に入力し、出力電圧を確認させた。

 しかし、出力電圧の値は0Vだった。これは、ACプラグの配線が接続されていなかったことが原因だった。研修生は、ACプラグの構造を全く理解していなかったようで、単に端子の下に配線を差し込んであるだけで、ネジと端子の間をきちんと結線していなかった。どうも挟み込みタイプの端子台をイメージして作業していたらしい。やはり、配線を引っ張っても抜けないことを確認させるべきであった。とはいえ、ここまでの作業は、トラブルも少なく順調に進んでいた。

■定電流/ミラー/LED各回路の組み立て

 使用したプリント基板はユニバーサル基板であるため、基板上に部品記号は記されていない。このため部品の配置は、動作確認のポイントを理解した上で、回路図と比べたときに分かり易くなるように行うべきである。

 サンプル基板はこのことを意識して製作してある。具体的には、図1に赤線で示すように、プリント基板のどの部分にどのような回路があるのかが理解しやすいように部品を配置した。また、このような配置にすることで、各部品の端子部にマルチメーターの計測用端子を当てやすくなるというメリットもある。

 残念ながら、独自の部品配置を行った研修生は、その意図を理解していなかった。サンプル基板のように、抵抗と抵抗の端子を基板に対して垂直に立てるのではなく、基板上に寝かせて組み立てるなどの手法を採用したことにより、この研修生はさまざまなトラブルに遭遇した。例えば、ミラー回路部では、ミラー回路に供給する電源をFETの出力側(電解コンデンサC2の+側)に接続していたため、AC100Vを用いた最終的な動作確認の際に大きな問題が発生した(後述)。LED素子の配置についても、LEDの極性をきちんと管理して組み立てていなかったため手直しが続発し、かなりの数のLED素子が破壊された。しかし、こういったことを当初から予想していたこともあって部品を多めに用意していたので、研修を中断するまでには至らなかった。

■DC電源を用いた調整

 電源装置の電圧をDC35V、電流リミットを100mA程度に設定して、LED照明回路に電源装置を接続した。定電流回路に接続しているLEDストリングは明るく点灯したものの、ミラー回路を用いるLEDストリングについては薄暗くしか点灯しなかった。

 これは、定電流回路に接続しているLEDストリングとつながっているトランジスタのエミッタ側抵抗(33Ω)が短絡していたためだ。ベース電圧が下がってミラー回路に十分な電流が流れなかったのである。エミッタ側抵抗の短絡を修正することで全てのLEDストリングが点灯した。可変抵抗を使って電圧を調整したところ、DC35Vのときが一番明るく光っており、ここから電圧を上げても下げても輝度が低下したので、AC100Vを接続して良いと判断した。

 しかし、これは大きな間違いだった。ミラー回路から電流を流すLEDストリングの電源の接続先を確認しておくべきだったのである。

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